ジビエト https://gibierto.jp Just another WordPress site Thu, 19 Mar 2026 09:31:37 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.9.3 炭火が引き出すエゾシカの旨味。函館ブランド鹿「函鹿」を居酒屋スタイルで楽しむ「箱館居酒屋 熾美」北海道函館市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15739/ Thu, 19 Mar 2026 09:31:37 +0000 https://gibierto.jp/?p=15739

函館駅から歩いて約5分。松風町の市電の線路沿いに、木格子の壁が印象的な居酒屋「箱館居酒屋 熾美(おきび)」があります。2023年4月にオープンした同店は、函館産エゾシカのブランド肉「函鹿(はこしか)」を使ったジビエ料理と、北海道産の新鮮な海鮮を二本柱に据えた一軒です。

店名の「熾美」は、薪や炭が炎を上げずに芯まで赤く燃えている状態「熾火(おきび)」に由来しています。炎が出ていなくても高温で、火力が安定しているため調理に最も適した状態とされるこの火で、家に帰ったときのようにほっとする美味しいものを届けたい。そんな思いが店名に込められています。

木の温もりが感じられる店内は、カウンターからテーブル席、座敷まで85席を備え、お一人様からご家族連れ、団体での宴会まで、幅広い利用に応えています。

低温調理と炭火の二段構えで仕上げる「蝦夷鹿肉背ロースステーキ」

まずご紹介するのは、「蝦夷鹿肉背ロースステーキ」(2,750円・税込)です。背ロースはエゾシカのなかでも肉質がきめ細かく、赤身の旨味が凝縮された部位。熾美ではこれを低温調理でじっくりと火入れしたあと、炭火で表面を焼き上げて仕上げます。

低温調理により肉の水分が逃げないため、カットした断面はしっとりとしたロゼ色。そこに炭火の香ばしさがまとい、口に運ぶと赤身の力強い旨味がじんわりと広がります。店長の岩山さんは、「ジビエは香りが強いので、炭の香りをつけてあげることによって調和されて、食欲が増します」と話します。鹿肉の風味を消すのではなく、炭火の香ばしさで包み込むように調和させる。鹿料理の定番ともいえるステーキですが、熾美ならではの「熾火」の技が光る一皿です。

しっとり赤身をポン酢でさっぱりと「函鹿シンタマポン酢」

続いて一番人気のメニュー「函鹿シンタマポン酢」(1,650円・税込)です。エ火入れしたシンタマと呼ばれるモモの部位を薄くスライスして提供されます。仕上げにネギをたっぷりとのせ、ポン酢で味わう一皿です。

口に運ぶと、まずネギの香りがふわりと広がり、ポン酢のさっぱりとした酸味とともにエゾシカの赤身の旨味が追いかけてきます。肉はしっとりとやわらかく、ローストビーフのような食感でありながら、牛肉よりもすっきりとした後味が特徴です。

シンタマポン酢はわさびを添えても楽しめます。初めてジビエを口にする方にもおすすめの一品で、「薬味に負けないくらい味がしっかりしている」と驚かれるお客さんも多いのだとか。

炭の香りが食欲をそそる「鹿モモ串と鹿つくね」

さらにご紹介したいのが、エゾシカのモモ肉の串とつくねの串です。炭台でじっくりと焼き上げる串は、熾美の調理スタイルそのものを体感できるメニューといえます。

鹿モモ串(990円・税込)は、赤身の旨味がぎゅっと詰まった部位を炭火で焼き上げたもの。脂が少ない分、炭の香ばしさが肉の風味と重なり、噛むほどに旨味が広がります。月見鹿つくね(605円・税込)は、エゾシカ肉をつくねにしたもので、卵黄をつけて食べるスタイルが人気です。

焼き鳥にも使うタレで焼いた串は醤油ベースの甘辛い味わい。シンプルに塩でいただくのもおすすめで、炭火の香りとエゾシカの赤身らしい風味がより際立つそうです。

秘伝のソースが決め手「鹿すね肉のトマト煮込み」

熾美のジビエ料理のなかで、炭火焼きとは異なるアプローチで人気を集めているのが「鹿すね肉のトマト煮込み」(990円・税込)です。じっくり煮込まれたすね肉は、ほろりと崩れる食感で、トマトの酸味と肉の旨味が見事に溶け合っています。

このトマト煮込みの味の核となっているのが、岩山さんの秘伝のソースです。醤油やみりんをベースにした和風の味付けは、洋風のトマト煮込みにどこか懐かしい和の奥行きを添えています。

脂の少ないエゾシカのすね肉は、長時間煮込むことで繊維がほどけ、スプーンだけで食べられるやわらかさになります。ココットで温かい状態で提供されるため、湯気とともに立ちのぼる香りもごちそうです。

海のミネラルが育むブランド鹿「函鹿(はこしか)」

熾美で使用しているエゾシカ肉は、函館市内にある北海道エゾシカ肉処理施設認証施設「Sauvage de hakodate(ソバージュ ド 函館)」から仕入れた「函鹿」ブランドのものです。

「函鹿」とは、函館近郊で捕獲されたエゾシカのこと。その最大の特徴は、海沿いに生息する鹿ならではの肉質にあるとのこと。津軽海峡に面した函館市恵山地区は、潮風に吹かれてミネラルを豊富に含んだ草を食べて育ち、積雪が少ない環境のため、冬場でも餌に困らず痩せにくく、通年で品質の良い肉が取れるそうです。

岩山さんは「北海道のエゾシカは本州のニホンジカよりも個体が大きく、肉質が良いという印象があります。さらに函鹿は海が近くてミネラル豊富な餌を食べているので、ヘルシーで味が濃いのが一番の特徴です」と語ります。

品質の要は捕獲から処理までのスピードです。「Sauvage de hakodate」では、頭部か首を狙って一発で仕留める「クリーンキル」によって肉への負担を最小限に抑え、捕獲から解体までを2時間以内に完了。その後3~5日間の冷蔵熟成を経て出荷されます。こうした丁寧な処理が、上質なエゾシカ肉を生み出しているのです。

「ご家庭でも真似できる料理」を目指す理由

岩山さん自身も狩猟免許を持つハンターです。20歳の頃に免許を取得し、自ら捕獲して調理するという経験を重ねてきました。だからこそ、「ご家庭でも鹿肉を食べてほしい」と語ります。その言葉の裏には、「食べてもらわなかったら、仕留めた鹿がもったいない」という切実な思いがあります。

「熾美で提供している食材は、スーパーにも流通しているものです。お客さんが手に入れられるものと同じレベルの食材を使って、自分が食べたいと思った料理や、ご家庭で出てきそうなメニューを意識して作っています。だから、うちで食べて『美味しいな』と思ったら、スーパーで鹿肉を買って家でも同じように調理してもらえるんです」
食べた人が「これなら自分でもできそう」と思えることが、鹿肉の普及につながると考えているのです。

エゾシカ肉は高たんぱく・低脂質・低カロリーで、鉄分やビタミンも豊富なヘルシー食材です。普段の料理で使っている牛肉や豚肉と同じ感覚で調理できるのも魅力のひとつ。ファミリー層の来店も多い熾美では、大人も子どもも一緒に鹿肉料理を楽しんでいるそうです。

「鹿」を街の名物へ。

函館といえばイカの街として知られてきました。しかし近年、イカの水揚げ量は減少傾向にあります。

一方で、道南地域ではエゾシカの個体数が増え続けており、農作物への被害も深刻化しています。こうした背景のなかで岩山さんが見据えるのは、利活用した鹿を函館の新たなグルメにする未来です。

「北海道といえば大自然というイメージがありますよね。せっかく野生のものがこれだけ身近にあるのだから、観光で来た方にも食べて帰ってもらえたらいいなと思っています」

有害鳥獣として捕獲される命を、美味しい食材として届ける。そのサイクルを日常に根づかせるために、居酒屋というカジュアルな場所から発信し続ける。それが、熾美の選んだ道です。

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ジンギスカン鍋の上で鹿とヒグマを食べ比べ。焼いてもらうジビエの新体験「サクパマタパ」北海道函館市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15716/ Wed, 18 Mar 2026 09:09:24 +0000 https://gibierto.jp/?p=15716

函館駅から歩いて5分ほど。大門横丁にほど近い松風町の一角に、「焼いてもらうジンギスカン&ジビエ サクパマタパ」があります。もともと「大門ひつじ亭 松風店」として営業していたお店が、2025年2月にリニューアルオープンし、現在の店名に生まれ変わりました。

「サクパマタパ」とはアイヌ語で春夏秋冬を意味する言葉です。「サクパ」が暖かい季節、「マタパ」が寒い季節を意味しており、店主の奥山さんが大切にしている「一期一会」の精神から連想して名づけたとのことです。「北海道の店だからこそアイヌ語を使いたい」。そんな思いが、この響きに込められています。

カウンター6席にテーブル席を合わせて計15席ほどの店内には、各席にジンギスカン鍋がセットされています。ここでは生ラムだけでなく、エゾシカやヒグマといったジビエも同じジンギスカンスタイルで提供されます。そしてもうひとつ、この店には大きなこだわりがあります。「お客様には焼かせない」ということです。

旨味がにじみ出る一瞬を見極める。鹿のシキンボとカタロース

この日いただいたのは、エゾシカのシキンボ(1,650円・税込。写真右上)、エゾシカのカタロース(1,540円・税込。写真右下)、そしてヒグマのバラ肉(2,800円・税込。写真左)の3種です。

肉を焼くときは、まずジンギスカン鍋の上に旬の野菜が敷かれます。取材時は雪の下大根をはじめとする冬の野菜が並びました。その野菜の上に肉をのせ、蓋をして蒸し焼きにしていきます。野菜の上にのせることでお肉を焼きすぎず、蒸気でふっくらと柔らかく仕上がるのだといいます。

最初に焼き上がったのはエゾシカのシキンボです。シキンボとは鹿のもも肉の裏側にある部位で、1頭から2本、約2kgほどしか取れない希少な部分です。脂が適度にのっており、肉質はしっとりとして柔らかく、噛んだ瞬間にじゅわっと肉汁がにじみ出てきます。塩コショウでいただくと、鹿肉の甘みと旨味がダイレクトに伝わってきました。

続いてカタロース。こちらはシキンボと比べるとしっかりとした肉肉しさがあり、力強い味わいが楽しめます。歯ごたえも心地よく、噛むほどに旨味が広がります。鹿肉は肉汁がにじみ出てくるくらいの焼き加減が一番美味しいとのことで、奥山さんがまさにその瞬間を見極めて提供してくれます。

どちらの部位も塩コショウで食べるのがおすすめ。鹿肉は癖がないため、タレをつけると肉の繊細な甘みや旨味が消されてしまうのだそうです。塩で食べてこそ、素材そのものの味が際立ちます。

おばあちゃん秘伝のタレわさびで味わうヒグマのバラ肉

鹿に続いていただいたのは、ヒグマのバラ肉です。熊肉は鹿よりもしっかり火を通す必要があるため、奥山さんが焼き加減を慎重に見極めながら仕上げていきます。鹿は火が通りやすいのですぐに食べられますが、熊は「よく焼かなくちゃいけない」。一方で火を入れすぎると硬くなってしまうため、加減が難しい食材でもあります。

ヒグマのバラ肉のおすすめの食べ方は、お店の自家製タレにわさびをのせる「タレわさび」です。このタレは奥山さんがおばあちゃんから受け継いだ秘伝のレシピで作られる醤油ベースの一品で、甘さの中にしつこさがなく、肉の味を引き立てる絶妙なバランスに仕上がっています。

もともとはジンギスカン用として家庭で使われていたもので、チャーハンや照り焼きにも合う万能タレなのだとか。大量生産はできないため、タレのみの販売はされておらず、この味はお店でしか出会えません。

わさびをお肉にちょこんとのせて、タレにくぐらせて口に運ぶと、肉肉しい熊の風味にわさびのすっきりとした辛味が絶妙に絡みます。奥山さんいわく、「山のものと山のものは合う」。わさびも熊も山の食材。きのこなどもそうですが、山で育ったもの同士は自然と調和するのだと話します。

塩コショウだけで食べてもワイルドな味わいが楽しめますが、タレわさびにすると熊肉の存在感はそのままに、後味がすっきりと引き締まります。鹿肉の繊細さとはまた違った、力強いジビエの魅力を堪能できる一皿です。

北海道産にこだわる野菜。春には自ら山菜を採りに

ジンギスカン鍋で一緒に焼かれる野菜は、基本的に北海道産の旬の野菜、近隣の北斗市をはじめとする道内の農家から届くものを中心に揃えています。取材時に登場した雪の下大根は、冬の時期ならではの甘みが凝縮されており、肉の脂を吸った野菜がまた格別の美味しさでした。

春になれば主役は山菜に。ギョウジャニンニクやフキノトウ、タラの芽などが並び、奥山さん自らが山に入って採ってくることもあるといいます。「自家製のフキ味噌をラム肉や鹿肉と一緒にどうぞ」という提案も、この店ならではの楽しみ方です。

「自分で焼きたいなら他のお店へ」。焼いてもらうスタイルが生まれた理由

サクパマタパの最大の特徴は、肉を店主やスタッフが焼いて提供するスタイルです。メニュー表にも「御自身で焼きたいお客様は他店をご利用ください」という一文が記されているほど、強いこだわりがあります。

その理由はシンプルです。「みんな焼きすぎちゃうんですよ」と奥山さんは笑います。ジンギスカンは通常、お客さんが自分で焼くスタイルですが、焼き加減がわからないまま火を通しすぎてしまい、カチカチになったお肉を食べている人が多いのだそうです。「もったいない。ちょうどよい焼き加減の美味しさを楽しんでほしい」という思いから、お店側が焼いて提供するスタイルに行き着きました。

当初は奥山さん一人で全席を焼いて回っていたそうですが、人気が出るにつれて手が回らなくなり、今では複数のスタッフで対応しています。それでもお客さんごとに焼いていくのは大変な作業です。外国人観光客、とくに韓国からのお客さんも多く、奥山さん自ら韓国語でコミュニケーションを取りながら接客にあたっているそうです。

あまりの人気ぶりに予約なしのお客様を1日に60人断ることもあるほどで、2026年2月にはすぐ近くの場所に2号店をオープンしました。

洞爺湖のホテルで出会ったジビエの美味しさ

奥山さんがジビエに目を向けたきっかけは、かつて洞爺湖のホテルで働いていたころにさかのぼります。当時のシェフが猟銃を持つハンターでもあり、その人に付いて山に入り、鹿の解体を一から学びました。その経験を通じて、鹿肉の美味しさは十分にわかっていたといいます。

その後、親がジンギスカン店を営んでいたこともあり、奥山さんも新たにジンギスカン店を開くことになりましたが、「ただのジンギスカン屋で終わりたくない」という思いがありました。ジンギスカン鍋の上で野菜と一緒にジビエを焼けば、肉汁が野菜にも染み渡り、素材の美味しさを余すことなく楽しめる。このスタイルはまさにジビエの魅力を引き出す理にかなった方法だと考え、現在の形にたどり着いたのだそうです。

鹿肉は函館市にある食肉処理施設「Sauvage de Hakodate(ソバージュ ド 函館)」から、一部の部位は茅部郡森町の「マノワラボ」からも仕入れています。ヒグマもSauvage de Hakodateから届いており、昨年は5頭を丸ごと買い付けたといいます。

入荷した熊を部位ごとにさまざまな形で提供していますが、4頭分はすでに売り切れてしまったとのこと。熊肉は人気が高く、ゴールデンカムイやグランメゾン東京といった作品の影響もあり、ジビエへの注目が高まっているタイミングだと奥山さんは感じているそうです。

来るたびに違う味が待っている。鹿と羊の食べ比べセットがおすすめ

初めて訪れる方へのおすすめは、鹿と羊食べ比べセット(3,850円・税込)です。ジンギスカンスタイルで鹿肉と生ラムを一緒に味わえるお得な内容で、最初に鹿肉と生ラムを一緒に焼き、その後に極上ラム(羊の肩ロース)が登場するという構成になっています。一度に出すと肉同士の味の違いがわかりにくくなるため、分けて提供する工夫がされています。

このほか、週替わりで登場するおすすめメニューも見逃せません。仕入れ状況によってシキンボのような希少部位が登場することもあり、来るたびに新しい味わいに出会えるのがこの店の魅力です。ドリンクを含めた一人あたりの予算は4,500円ほどが目安です。

週末は予約なしでの来店が難しいほど混み合うため、事前の予約をおすすめします。平日であれば比較的入りやすいとのことですが、それでも予約がおすすめです。

アットホームな雰囲気のなかで、奥山さんやスタッフが気さくに話しかけてくれるのもこの店の魅力のひとつ。函館の夜に、海鮮とはひと味違う「山の恵み」を楽しみたいなら、ぜひ足を運んでみてください。

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函館とロシアの歴史が香る。エゾシカを使った本場式ピロシキ専門店「まるたま小屋」北海道函館市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15693/ Fri, 13 Mar 2026 09:00:44 +0000 https://gibierto.jp/?p=15693

函館山ロープウェイの山麓(さんろく)駅のすぐ近く、函館聖ヨハネ教会のわきにある築100年の長屋を使った小さなお店があります。名前は「まるたま小屋」。

日本では揚げたパンとして知られるピロシキですが、本場ロシアやウクライナでは“焼く”のが主流。お店では北海道産の食材にこだわった本場式の焼きピロシキが、毎日オーブンで焼き上がっています。

函館は日本で最初にロシア領事館が置かれた街であり、ロシアとの歴史的な関わりが深い土地のひとつです。その土地の物語を背景に、北海道の恵みをロシアの伝統的な料理に包み込む。そんなスタイルで営まれているのが、この一軒です。

エゾシカとエゾマイタケを北海道産米で包んだ一番人気「エゾ×エゾ」

まるたま小屋の看板メニューは、エゾシカを使った「エゾ×エゾ」(495円・税込)と名付けられたピロシキです。エゾシカとエゾマイタケに、北海道産のお米「ふっくりんこ」と玉ねぎを合わせた具材、それをもちもちの生地で包んで焼き上げられています。

この「エゾ」と「エゾ」を組み合わせた具材は、何度も作り直した末にたどり着いたもの。最初はエゾシカをお芋と合わせてみたこともあったそうですが、お米を野菜のように使う本場のピロシキから着想を得て、エゾシカとお米を合わせたピロシキを試作。これが現在の「エゾ×エゾ」の原型になりました。

エゾマイタケを合わせた理由にもこだわりがあります。ロシア人はキノコ好きとして知られていますが、えのき茸やしめじでは香りや食感が物足りず、しいたけだと和の風味が強くなりすぎてしまう。エゾシカを使ったメニューは開業当初からあったものの、少しずつ完成度を高めていくなかで、マイタケならではの豊かな香りと食感がエゾシカと相性抜群で、「エゾ×エゾ」の名にもふさわしいエゾマイタケに落ち着いたのだそうです。

できあがった「エゾ×エゾ」をひと口かじると、まず生地のもちもち食感が迎えてくれ、そのあとからエゾシカのしっかりとした旨味が広がり、ナツメグの香りがふわりと追いかけてきます。エゾマイタケの香ばしさとふっくりんこのやさしい甘みが、肉の旨味を穏やかに受け止めており、思わず次のひと口に手が伸びます。

揚げずに焼く本場式と、もちもちの生地

店主の北見さんいわく「戦後、日本では揚げピロシキとして広まった経緯があって、みんなピロシキは揚げたパンだと思っている。けれど本場では甘いのからしょっぱいのまでいろいろあって、向こうの人にとってはおにぎりみたいなもの」とのこと。本場ではピロシキを主食におかずが食卓に並ぶそうです。

食べた印象は、揚げたピロシキのイメージと違ってとても軽やか。おかずとしてボルシチが欲しくなるのも分かります。

▲季節によって味が異なるボルシチを提供

北見さんは「パン職人だったらやらなかったような、やっちゃいけないようなことをやった」と笑います。パン作りの経験がほぼなかった状態から師匠に教わりつつ独自の工夫を重ね、何度もレシピを更新してたどり着いた今の生地。素人だったからこその柔軟な発想が、唯一無二の食感を生み出しているのかもしれません。

生地には北海道産の小麦粉と米粉、そしてバターの代わりに米油が使われています。バターを使わなくなったのは、過去にバターが手に入りにくくなった経験がきっかけ。米粉が入ることで水分量も増し、焼き上がりのもちもち感が際立ちます。

一番嬉しいのは「生地が美味しい」という言葉をもらうことだそうです。実際にロシアから来たお客さんから、「ロシアより美味しい」と言われたこともあるのだとか。

農家との直接のつながりが産んだ北海道産食材たち

まるたま小屋では、生地も具材もほぼすべてが北海道産の食材で作られています。その理由を尋ねると、「北海道に住んでるから北海道のものを使いたいし、遠方から運ばないからコストも抑えられる」とシンプルな答えが返ってきました。

実際に野菜は地元の農家さんから直接仕入れており、あいだに八百屋さんを挟まず、生産者の方々と直接やり取りしているんだとか。

コロナ禍で営業が制限されていた時期に農家巡りをしたことがきっかけで多くの生産者とつながり、一度つながると横のつながりが広がって、紹介が紹介を呼ぶかたちで関係が深まっていったそうです。

地産地消というよりも、「ここに住んでいるからこそ手が届く食材で、自然と北海道産になった」。そんな実感が、このお店の食材選びの根底にあります。

函館とロシアの文化をつなぐ、物語のあるお店

北見さんはもともと千葉県出身で、北海道大学への進学を機に北海道へ渡り、函館に移り住みました。そしてこの街で「カチューシャ」という名物ロシア料理店に出会い、そこで焼きピロシキの美味しさに惚れ込んだことが転機になったそうです。

「焼いたピロシキって美味しいんだ」という発見と、ロシア文学や文化への関心が重なり、函館という歴史ある土地で焼きピロシキの店を始めることに繋がりました。

函館とロシアのつながりを大切にする北見さんは、お店の空間にもこの土地ならではの物語を持たせています。函館港の開港時代に実在したロシアホテルに勤めていた「ソフィア」という女性をモデルにし、ソフィアがロシアに帰ったあと、残された女の子「マルーシカ」がフクロウとともに知恵の実を集める旅に出る。店内にはそんな物語が描かれています。

部屋もそれぞれ異なるテーマが設定されており、「ディズニーランドみたい」「ジブリみたい」と言われることもあるそうで、親子連れのお客さんにも人気のポイントです。

「まるごと卵がかえる場所」。北海道の恵みを焼きピロシキに包んで

「まるたま小屋」という店名には、「いろんな人の得意の卵がまるごとかえればいいな」という願いが込められています。もともと就労支援の仕事をしていた北見さんにとって、お店の出発点は「飲食をやりたい」ではなく、「いろんな人の得意を組み合わせて仕事が作れたら、みんな働けるのでは」という思いでした。

2014年にたまたま今の場所を借りる縁があり、「食べ物があれば人が集まるだろう」と飲食店の許可を取得。当初はロシア料理の専門店ではなかったものの、試行錯誤のなかでピロシキに特化していき、2015年から焼きピロシキとボルシチの店として本格的に営業を開始しました。

それから10年。北海道の食材とロシアの食文化を焼きピロシキという一品に凝縮し、全国から、そして海外からもお客さんを呼び寄せるお店へと成長しました。

函館を訪れた際は、ぜひ北海道産食材の詰まった焼きたての「エゾ×エゾ」をひとつ、手に取ってみてください。

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九州最大級! 『第3回 九州ジビエフェスト2026』が福岡・天神中央公園で開催へ(2026年3月13日~15日) https://gibierto.jp/article/event/15705/ Wed, 11 Mar 2026 10:00:32 +0000 https://gibierto.jp/?p=15705

2026年3月13日(金)~15日(日)の3日間、九州最大級のジビエの祭典『第3回 九州ジビエフェスト2026』が福岡・天神中央公園 貴賓館前にて開催されます。

九州各県のジビエ認証施設事業者や飲食店などが出店。

第3回となる今回は、絶品ジビエグルメはもちろん、豪華景品が当たる大抽選会やハンティングシミュレーターによる狩猟体験、ワークショップなど、イベントが盛りだくさん。ジビエ好きの方も、まだ食べたことがない方も、気軽に楽しめる内容となっています。

入場は無料ですので、ぜひ足を運んでみてください。

詳しくは公式サイトをご確認ください。
https://gibiertracks.com/kyushugibierfest-2026/

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本格フレンチのジビエコースで命の尊さを伝える「Restaurant Bel Oiseau(レストラン ベルオワゾー)」栃木県小山市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15682/ Wed, 11 Mar 2026 09:00:57 +0000 https://gibierto.jp/?p=15682 閑静な住宅街にひっそりとたたずむ「レストラン ベルオワゾー」は、JR小山駅の東口から徒歩15分ほどの場所にあります。同店ではフランスで6年間の修業経験を積み、星野リゾートでも腕を磨き上げてきたオーナーの山本シェフが作る、鹿や猪、熊、そして鴨などの多彩なジビエ料理を堪能できます。

木の温もりに包まれた店内で味わう、本格ジビエフレンチ

店名の「ベルオワゾー(Bel Oiseau)」は、フランス語で「美しい鳥」という意味です。さらにフランス語のことわざである「petit à petit l’oiseau fait son nid(少しずつ、鳥は自分の巣を創る=日本だと「継続は力なり」に近い意味)」という想いも込められています。

その店名を象徴するように、ナチュラルで木のぬくもりを感じられる店内には、さりげなく鳥のモチーフが散りばめられ、訪れる人々を優しく迎えてくれます。
山本シェフはフランスで出会ったこの言葉を大切にし、「ひとつひとつ丁寧に積み重ねる」という姿勢をそのまま料理づくりにも反映。旅の記憶や現地で得た着想を織り込み、心に残る一皿を届けています。根底には、単なる料理技術にとどまらない、命そのものへの深い敬意が感じられます。

肉を一度食べてから調理法を決める。個体差と向き合う繊細な仕事

食材となるジビエは、鹿児島県の処理施設から仕入れています。

山本シェフが最も大切にしているのは、食材の「個体差」です。肉の状態を判断するため、仕入れた肉は調理して必ず味見をするとのこと。その「個体差」を見極め、必要な処理や最適な調理法を判断されているそうです。

ジビエは年齢によって味わいが大きく変わります。若い個体はやわらかく、成獣は力強い味に。年を重ねた個体は旨味が濃縮されますが、そのぶん硬さも出るそうです。たとえば硬い肉は脂と合わせてじっくり煮込み、リエットに。ローストに適さない部位は、野生の脂と白ワインで丁寧に煮て、ペースト状に仕上げます。

こうした「個体に合わせた最適な調理」こそ、ジビエ料理の真骨頂であり、「ベルオワゾー」の味わいを支える大切な技術です。なかでも一年を通して提供される人気のリエットは、技術が凝縮された一品。食事の最初にパンと共に提供される定番メニューは香り豊かで味わい深く、まるで山の恵みそのもの。多くのお客様から高い評価を得ています。

「ベルオワゾー」のジビエコースで味わう、命と自然の恵み

「ベルオワゾー」が提案する「ジビエコース」(33,000円〜・税込)は、一皿一皿に自然の恵みと命への敬意が込められ、味わいだけでなく哲学や物語までも感じられる特別な時間を体験できます。

注目したいのが、鹿のロース肉をじっくりと焼き上げた「シカ ロース ロティー」。山本シェフは、「数あるジビエのなかでも鹿肉は食べやすい食材として親しまれる一方で、その持ち味を最大限に引き出すには、肉の状態を丁寧に見極めることが大切だ」と語ります。

火加減ひとつで味わいが大きく変わってしまうロース肉を、時間をかけて丁寧にロースト。そこへ鹿のジュ(肉汁)から作る特製ソースを合わせることで、しっとりやわらかく、奥行きのある一皿に仕上げています。鹿肉ならではの繊細な香りと深い旨味を、存分に感じることができます。

また、「ジビエコース」では、鹿肉と猪肉をパイで包み季節のキノコや野菜を詰め込んだ「シカとイノシシのプチビエ(パイ包み焼き)」も提供されます。香ばしいパイとジビエの旨味、そして芳醇なソースが一体となり、冬ならではの贅沢な味わいを堪能できます。

山本シェフによると、フランス料理ではフォアグラやトリュフ、季節のキノコなどを用い、ジビエ本来の味というよりも、ソースで味わうスタイルが確立されているそうです。そのため「ソースを食べると言っても過言ではない」と語るほど、ソース作りにはとくに力を注がれています。

料理人であり、ハンターでもある。その理由は「命を理解したい」から

日々お店で提供しているジビエは、鹿児島の信頼できる事業者から仕入れたものですが、ハンターとしての顔も持つ山本シェフは、料理人としての仕事とは別に、山に入り自ら鹿や猪の捕獲に携わることもあります。これは決して興味本位の狩猟ではなく「命を深く理解したうえで料理をしたい」という強い想いから始めた取り組みです。

野菜も魚も、生産者の顔が見える食材がほとんどです。しかし、ジビエだけは供給までの過程が見えず、どのように育ち、どのような環境で生きていた命なのかわからなかったからこそ、自分の目で確かめたいと感じられたそうです。

山では、熟練の猟師たちと共に地形を読み、風の流れを感じ、自然の厳しさを全身で受け止める必要があります。こうした経験は、料理人としての姿勢だけでなく、生き方そのものに大きな影響を与えました。

「山は食材を与えてくれるだけでなく、人間のあり方も教えてくれる場所です」

そう語る山本シェフの言葉からは、自然と向き合いながら命を扱う者としての覚悟と、深い尊敬の念が伝わってきました。

食材への敬意を守るための完全予約制。目指すのは「食の本質を伝えるレストラン」

「『ベルオワゾー』の役割は、ただ美味しさを届けることにとどまらず、『食の本質を伝えるレストラン』であることです。ジビエは、自然の中で生きた命との距離が近く、食育の観点でも大きな力を持っています」

完全予約制を採用しているのも、山本シェフの強い信念によるものです。予約分だけを丁寧に仕込むことで、食材を無駄なく使い切り、フードロスの削減にもつながります。その結果、お客様はその日一番の新鮮な料理を安心して楽しむことができるのです。

山本シェフには、もう一つ大きな夢があります。それは、自分の畑を持ち、山奥で採れる食材と常に近くに暮らすこと。「自ら育て、自ら採り、自ら仕留め、自ら調理する循環の中で生まれる料理こそ、誰よりも説得力を持つのではないでしょうか」と山本シェフは語ります。

ジビエ料理を通じて命の尊さや食材への想いを伝える「ベルオワゾー」には、静かな情熱があふれています。

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隠れ家レストランで味わう極上ジビエ! サステナブルな食文化を発信する「ビストリア 新所沢店」埼玉県所沢市松葉町 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15670/ Mon, 09 Mar 2026 13:17:06 +0000 https://gibierto.jp/?p=15670 西武新宿線・新所沢駅から徒歩わずか1分ほどのところにある大人の美食空間「ビストリア 新所沢店」は、『ジビエと野菜とワイン達』をテーマに掲げる隠れ家的レストランです。

青い壁に囲まれた地下への階段を降りると、まるでヨーロッパのビストロのような広々とした空間が広がります。落ち着いたピンクの壁面に、上品なゴールドのタイルがアクセントを添え、店内の壁に映し出されるプロジェクターの光と影が、空間にやわらかなぬくもりを生み出しています。

ここでは、やわらかな食感と、赤身の旨味が際立つ南アルプスの鹿肉のほか、猪、雉(きじ)、アナグマなどを、所沢の新鮮な野菜やオーナー厳選の種類豊富なワインとともに贅沢に楽しめます。

お店のオーナーシェフは、川上 さん。食品卸業界で培った流通の知識と、ジビエへの深い情熱を掛け合わせ、日本の食文化に新たな価値を届けています。川上さんが大切にしているのは、「安全で上質な肉を提供する」という信念。 提供するお肉の品質には細心の注意を払っています。

このお店で味わえるのは、命を尊び、素材の力を最大限に引き出した料理の数々です。口に運ぶたびに、自然の美しさや命の循環を感じさせてくれます。そのひと皿には、川上さんの想いと、未来へつながる「ジビエの物語」が込められています。

天然鹿肉と旬の野菜、ワインとともに楽しむ「アルプス鹿のロースト」

店内の黒板には、その日おすすめのメニューがずらりと並び、多種多様なジビエが顔をそろえています。

その中でも特に人気の定番料理が「アルプス鹿のロースト」(2,800円・税込)です。しっとりとやわらかな食感と、噛むほどに広がる上品な旨味が特徴で、初めて鹿肉を味わう方にも親しまれています。南アルプスで育った天然鹿の赤身を丁寧に焼き上げ、素材本来の風味を引き出した一皿です。

「やっぱり野生感が大事なんです。素材そのものを感じてもらいたいので、焼くときも塩と胡椒で仕上げます。ソースを添える場合は、最後にフルーツ系をほんの少しだけ」

料理に彩りを添えるのは、毎日、直売所から仕入れている所沢産の新鮮な野菜たち。パプリカやカボチャ、ケール、シシトウなど季節の野菜を使った付け合わせが、アルプス鹿の皿に華やかさを加えます。

「所沢の野菜は、直売所ならではのフレッシュさにくわえ、色鮮やかで豊富な品ぞろえに、つい心が躍ります」と川上さんは情熱的に語ります。

また、アルプス鹿と鴨(国産養殖)を使った「アルプス鹿と鴨のラグーのパスタ」(2,000円・税込)は、濃厚な味わいと香りが魅力のひと皿。高価な鹿肉や鴨肉の切り落としなどの余り部位 も、パスタソースやほかの料理に活用し、命を大切にする工夫が随所に施されています。

鹿肉と鴨肉をじっくり煮込み、芳醇なラグーソースに仕立てることで、ジビエならではのワイルドさとワインのコクが重なり、ひと口ごとに豊かな余韻が広がります。

ハンターであり医師でもある人物との出会いが導いた、ジビエ専門店への転機

「ビストリアはもともとイタリア料理店だったんですが、いまはジビエ専門レストランとして全面的に展開を進めているところなんです」と、これからの展望を語る川上さん。

もともとは食品卸会社を経営されていたそうですが、 卸先の飲食店が次々と閉店していく現状を目の当たりにし、店舗を引き継いで新たなレストランとして再生させる事業を始めました。それをきっかけに、川上さんは外食ビジネスやシェフ業にも挑戦するようになります。「ビストリア」も当初はイタリア料理店として誕生しましたが、ある運命的なご縁をきっかけに、ジビエ専門レストランとして生まれ変わったのです。

転機となったのは、お店の近隣にある病院の院長先生との出会いでした。医師であり狩猟にも携わるその方から、ある日、捕獲された鹿が必ずしも有効に活用されるとは限らず、山から運び出すこと自体にも多くの困難があるという現実を聞かされたそうです。その院長先生は、この問題を解決するため、私財を投じて南アルプスに食肉処理施設を設立。

院長先生のここまで取り組む姿勢に、川上さんは強く心を動かされ、自身が経営する食品卸会社のネットワークを生かし、本格的なオリジナルブランド「南アルプス鹿」と銘打って、ジビエの流通に乗り出しました。

そうしてジビエの世界に深く関わるうちに、「ビストリア」はジビエ専門レストランとしての道を歩み始めます。

「結局、院長先生に出会わなかったら、ここまでやっていなかったと思うんですよ。彼の情熱に、こちらも心を動かされてしまって。ある日、先生が鹿を持ってきてくださり、色々と教えていただき、気づけば自分のほうがどんどんジビエにのめり込んでいました。『ジビエってこんなに深い問題だったのか』と改めて思うようになったんです 」とジビエ専門レストランとして生まれ変わるまでの、熱い想いを聞かせていただけました。

食材への強いこだわり。南アルプス鹿と徹底した品質管理

川上さんは、ジビエの中でも鹿肉が持つ可能性に強く惹かれています。「山で育つ鹿は、木の実や草などを食べているため、臭みが少ない。適切な検査、処理を行えば、未来の食卓を支える健康的な食材になり得る」と、川上さんは確信しているのです。

ビストリアの主力である「南アルプス鹿」は、処理施設にて、個体ごとの状態を把握するための検査や確認を行いながら、速やかに解体・部位分けを行い、急速冷凍によって品質を管理。こうした日々の積み重ねのもと、状態を見極めながら、厨房へと届けられています。

「ビストリア 新所沢店」から生まれる、ジビエ文化の未来と新しい命の循環

川上さんは、「将来的にはチェーン展開を目指し、より多くの方に上質で安全なジビエを届けたい」と、未来への希望を語ってくれました。

課題として見えてきたのが、有害駆除を担うハンター不足。川上さんと院長先生の会社で協力し、ハンターに報酬を支払う仕組み作りに取り組み始めました。

こうして駆除した鹿を有効活用するため、鹿を獲る人、活かす人、食べる人がつながり、持続可能な形で鹿肉文化を回していく仕組み作りを目指したことで、現在は少しずつ若いハンターが集まり始めているそうです。

「『鹿肉を広めるためのレストラン』をやっています。いずれはチェーン展開できるように、捕獲から流通、提供までの課題を一つずつ解決し、持続可能な循環をしっかり形にしていきたい」と川上さん。

行政の支援だけに頼るのではなく、自らの手で課題に向き合い、ジビエ文化を広めようと奮闘する姿勢には、地域の自然や命への真摯な思いが感じられます。こうした動きはやがて全国へと広がり、支援の輪やジビエの魅力に惹かれて訪れる人々が増えていく未来が想像できます。

「ビストリア 新所沢店」から生まれる、新しい命の循環。今後の展開に、ますます期待が高まります。

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居酒屋価格で本格ジビエを。地域に根ざした新しい食文化を発信する「小田原ジビエ龍」神奈川県小田原市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15657/ Fri, 06 Mar 2026 09:00:38 +0000 https://gibierto.jp/?p=15657 小田原市の宮小路エリアに、ジビエを“高級料理”ではなく、気軽に楽しめる“日常の料理”として提供する居酒屋があります。都内のイタリアンやフレンチでシェフとして腕を磨いてきた店主の増田 龍次(ますだ りゅうじ)さんと、ともに店を切り盛りする奥様の増田 可奈子(ますだ かなこ)さんが営むお店「小田原ジビエ龍」です。

リーズナブルな価格で小田原産のジビエを提供

「小田原ジビエ龍」では、1,000円前後のリーズナブルな価格帯で、本格的な技法を取り入れたひと皿を提供しています。店主の増田さんがハンターでもあることが、このお店ならではの空気感や料理の背景を形づくっています。

店内に一歩足を踏み入れると、猟で仕留めた動物の毛皮や猟具など、ジビエにまつわる装飾が視界に飛び込んできます。野趣とセンスの良さが程よく共存した、アットホームでエネルギーに満ちた空間が広がっています。

ここには増田さんが提供するジビエ料理を求めて、地元の常連客や遠方からの観光客など様々な人が訪れます。SNSで発信される珍しい食材を楽しみに足を運ぶファンも多く、つねに話題にあふれるお店です。

提供される一皿一皿に、増田さんが積み重ねてきた技術と、小田原の自然への深い敬意、そして「命を無駄にしない」という揺るぎない情熱が息づいています。

名物チャーシューからローストまで。気軽な価格帯で楽しむ本格ジビエの魅力

一番人気のメニューは「鹿肉の塩チャーシュー」(800円・税込)です。あえて多くの人になじみのある料理にすることで、ジビエ初心者でも挑戦できる工夫が施されています。鹿肉を大鍋でゆっくり煮込み、ハーブを効かせて、ふっくらやわらかい食感に仕上げています。

増田さんいわく、大きなオス鹿は旨味が強いのが特徴的で、小さなメス鹿はやわらかい食感が魅力だそうです。そういった個体の違いを感じられる、ジビエならではの醍醐味を楽しみに通う常連のお客様も多いんだとか。

増田さんの手で仕留めた小田原産の鹿肉にじっくりと火入れした「鹿肉のロースト」(1,000円・税込)も看板メニューの一つです。しっとりやわらかな肉質が特徴で、付け合わせには仲間のハンターが育てた色鮮やかな小田原産の野菜が添えられています。

ナイフがすっと入るローストは、しっとりとした肉質を堪能でき、小田原の土地が育んだ新鮮な野菜との相性も抜群です。中心部までの加熱や衛生管理に配慮して提供されています。

また、鮮度と処理にもこだわっています。仲間のハンターたちと捕獲したシカは、2時間以内に小田原市にある加工処理施設へ運び、丁寧な下処理が行われます。こうした日々の取り組みを積み重ねることが、幅広い年齢層の方からの「食べやすく、美味しい」という評価につながっていると、増田さんは語ります。

命への敬意と食材とのご縁が紡いだ、ここでしか体験できない特別なジビエ

お店のメニューには時折、思わず目を見張るような珍しいジビエが登場します。ハクビシン、ツキノワグマ、さらには宮古島産のインドクジャク(孔雀)など、他ではなかなか出会えないラインナップが登場します。

店主の増田さんは、宮古島産のインドクジャクとの出会いが印象的だったと言います。増えすぎた外来種として捕獲対象になっていたインドクジャクを扱う猟師さんに同行して宮古島へ訪れた際、現地でインドクジャクの解体や調理を見学。見た目は鶏肉とほとんど変わらず、食べやすい味わいに魅了されたのだそうです。

こうした唯一無二の食材に出会えるのも「小田原ジビエ龍」ならではの魅力です。

増田さんがジビエに力を入れる理由の中心には、「動物たちの命を無駄にしたくない」という強い想いがあります。日本では現在、捕獲された野生鳥獣の多くが焼却処分・埋設処分されており、ジビエとして利用されるのは1割程度です。この現状に疑問を抱き、「本来はもっと美味しく、もっと活用できるはずの命があることを伝えたい」と考えるようになったそうです。

「処分されて終わるより、誰かの血肉になるほうが、命として活きると思うんです」。そう語る増田さんの言葉には、命を大切に扱う揺るぎない信念が感じられました。

小田原市の恵みを食卓へ、そして次の世代へ。日本の食文化を更新する「小田原ジビエ龍」の挑戦

小田原市は海や山、川や温泉もあり、ジビエも獲れます。この豊かな環境がお店の料理を支えているのだそうです。

お店が位置する宮小路エリアは、民間や地域コミュニティの動きに加え、空き店舗活用などの支援制度も背景に、少しずつにぎわいを取り戻してきた地域です。

全国的にも非常に珍しい地域活性化モデルとして注目されており、増田さんご夫妻もその一員として街を盛り上げています。

お二人は、ジビエを通じた食育にも熱心です。「親子で気軽に来てほしい」と語る増田さんは、イベントでの子ども向けの食体験にも積極的に取り組んでいます。

「幼いころに新鮮で美味しいジビエを体験すれば、ジビエに対する理解や親しみが自然と深まっていくはず。そこにジビエ文化の未来への大きな希望を感じています。意外なことに、イベントでは大人より子どものほうがジビエに対して素直な関心を示し、初めて口にする鹿肉や猪肉を目を輝かせて頬張る姿が印象的でした」

ジビエを通して、命をいただくという行為をより深く丁寧に伝えていきたいという増田さんご夫妻。「小田原ジビエ龍」は、土地の文化と寄り添いながら、日々の営みの中で新たな食のかたちを積み重ねています。

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近畿の山が育てた猪肉の旨味を『はりはり鍋』で味わう「プリンセスキッチン」兵庫県川辺郡猪名川町 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15644/ Wed, 04 Mar 2026 09:00:42 +0000 https://gibierto.jp/?p=15644 町域の約8割を森林が占め、季節ごとに穏やかな表情を見せる兵庫県川辺郡猪名川町。そんな里山の景色に包まれた場所に「プリンセスキッチン」はあります。大阪市内から車でおよそ1時間、中国自動車道・川西IC(インターチェンジ)出口からは20分ほどで到着します。

主要道路からアクセスしやすく、道中の自然を楽しみながら訪れられます。

アンティーク調の調度品が彩る邸宅風レストラン「プリンセスキッチン」

「プリンセスキッチン」は、白を基調とした洋館風の外観が印象的なレストランです。1階が店舗、2階が住居となっており、まるで誰かの邸宅に招かれたかのような、落ち着いた雰囲気を感じさせてくれます。

店内にはアンティーク調の家具や調度品が並び、洋館ならではの高級感と温かみがほどよく溶け合った空間が広がります。そんな都会の忙しさを忘れられる空間で、ジビエのコース料理が提供されています。

関西の伝統料理『はりはり鍋』を山鯨(猪)で味わう

コース料理で提供される猪肉には、和歌山県産を中心に、近畿圏内のものが使用されています。「猪のはりはり鍋」、または「猪のハンバーグステーキ」のどちらかのコース(ランチ/4,000円・税込、ディナー/5,000円・税込)で猪肉を味わえます。

「はりはり鍋」は、水菜のシャキッとした歯ごたえが魅力の大阪・千日前の鯨料理店『徳家』が発祥とされる郷土料理です。本来は鯨肉と水菜を出汁で軽く煮て食べる料理ですが、現代では豚肉など、他の肉で代用されることも増えています。「プリンセスキッチン」は、その「はりはり鍋」を山鯨(猪)で味わえる数少ないお店です。

今回いただいた「はりはり鍋」は、カツオの香りがふわりと立ち上がり、主役の猪肉は柔らかく、噛むほどに旨味が口の中でじんわり広がります。

オリジナルブレンド出汁に猪肉の深いコクが溶け込み、それらがしみ込んだ豆腐にも箸が止まりません。

全体的に、あっさりしているのに旨味の層に深みがあり、体に染みわたる味わいです。水菜のシャキシャキ感とも相性が抜群でした。

最後は、出汁の旨味を生かしたきしめんで締めくくります。猪肉の存在感をしっかり残しつつ、野菜の新鮮さを邪魔しない絶妙なバランス。満足感のあるコースでした。

メイン料理を待つあいだには、すべて手作りの前菜も提供されます。その内容は季節の野菜を中心に、来店する方の年齢や好みに合わせて、4種盛りの内容を少しずつ変えるこだわりぶりです。今回は、猪名川町の名産品をふんだんに盛り込んだ「地元を味わう前菜」が用意されていました。メインの鍋を食べる前から、猪名川町の温かさや豊かさを堪能できる一皿です。

そのほか猪名川町産の烏骨鶏卵をはじめ、厳選した素材を使った「佐保姫プリン」(480円・税込)も「プリンセスキッチン」の人気商品です。お土産として購入されることの多いプリンですが、コース料理のデザートとしても味わうことができます。

里山で育まれる「命を循環させる」ジビエの取り組み

食後に農作物被害(獣害)と、捕獲個体の利活用についても話を伺いました。「収穫間際には獣害が多く発生するので、農家の人にとっても死活問題です。里山では、猪や鹿による農作物被害が深刻で、電気柵なしでは作物が育たないほどです」と、語ってくれたのは、オーナーの廣島(ひろしま)さんです。
「適切に捕獲・処理された個体は、美味しいジビエとしていただくことができます。里山でレストランを営む私たちは、そうした場所で捕獲された野生動物をジビエ料理として提供することも大切な役割だと考えています」

「料理人ならではの工夫で、ジビエが苦手な方にも食べやすい調理法を追求し、滋養豊かな山の恵みを楽しんでいただければ嬉しく思います。また、ジビエの利用は、農閑期の収入確保や猟師の育成にもつながり、地域の持続的な循環を支える力にもなります」

廣島さんは、地域の鳥獣被害問題を地域資源へ変える取り組みを語ってくれました。

「プリンセスキッチン」では、里山の自然と共に生きるため、そして捕獲された命を無駄にしないために、ジビエをおいしく、正しく活かす取り組みが続けられています。

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【動画】猟師の1日に密着! 農家の被害と駆除された有害鳥獣のジビエとしての利活用とは? https://gibierto.jp/article/movie/15640/ Tue, 03 Mar 2026 09:00:49 +0000 https://gibierto.jp/?p=15640

神奈川県小田原市でジビエの利活用を行っているアップサイクルブランド「Recovery and Reload」代表であるハンターの宮本亮さんに、活動についてのお話を伺いました。

動画では野生鳥獣による農作物被害の実情や、そうした被害を減らすためにハンターがどういった活動をされているのか? その1日に密着しました。

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銀座の地下で出会えるフランス・リヨンの食堂。鹿を古典料理に着地させる「サラマンジェ ド イザシ ワキサカ」東京都中央区 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15627/ Fri, 27 Feb 2026 09:00:03 +0000 https://gibierto.jp/?p=15627

銀座7丁目にあるビルの地下1階、エレベーターの扉が開くと、フランスのブション(リヨンの食堂)の光景が広がります。お店の名前は「サラマンジェ ド イザシ ワキサカ(以下、サラマンジェ)」。フランスのリヨンに根づく郷土料理を、東京でそのまま味わうことにこだわる一軒です。

オーナーシェフの脇坂さんは、パリとリヨンで研鑽を積み、横浜の「リパイユ・エクスキーズ」でシェフを務めたのち、2006年に虎ノ門で開業。2013年に銀座へ移転し、現在の場所でリヨンの食文化を伝え続けています。

ジビエという食材が特別なものとして語られがちな東京で、このお店が面白いのはジビエであることを過剰に演出しないところです。映えや創作のための料理を作るのではなく、古典の手順を守り、材料は違えどフランスの人たちが食べているものを、ここ日本で再現する。そんな信念と気骨が、銀座の地下に根付いています。

「ニホンジカのロワイヤル」が見せる、鹿の扱いやすさと奥行き

この日いただいたのは、「ニホンジカのロワイヤル」(6,600円・税込)。鹿を軸に据えながら、フレンチの古典へ踏み込んだご褒美の一皿です。

ロワイヤルは本来、野うさぎで作るのが定番とされる古典料理です。しかし日本では野うさぎが手に入りにくいことから、サラマンジェではその手法を鹿に置き換えて再構成しています。

内側にフォアグラ、その外側を鹿のウデ肉のミンチをベースにしたファルス(詰め物)で包み、さらにその外側を鹿のバラ肉で包んでロール状に成形。それを鹿の出汁の中でゆっくりと煮込み、提供の直前に再度、煮汁で温めて仕上げます。

煮立てないのは、せっかく整えた食感を崩さないため。温めはあくまで仕上げの加熱で、すでに火入れは完了しているという設計です。

仕上げに鹿の煮汁をベースにしたソースをかけ、トリュフを乗せれば完成です。

テーブルに並べたとき、お皿の上で艶をまとったこのソースの存在感がとくに印象的でした。脇坂シェフによると、鏡面のような状態まで煮詰めたものを「ミロワール」と呼ぶそうです。

食べ方の正解は「全部を一緒に」。フォアグラとトリュフが鹿の旨味をより高みへ

このニホンジカのロワイヤルはフォアグラとトリュフが前に出ているように見えますが、主役はあくまでも鹿です。脂が少なく、赤身の直線的な旨味を持つ鹿に、フォアグラの脂が丸みと舌触りを与え、トリュフの深い香りがその美味しさをより一段上へと引き立ててくれます。

脇坂シェフは「フォアグラとお肉とソースとトリュフを一緒に食べるのが、一番良い」と話します。それぞれを単体ではなく一緒に口へ運ぶことで外側と内側で異なる食感が楽しめ、噛むたびに温度と香りが更新されていき、鹿の繊細さが古典の技術で立体になっていく。そんな食べ進むほど納得させられる料理が、ニホンジカのロワイヤルです。

ジビエの要は仕入れの透明性

ジビエについて脇坂シェフが繰り返していたのは、「安心な業者から仕入れることが大事」という一点でした。現在メニューの中心は鹿で、イノシシなどは入荷状況や希望があればというスタンス。過去にやっていた鳥類のジビエは現在は取り扱うのをやめたと言います。

背景にあるのは、野生鳥獣の肉が抱える“読めなさ”です。たとえば鳥類の狩猟で使われる散弾(鉛玉)は、どの部位に入っているか外からは分からず、当たりどころ次第では素材を料理にすることもできなくなります。

だからこそ、きちんと処理がされていると信頼できる処理業者のお肉は、安心して素材として使えるというわけです。サラマンジェで使う鹿は、岐阜県の処理施設から届いています。「仕入れ先を信頼できるからこそ、過度に手をくわえず“届いたままの状態”で勝負できる」と脇坂シェフは語っていました。

かつて鹿は、マリネして香味野菜やスパイスで整えるのがセオリーだった時代もあったそうです。しかし今は、状態の良い鹿ならその手間が要らないとのこと。処理が良ければ良いほど野性味はほとんど感じず、扱いに特別な細工も不要になります。

ジビエの評価を料理の手腕だけに寄せるのではなく、まず素材の入口から正していく。その姿勢が、お店の本格的なクラシック志向ときれいに重なっていました。

銀座で「フランスに行くより濃いリヨン」を

最後に脇坂シェフが強調したのは、「うちは創作フレンチではなく、クラシックを基礎・基本どおりにやっている」ということでした。大きな皿に少しだけ、という方向性ではなく、本場で食べられている料理が“どん”と出てくる。だからこそ「リヨンの料理が好きな人、基本通りのクラシックが好きな人に来てほしい」と語られていました。
ジビエを珍しい肉として消費するのではなく、料理として理解したい人にこそ、刺さる一軒です。

お店の現在の客層は40代以上が中心だそうです。ドレスコードはありますが、構えすぎる必要はなく、サンダルなどの極端にラフな服装でなければ自然体で楽しめる雰囲気です。ディナーコースは10,000円(税込)の設定があり、ワインはボジョレーからコート・デュ・ローヌ北部までを厚く揃え、グラスで1,300円〜3,000円ほどのレンジだと言います。

紹介したニホンジカのロワイヤルは“本日のおすすめ”としてスポットで出る料理のため、狙って食べたい場合は事前連絡が必須です。前日では間に合わないことがあり、目安は1週間前。なお、お店は席があれば当日でも入れますが、週末はとくに予約推奨だということです。

日本に居ながらにしてフランスのリヨンの味を食べたいという方は、ぜひ銀座に足を運んでみてください。

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猪のひつまぶし風に感動。麻布の隠れ家で楽しめる素材の味が際立つジビエ「西麻布ワールドネイチャーファーム」東京都港区 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15611/ Wed, 25 Feb 2026 09:00:57 +0000 https://gibierto.jp/?p=15611

西麻布の坂道を登った先。大きな看板があるわけでもなく、初めてなら「本当にここで合っているのだろうか?」と立ち止まって悩んでしまうような場所に、ジビエとオーガニック食材、そしてワインを軸にした小さなお店「西麻布ワールドネイチャーファーム」があります。

もともとは事務所兼、試食スペースとして始まった同店は、お客さんの「ここで食べたい」という声に押されるように気づけばランチ、そして夜はコース料理まで。意図せず“隠れ家”になってしまったというのが成り立ちです。

料理の方向性は明快で、「素材を信じて、余計なことをしない」。ジビエの風味をソースで隠してしまうのではなく、塩や自家製ポン酢などで味の輪郭を整え、肉そのものが持つ甘みや香りを真っすぐに口の中へと届けています。

初めての人でも楽しめるジビエになっている一方で、通には通で個体差というジビエの面白さを提供する。そのバランス感覚が、お店の空気をつくっていました。

土鍋のご飯に甘辛い猪をのせて。「猪のひつまぶし風」で味変の楽しさを

心を掴まれたのが名物の「猪のひつまぶし風」(3,000円・税込)です。土鍋で炊いたご飯に、甘辛く煮つけた猪肉をのせ、蒸らして仕上げる一品です。

ひつまぶし“風”と名乗るのは、形式を真似るためではなく、「味変を重ねて飽きずに食べ切れる構成」にしたかったから、とは店主の福田さん。まずはそのまま、次に卵黄とからめて、最後に出汁とあられをかけて、という流れで、猪の脂の甘さが段階的に表情を変えていきます。

肉はロースを中心に、脂ののった部位を選んで使っているとのこと。甘辛く煮られた猪脂の香りが、ご飯の熱でほどけるように広がります。さらに出汁は鰹と昆布がよく効いており、後半からお茶碗へと注ぐことで一気に味が軽やかになります。

猪の脂を卵黄のコクで押し切るのではなく、最後に出汁でほどく設計があるからため、食べ終わりまで重くなりません。

そしてひつまぶし風のお米にも物語があります。こちらは新潟の十日町市松之山で福田さん自らが手植え・手刈り・天日干しで育てたコシヒカリを使っており、無農薬での栽培にも挑戦されているそうです。ジビエだけでなく、米まで含めて「素材で勝負する」姿勢が、ここでも貫かれています。

蒸気の立ち上がりがごちそうになる「オーガニック野菜と熊のセイロ蒸し」

もう一つの名物が「オーガニック野菜と熊のセイロ蒸し」(4,000円・税込)(今回はツキノワグマを使用)です。せいろの蓋を開けた瞬間、湯気とともに立ち上がる旬の野菜の香りは鮮烈の一言。味付けは一切せず、野菜も肉も蒸すだけ。だからこそ、噛むごとに野菜の甘みが口のなかにじゅわっと広がり、熊の脂の質感もごまかしなく伝わってきます。

野菜は無農薬を中心に、その時期の旬の有機野菜が使われています。この日提供されたのは南房総産の有機野菜。旬の野菜を口に運ぶと、調味していないのに「もう味がついているのでは」と錯覚するほど、火入れによって香りと甘みが濃くなっています。ここに、塩か自家製ポン酢を添えて食べます。

熊肉の食べ方のおすすめは、まず塩。口に入れると熊肉の“甘い脂”と、奥にほんの少しだけ顔を出す熊肉の風味が、ふっと立ち上がります。

このままでも十分に美味しいのですが、福田さんいわく「実際に食べると、ポン酢の方が美味しいと思います」。この言葉が正直で良いです。塩で素材となるジビエの輪郭を確認し、ポン酢で一気に箸を進める。そんな順番が、この料理の正解だと感じました。

熊肉は個体差が大きい食材と言われていますが、このお店では「脂がのっていて、風味も良く、美味しい」と判断できた個体をせいろ蒸しに回しているとのこと。硬さや香りが強い個体は、赤ワイン煮込みなど別の料理で活かしているそうです。

素材の状態を見て出し方を変えるのが、ジビエを日常の皿に落とし込むための技術なのだと思います。

ワインのお店であり、ジビエの入口でもある。あえてソースに寄りかからない理由

西麻布ワールドネイチャーファームでは、ワインも主役です。グラスは手に取りやすい価格帯から用意しつつ、オーガニックのラインはしっかりと良いものを置く。なかでも宮崎・綾町(あやちょう)のオーガニックワインを扱っているという話が印象に残りました。

このお店のお料理は、素材の味を楽しめるようにしたシンプルな味付けなので、オーガニックワインの豊かな香りと料理の香りがぶつかりません。

福田さんが「フレンチのようにソースにこだわるというより、塩でジビエの味を楽しんで欲しい」と話していた通り、ここでは素材の正直さが優先されるのです。その方針のおかげで、ジビエに苦手意識がある人ほど、最初の一口で先入観がほどけてくれるはず。

「風味を味わってこそジビエ」という玄人好みの方向へ寄せるのではなく、食べやすい個体をあえて選び、誰でも美味しいと思える入口を用意する。そのうえで、希望があれば“オスとメスの食べ比べ”のように、香りの違いまで楽しめる提案もできる。入口と奥行きが同居しているのが、このお店の強みなのだと思いました。

予約制の特別を、気負わずに。2回目はコースで、季節の一皿に出会いたい

今回ご紹介した猪や熊といった食材は、在庫や個体差でコンディションが変わります。そのため基本は予約制となっています。とくに牡丹鍋や熊鍋などは事前の相談が安心です。一方で、猪のハンバーグやステーキなど、予約なしでも対応できるメニューも用意されています。

とくにランチタイムには今回ご紹介した2つの通常メニューだけではなく限定のショートコース(3,500円・税込)も用意されており、その日のジビエを使ったローストとパスタが楽しめます。

そして一度訪れると、次からは「もっと美味しいジビエを」と期待してしまうことは間違いありません。

派手な看板はなく、料理は驚くほどシンプル。それでも、口に残る満足感が強いのは、素材の選び方と出し方にブレがないからでしょう。ジビエを特別な体験に閉じ込めず、日常の延長に置き直す。西麻布の隠れ家で出会えた今日の2皿は、ジビエのイメージを確実に塗り替えてくれるはずです。

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徳島の高校生が考案した「おかわりシカたなしカレー」が吉祥寺PARCOへ。農業遺産とジビエでつなぐ、食と地域の未来 https://gibierto.jp/article/event/15597/ Tue, 24 Feb 2026 08:33:06 +0000 https://gibierto.jp/?p=15597 農林水産省、農業遺産認定地域連携会議主催の「第3回高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」にて、66件の応募の中から見事ゴールド賞に輝いたアイデアがあります。徳島県立池田高等学校の生徒たちが考案したジビエカレー、その名も「おかわりシカたなしカレー」です。

この受賞アイデアが、東京・吉祥寺PARCO内の和カフェ「kawara CAFE&KITCHEN」にて、2026年2月2日から2月28日までの期間限定でメニュー化されています。

2月13日、考案者の生徒たちが実際に店舗を訪れ、プロの手によって提供された自分たちのメニューを実食しました。その様子を取材し、このアイデアに込められた想いを伺いました。

プロの技で再現された高校生たちの絶品カレー

若者が行き交う吉祥寺のランドマーク、吉祥寺PARCO。その7階にある「kawara CAFE&KITCHEN」に、高校生たちの姿がありました。

はるばる徳島からやってきたのは、コンテストでゴールド賞を受賞した3名と、シルバー賞を受賞した2名が在籍する、県立池田高等学校の2年生「探究科食文化班」のメンバー(写真左から華岡愛文先生、中村蒼空さん、矢野新さん、福田悠作さん、先川こはるさん、山口ひまりさん)です。

少し緊張した面持ちで待っていた彼らの前に、香ばしい匂いとともにカレーが運ばれてきました。その瞬間、表情がパッと華やぎます。

「おいしい……!」
「スパイスが効いて、本格的な味になってる!」

彼らが口にしているのは、2026年2月に1ヶ月間限定で提供されている「おかわりシカたなしカレー」。徳島県祖谷(いや)地方の食材「祖谷の地美栄(ジビエ)」シカ肉を使ったキーマカレーです。

自分たちのアイデアが、東京のおしゃれなカフェ・ダイニングのメニューとして多くのお客様に楽しまれている——。その現実に、矢野さんは喜びを隠せないようでした。

「まさか自分たちがゴールド賞を取れるとは思っていませんでした。こうして東京にも来ることができて、コンテストにチャレンジして良かったです。お店の前には『おかわりシカたなしカレー』の大きなポスターが貼ってあって、改めてすごい賞を取ったんだなと実感しました。大々的に紹介してもらえて本当に嬉しいです」

今回彼らが参加したアイデアコンテストは、農林水産省、農業遺産認定地域連携会議が主催する、次世代への農業遺産の継承を目的としたプロジェクトです。コンテストのお題は、「2地域以上の農業遺産地域の産品と一般の材料を自由に組み合わせた、食品または料理のアイデア」。

農業遺産とは、何世代にもわたって継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに関わる文化、景観、生物多様性などが一体となったシステムを認定する制度で、現在日本国内には36の地域が存在しています。※世界農業遺産17地域、日本農業遺産28地域(重複認定あり)

池田高校の生徒たちが選んだのは、地元「徳島県にし阿波地域」と、海を挟んだ隣県にある「兵庫県南あわじ地域」。これら2つの農業遺産地域には、以下のような特徴があります。

・徳島県にし阿波地域(世界農業遺産)

最大40度にもなる急傾斜地を、段々畑にすることなくそのまま利用する「にし阿波の傾斜地農耕システム」。カヤをすき込んで土壌流出を防ぎながら、400年以上にわたり雑穀などを育ててきました。

・兵庫県南あわじ地域(日本農業遺産)

稲わらを牛の飼料にし、牛ふんを堆肥として畑に還す「循環型農業」が特徴。このサイクルが、有名な淡路島のたまねぎを生み出しています。

「おかわりシカたなし」に込めた地域への想い

池田高校には「課題研究」という授業があり、生徒たちは高校1年から2年間、それぞれの興味に分かれて班を形成し、地域活性化にもつながる主体的な探究学習を進めていくそうです。

その中で生まれた「探究科食文化班」の5名が、昨夏このコンテストの存在を知り、応募することに決めました。

「それまでの食文化班の活動の中で、地元・三好市には『祖谷の地美栄(いやのジビエ)』があることを知っていました。もう一箇所の『南あわじ地域』には、玉ねぎやお米が産品としてあったので、これらを掛け合わせてカレーのアイデアが浮かびました。匂いにイメージのあるジビエのシカ肉を、誰もが親しみやすいカレーに取り入れることで、おいしく食べてもらえたらいいなと思って」(矢野さん)

さらにお米には、「にし阿波地域」で産出されるはだか麦、たかきび、粟、こきび、やつまたといった雑穀を混ぜ合わせ、甘みやプチプチ食感を楽しめるようにしたそうです。

「若い人にも年配の方にも刺さる料理は何かと考えたときに、伝統を守りながらも、今どきの新しいトレンドを取り入れていくのが大切だと、今回の企画を通して思いました」(先川さん)

そして付けられた名前が、「おかわりシカたなしカレー」。「鹿」と「仕方なし」を掛け合わせ、「おかわりせずにはいられないほどおいしい」という意味を込めたという、高校生らしい遊び心あふれるネーミングです。

また、矢野さんはネーミングについてこんな想いも語ってくれました。

「にし阿波のジビエを活用することは、『野生鳥獣による農林水産業被害』という地域課題を解決することにつながります。そして、南あわじの食材を使うことは、循環型農業という持続可能なシステムを応援することになるんです。このカレーを食べることが地域の環境保全につながるので、だから皆さんにいっぱい食べてほしいなって。そんな想いもこの名前に込めました」

引率していた担任の華岡愛文先生に、生徒たちを指導するなかでどんな苦労があったか伺うと、

「正直に申しまして、私はほとんど何もしておりません。生徒たちがこれをやりたい、あれをやりたいと、自発的に動いてくれました。試行錯誤したり、これが合っているのか間違っているのかとか、そういうものを全部生徒が自分たちで考えてやっていました。探究科食文化班として一年間続けてきた活動の積み重ねが、このゴールド賞という結果につながったのだと思います」

と話します。

今後は、「おかわりシカたなしカレー」とその開発を通して経験したことを、徳島県内でたくさん広めていく予定があるそうです。

「『食を通して地元を盛り上げたい』というのがぼくらの目標としてあるので、今回の受賞はあくまで通過点だと思っています。食だけに限らないんですけど、地元の魅力って、意外と地元の人たちが知らないっていうのも結構あるんですね。それで、魅力を広めるといってもやっぱりぼくたちだけでは力が足りないので、まずは地元の人たちにきちんと魅力を伝えて、知ってもらいたいです。そして一丸となって、地域の魅力を全国に広めていくのが大事かなと思っています」(矢野さん)

地域を想う高校生たちのアイデアと、素材の良さを最大限に活かすプロの調理技術。その両方が噛み合い、素晴らしい一皿が完成しました。「祖谷の地美栄」シカ肉は「国産ジビエ認証」の施設で適切に解体処理されているため、臭みはまったく感じられません。「南あわじ地域」の「きぬむすめ」と、「にし阿波地域」の5種類の雑穀の相性も抜群です。

今回「kawara CAFE&KITCHEN」では、「おかわりシカたなしカレー ~徳島県『祖谷(いや)の地美栄』シカ肉のキーマカレー~」に加え、関連メニューとして、「徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー」と、その2つを一度に楽しめる「ハーフ&ハーフ」も用意されています。

2026年2月28日までの期間限定メニューです。高校生たちの情熱が詰まったカレーを、ぜひこの機会に味わってみてください。

<商品情報>

■おかわりシカたなしカレー ~徳島県「祖谷(いや)の地美栄」シカ肉のキーマカレー~(サラダ・スープつき) 1,540円(税込)

■徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー(サラダ・スープつき) 1,540円(税込)

■徳島県「祖谷(いや)の地美栄」シカ肉のキーマカレーと徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー ハーフ&ハーフ(サラダ・スープつき) 1,760円(税込)

書き手:中村洋太
X:https://x.com/yota1029
note:https://note.com/yota_nakamura

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「静岡マラソン2026」にてジビエトが静岡県産の「鹿肉団子汁」を完走ランナーに提供します。 https://gibierto.jp/article/event/15565/ Fri, 20 Feb 2026 09:02:57 +0000 https://gibierto.jp/?p=15565

2026年3月8日(日)に開催される「静岡マラソン2026」にて、ジビエトはフルマラソン完走者を対象に、静岡県産の鹿肉を用いた「鹿肉団子汁」を提供いたします。あわせて、ボディメイクにおけるジビエの魅力を訴求するPR施策を実施いたします。

高たんぱく・低脂質・鉄分豊富な鹿肉は、日々のトレーニングやボディメイクに取り組むアスリートにとって注目の食材です。今回は、完走後のランナーに温かい鹿肉団子汁を振る舞うとともに、ジビエの栄養面の魅力や喫食に関する情報をお届けします。

フルマラソンを走り切った体に、地元・静岡の恵みがたっぷり詰まった一杯をぜひお楽しみください。

なお、当日の様子は後日、映像及び記事としてジビエトにて紹介予定です。

大会概要

  • 大会名称:徳川家康公顕彰プロジェクト 静岡マラソン2026
  • 開催日:2026年3月8日(日)※雨天決行
  • 会場:静岡市内
  • 公式サイト:https://www.shizuoka-marathon.com/

※ジビエト及び本施策は「農林水産省 令和7年度 鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)」による支援を受けています。
※掲載の内容は2026年2月20日15時点の情報に基づいています。詳細は大会公式サイトをご確認ください。

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Jリーグ「奈良クラブ」ホームゲーム会場で「奈良ジビエ」体験イベントを実施します(2月14日 FC今治戦) https://gibierto.jp/article/event/15559/ Thu, 12 Feb 2026 06:00:05 +0000 https://gibierto.jp/?p=15559

2026年2月14日(土)に開催されるJリーグ所属「奈良クラブ」のホームゲーム会場で、「奈良ジビエ」体験イベント(主催:AppBank株式会社)を実施します。

本イベントでは、美容・ボディメイクとジビエの相性の良さを“食べて学ぶ”ことをテーマに、会場内を回遊しながら参加できるクイズ企画を展開します。

また、参加者には、猪汁(しし汁)を数量限定で無料提供します。

体験できるコンテンツ

1.美容・ボディメイク×クイズハンティング(スタンプラリー形式)

会場内の複数箇所にクイズを掲出し、来場者が“探して解く”スタンプラリー形式で実施します。
美容/ボディメイク(栄養管理を含む)、ジビエの基礎知識、地産地消などをテーマに出題します。

2.猪汁(しし汁)の無料提供(数量限定)

クイズ参加者に、参加賞として猪汁(しし汁)を無料提供します。※なくなり次第終了

3.ミニトークショー

ナレーションやイベントMCなどで活躍する郡正夫(コーリー)さんと、奈良県ご当地アイドルCute Robinが登壇。
クイズの答え合わせを交えながら、ジビエの魅力(低脂質・高たんぱく等)を分かりやすく紹介します。

4.正解数に応じたプレゼント

クイズの正解数に応じて、オリジナルグッズや奈良ジビエ関連商品が当たります。

5.会場展示・映像放映(予定)

ジビエに関する展示(施策、関連物等)に加え、モニターでの映像放映を予定しています。

実施概要

  • 実施日:2026年2月14日(土)
  • 対象試合:奈良クラブ主催試合(対戦:FC今治戦)
  • 会場:ロートフィールド奈良(奈良市法蓮佐保山4丁目5-1)
  • 実施時間(予定):開場 10:30/開始 11:00/終了 14:00

参加方法・注意事項

会場内のクイズに参加し、スタンプラリー形式で回答していただきます。

猪汁(しし汁)の無料提供は数量限定のため、なくなり次第終了となります。

当日の導線・入場等は試合運営に準じます(詳細は奈良クラブの案内をご確認ください)。

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「ジビエツーリズム by ジビエト ~岩手県おおつち~」モニターツアー動画レポート https://gibierto.jp/article/movie/15553/ Fri, 06 Feb 2026 02:00:18 +0000 https://gibierto.jp/?p=15553

2025年12月8日(月)から12月9日(火)の2日間、岩手県大槌町にて「ジビエツーリズム by ジビエト ~岩手県おおつち~」のモニターツアー(主催:AppBank株式会社、運営:株式会社JTB福岡支店)を実施しました。

動画ではモニターツアー実施内容を詳しくご紹介しております。また、同ツアーに参加された中村洋太さんの体験レポート記事も公開しておりますのでぜひご覧ください。

ツアー協力先

※「ジビエト」は、農林水産省令和7年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

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高校生考案のジビエカレーが商品化! 農業遺産ふーどコンテスト受賞作を吉祥寺PARCOで2月2日より提供開始へ https://gibierto.jp/article/event/15540/ Fri, 30 Jan 2026 09:00:43 +0000 https://gibierto.jp/?p=15540

株式会社エスエルディーは2月2日より、「第3回高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」でゴールド賞を受賞したアイデアをメニュー化し、kawara CAFE&KITCHEN 吉祥寺PARCO店にて提供開始すると発表しました。

このコンテストは農林水産省と農業遺産認定地域連携会議が主催するもので、世界農業遺産および日本農業遺産認定地域を有する県に所在する高校の生徒を対象に、2地域以上の農業遺産地域の産品を組み合わせた食品・料理のアイデアが募集されました。

2025年7月1日から9月30日までに寄せられた66件の応募のなかから、6つの受賞アイデアが決定。このうちゴールド賞を受賞したアイデアがメニュー化されます。

徳島県立池田高等学校の生徒が考案したシカ肉カレー

今回メニュー化されたのは、徳島県立池田高等学校本校の矢野新さん、福田悠作さん、中村蒼空さんが考案した『おかわりシカたなしカレー』です。

おかわりシカたなしカレー(サラダ、スープ付き1,540円・税込)

このメニューは、「徳島県祖谷(いや)地方」で育ったシカ肉、祖谷の地美栄(ジビエ)をキーマカレーに、世界農業遺産に認定された「徳島県にし阿波地域」の5種の在来雑穀(はだか麦、たかきび、粟、こきび、やつまた)と、日本農業遺産に認定された「兵庫県南あわじ地域」のブランド米「きぬむすめ」をブレンドした特製ライスをあわせたものです。

副菜には紫キャベツのピクルスやキャロットラペ、レンコンチップスなども添えられます。

同社によると、使用するシカ肉は熟練の職人による徹底したこだわりの処理により、野生肉特有のクセを抑えた「雑味のないジビエ」になっているということです。

3種類のカレーメニューを展開

提供されるメニューは全部で3種類あります。

ゴールド賞受賞作の『おかわりシカたなしカレー〜徳島県「祖谷の地美栄」シカ肉のキーマカレー〜』のほか、徳島の大自然で75日以上かけて育てられる地鶏「阿波尾鶏(あわおどり)」を使用した『徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー』(1,540円・税込)、両方を一度に楽しめる『ハーフ&ハーフ』(1,760円・税込)が用意されます。

徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー(サラダ、スープ付き)

「祖谷(いや)の地美栄」シカ肉のキーマカレーと徳島県産阿波尾鶏のバターチキンカレー ハーフ&ハーフ(サラダ、スープ付き)

提供期間は2月2日から2月28日までの約1ヶ月間で、kawara CAFE&KITCHEN 吉祥寺PARCO店(東京都武蔵野市吉祥寺本町1-5-1 吉祥寺パルコ7F)にて楽しめます。営業時間は月曜から金曜が11時から20時、土日祝が10時30分から20時まで(食事L.O.19時15分)となっています。

DDグループは昨年の第2回コンテストからゴールド賞受賞アイデアのメニュー化に参画しており、今回で2度目の取り組みとなります。

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害獣を「まちの財産」に。岩手県大槌町のジビエツーリズムで見た、命の有効活用 https://gibierto.jp/article/event/15512/ Mon, 05 Jan 2026 09:00:29 +0000 https://gibierto.jp/?p=15512 12月上旬、「ジビエツーリズム by ジビエト~岩手県おおつち~」のモニターツアーに参加し、三陸海岸に面する岩手県大槌町へ行ってきた。

ジビエツーリズムは単に観光だけを目的としたツアーではなく、「命の利活用」という社会課題に向き合う体験でもある。

野生鳥獣による農作物被害は、全国で年間約160億円にのぼるという。今年の漢字に「熊」が選ばれるほど、2025年はクマの出没と被害が大きな話題となった。しかし農作物に関してはシカやイノシシによる打撃の方がよほど深刻だそうで、農水省が公表している令和5年度(2023年度)の被害額データによれば、クマ(7億円)に対してイノシシ(36億円)、シカ(70億円)と5〜10倍の開きがある。

だが、普段の生活の中で田畑もシカもほとんど見ないためか、東京に暮らすぼくには、「鳥獣被害」や「害獣」などの言葉に正直あまりピンときておらず、どこか他人事のように感じてしまっていた。現実に被害が起きている地域へ行くと、どれくらいの数のシカがいて、具体的にどんな被害があるのだろうか? そして、ハンターによって「駆除された命」はその後どうなっているのだろうか?

これまでジビエを食べた経験すらなかったこともあり、今回のツアーは様々な驚きや学びをぼくにもたらしてくれた。2日間の体験とその気付きをここに記したい。

野生のシカに出会う「ナイトサファリ」体験

東京駅から新幹線とバスを乗り継ぎ、三陸海岸に面する大槌町に到着した。宿へ向かうまでの間には、花巻市でのわんこそば体験や、「滝観洞(ろうかんどう)」(住田町)での洞窟探検を楽しんだ。

しかしより印象深い体験となったのは、初日夜の「ナイトサファリ」である。夜の町を走り、バスの窓からサーチライトを照らして野生のシカを探すというプログラムだ。NPO法人「おおつちのあそび」代表の大場理幹さんから説明を受けたあと、バスに乗り込んだ。

正直なところ、ツアー日程表で「ナイトサファリ」の文字を見た時点では、「野生のシカなんて、バスの車内からではそう簡単に見られないのではないか。見られたらラッキーかな」くらいの気持ちだった。だが、その認識は開始早々に覆された。

向かったのは大槌町の市街中心地からそれほど離れていないエリアで、田畑は広がっているものの、近くには民家もちらほらあった。左右の窓を開けて強力なライトで夜の闇を照らす。すると早々に、

「いた!」

と、左側に座っていた人たちが叫んだ。

慌てて振り向くと、キラリと光る2つの小さな点が、いくつも浮かび上がっていた。

「2つの点」は、ライトに反射したシカの目だった。すぐには逃げ出さず、こちらを見ているようだ。やがてぼくが座っていた右側でも、シカの姿を目撃できた。思っていたよりも簡単に見つかる。

野生のシカを見られたことで、純粋に興奮してきた。動物園で見るのとは異なり、遭遇できたときに胸が躍るような嬉しさがあった。しかし、遭遇率の高さに、次第に驚きの方が勝っていった。

それでも、「今日は風が強いので、かなり少ない方です」と大場さんは申し訳なさそうに言う。

「普段は100頭くらい見られます」

そんなにいるのか。シカたちは夜に農作物を食べてしまうそうだ。人間が暮らす場所に降りてきているシカだけで100頭も現れるなら、森や山の中にはいったいどれだけいるのだろうか。農家への影響が出ないはずがない。

実際、現地の方の話は深刻だった。案内してくれた大場さんは、自分たち用に米作りをしているそうだが、以前300kg分の収穫を見込んでいた田んぼがシカに荒らされ、実際に収穫して精米も終えてみると、わずか90kgまで減ってしまったという。丹精込めて育てた作物が奪われる。その徒労感と悔しさは計り知れない。

ライトに照らされたシカたちは、愛らしい顔をしている。けれど農家の方々にとっては、生活を脅かす「害獣」にほかならない。「かわいそう」だけでは済まされない現実がある。

これまで、シカが農作物を食べるということにピンとこなかったけど、この数のシカを実際に目にし、地元の方の声を聞くと、被害の実感が生まれる。害獣問題が自分ごと化するような気がした。

人里に降りてくるシカを一度も見たことがない都会の人間と、こうした風景を日常的に見ている人、あるいはここで実際に農作業を営んでいる人たちとの間には、シカに対する認識に大きな差があって当然だ。その意味でこのナイトサファリは単なる娯楽ではなく、獣害問題を身近に感じ、そしてそれらと向き合うための、とても良いプログラムだと感じた。

「捕獲しないといけない」ことはわかった。でもあのかわいらしい姿を見ると、「頂戴した命を無駄にしたくはない」という気持ちも同時に湧いてくる。意識は自然と、ジビエに結びつき始めた。

捕獲されたシカの約8割を活用する大槌町の取り組み

翌日は、「おおつちのあそび」の大場さん、工藤さんとともに山の方へ行き、プチ狩猟体験を行った。お二人はハンターでもある。

現地へ向かう前に、ホテルのロビーで獣害対策に関する簡単なレクチャーが行われた。そこで知ったのは、単に「駆除すればいい」という問題ではない、ということだった。

農作物を荒らすシカは捕獲しなければいけない。しかし、獲った命をどうするか。

大場さんによると、たとえば体重60kgのシカから取れる肉は、約20kgだという。これを毎日200g食べ続けたとしても、1頭分を消費するのに100日はかかる計算だ。つまり、ひとりの人間が一年間で食べられる量は、わずか4頭分に過ぎない。

これではハンターがいくら捕獲しても、自分たちや近所へのお裾分け程度では到底消費しきれないのだ。

その結果どうなるか。令和6年度のデータでは、日本全国で捕獲されたシカのうち、約18%しか食肉処理施設で処理されていないという状況で、大半は食べられることなく埋設されたり、焼却処分されたりしているという。これは非常に残念なことだ。

シカも生きるために必死で、人里に降りてきている。しかし人間の都合で、仕方なく捕獲するしかない。そうして頂戴した命に感謝し、できる限り無駄にせず、活用できないのだろうか。

大槌町のすごさは、この文脈での取り組みにある。全国的には約2割しか活用されていない鹿肉だが、この町では約8割が活用されているというのだ。その中心にあるのが、ジビエ加工施設「MOMIJI」の存在である。

MOMIJIでは安心・安全で高品質な鹿肉を消費者に届けるため、ハンターから捕獲したシカの搬入を受け入れる際に厳格な規格を設けている。たとえばハンターは、捕獲したその場で丁寧に血抜きをし、捕獲後1時間以内に工場に搬入しなければいけない。そのようなルールによって維持される品質の高さが、岩手県で初となるブランド鹿「大槌ジビエ」に繋がっている。 単に「食べられる」だけでなく、高い衛生基準と品質基準をクリアした、市場価値のある「食材」として世に送り出しているのだ。

ハンターはMOMIJIにシカを搬入することで報酬をもらえ、MOMIJIは年間1000頭まで受け入れているという。

このブランドを支えているのが、ハンターたちの技術だ。ぼくらはレクチャーのあと、山のふもとで本物そっくりのエアソフトガン を渡された。ずっしりとしているが、実際にハンターが使うライフルはこの倍の重さがあるらしい。

20メートルほど離れたシカのボードを標的に見立て、射撃体験をした。銃の構え方や、狙う場所などを教わった。苦痛を与えず即死させることや、その後の血抜きのことも考え、MOMIJIに搬入するためのシカは頭や首あたりを狙うのだそうだ。

銃を構えるのは初めてのことでドキドキしたが、思い切って撃ってみた。弾は首の横に当たり、大場さんから「惜しい!」と言われた。外れたけど、なんだか楽しかった。

最後に、地面に隠して設置する「くくり罠」の実演もあった。シカが踏むと、ワイヤーが勢い良く脚に締まり、取れなくなる。

試しに棒で罠を突ついてみると、「バチン」と跳ね上がり、その強力さに驚いた。捕獲したあとの処理の仕方も聞いた。すべてが初めて知ることで、新鮮な学びに興奮しながら山をあとにした。

育成されたハンターがシカを捕獲し、MOMIJIが高い基準で加工し、「大槌ジビエ」として世に送り出す。「害獣」をただ殺して捨ててしまうのではなく、「まちの財産」に変えていく。そんな循環システムが、大槌町では機能していた。

おいしいジビエを味わうことが、次の獣害対策につながる

「見る」「知る」「獲る」ときて、いよいよ「食べる」である。今回は創業130年を超える大槌町の名店「割烹岩戸」さんで、鹿のカツレツ、鹿ロースの藁燻製、鹿の田舎煮込み など、大槌ジビエのフルコースをいただけることに。

鹿肉を食べるのも初めてだったぼくは、どうしても「臭いのではないか」「硬いのではないか」という先入観があった。しかし、カツレツをひと口食べた瞬間、その不安は消し飛んだ。まったく臭みがない。そして、驚くほど柔らかい。滋味深い味がした。どの料理もおいしかった。

このおいしさの理由は、もちろん料理人の腕も大きいが、その手前にあるハンターの仕事が欠かせないという。山で獲ったあと、いかに素早く血抜きを行い、処理施設に搬入できるか。そのリレーが完璧につながって初めて、鹿肉は高級食材に生まれ変わる。

もし、以前においしくない鹿肉を食べた経験がある人がいれば、ぜひ大槌ジビエを味わってみてほしい。きっと概念が変わるはずだ。

そして、我々がジビエを食べることが、また次の獣害対策への資金となっていく。それはすなわち、「ジビエサイクル」と呼ばれる循環システムに参加することなのだと実感した。

神秘的な滝観洞と、思わぬ出来事

今回のツアーでは、ジビエに関するプログラムだけでなく、観光要素も楽しめた。

初日に立ち寄った「滝観洞」もそのひとつだ。洞窟の中を歩く経験はこれまでもあったが、こんなに規模が大きく、長い道を歩くのは初めてだった。

ここは約3億年前の地層が地下水によって削られてできた壮大なスケールの洞窟で、ガイドさんの案内で往復約1時間のコースを歩いた。道中では冬眠中のコウモリも発見した。そして最奥に待っていた落差29メートルの「天の岩戸の滝」は神秘的で綺麗だった。

岩手県にこんな場所があるなんて全く知らなかったのだが、こうした予期せぬ風景に出会えるのも旅の醍醐味である。岩手名物のわんこそばも体験したし、大槌町の宿「三陸花ホテルはまぎく」からは、三陸海岸の美しい朝日を拝むこともできた。

そして、ツアー内容からは逸れるが、この地域への信頼を決定づけた出来事があったので、あえて少しだけふれたい。そろそろ寝ようと思っていた初日の深夜、たまたま大きな地震が発生したのだ。12月8日の「青森県東方沖地震」である。青森県八戸市で最大震度6強を観測した。大槌町の震度は4程度だったと思うが、東京では普段経験しない大きさの揺れ、そして津波警報も出ていたことで、いくらか不安もあった。

しかし、ホテルスタッフの対応は素晴らしかった。館内放送が流れ、一度屋上に避難したあと、すぐにホテル前にバスが手配され、安全な高台へ移動。その際、「お車でお越しのお客様、鍵をお預かりします。車を駐車場から高台へ移動させます」と、迷いなく対応していた。

その後、地震の様子を見て、高層階の安全な部屋にすべての宿泊客を移動させてくれ、温かい布団で安心して眠ることができた。

東日本大震災の教訓は、人々の行動の中に確かに生きていると感じた。日頃の訓練の賜物だろう。「何かあっても大丈夫だ」という安心感を持てた。おまけに翌朝は、より安全な場所に会場を変えて、6時45分から予定通りバイキング形式の朝食が提供されたのである。すでに津波注意報も解除

されていたタイミングとはいえ、あれほどの地震が起きたあととしては、信じられない手際の良さだった。

ジビエツーリズムのスタッフや添乗員さんも、ホテルの方と緊密に連携を取りながら対応してくださり、本当に頼りになった。改めて関係者の皆様に感謝したい。

ジビエツーリズムの可能性を感じた2日間

今回、2日間の行程ながらも「見る」「知る」「捕獲する」「食べる」という4つの工程にふれることができ、獣害やジビエについての理解が相互に補完されながら深まってきた。

まだほかにも、「解体」や「調理」など今回体験できなかった要素が残されている。各土地の魅力と結びつけば、ジビエツーリズムの可能性は大きそうだ。それぞれの土地で、ジビエ問題は微妙に異なるだろうし、観光資源に至っては完全に異なる。

今回のようなジビエ体験をできる場所が、全国各地に生まれてほしい。ジビエを味わい、そして土地の魅力にふれる。これは子どもにとっても大人にとっても、大切な学びの機会になるはずである。食への理解や命への感謝が育まれることだろう。

また別の地域でも、このような機会があれば積極的に参加してみたい。わずか2日間の体験ではあったが、「ジビエツーリズムといえば大槌」と言われるような、先進的な取り組みが垣間見えた。

書き手:中村洋太
X:https://x.com/yota1029
note:https://note.com/yota_nakamura

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SNSで若者に人気急上昇中! 多彩な味わいを楽しめるジビエ専門店「あまからくまから 浅草店」東京都台東区 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15491/ Mon, 29 Dec 2025 09:00:54 +0000 https://gibierto.jp/?p=15491

浅草・仲見世のそばにある「あまからくまから 浅草店」は、東京・人形町に本店を構える「あまからくまから」の2号店です。もともと沖縄料理を提供していましたが、2024年秋に完全ジビエ業態としてリニューアル。以来、鹿や猪、熊、穴熊など、多彩なジビエを扱う専門店として注目を集めています。

厨房で腕を振るうのは店長の中里さん。かつて本店の調理スタッフとして働いていましたが、ジビエ業態への転換をきっかけに食肉の扱いを一から学び、現在は浅草店の中心的存在となっています。

誰もが食べやすい「えぞ鹿ランプステーキ」

あまからくまから浅草店でご紹介いただいたのは、お店自慢の2品。ひとつは北海道白糠町産の「えぞ鹿ランプステーキ」(3,300円・税込)、もうひとつは「穴熊のすき焼き鍋」(7,800円・税込)です。どちらも看板料理として人気を集めています。

えぞ鹿ランプステーキでは、「ランプ」と呼ばれるもも肉が使用されています。赤身主体で脂は少なく、淡い甘みと鉄分の香りがあり、上品な旨味が特徴です。

調理はまず真空状態で低温調理を行い、中心までしっとりと火を通します。その後、鉄板で表面を香ばしく焼き上げる二段構成です。

盛り付けの際は、細粒の塩を軽く振り、赤ワインとトマトをベースにしたソースを合わせます。さらに、コケモモと粒マスタード、バルサミコを使ったソースが添えられます。このソースと赤身肉との相性は抜群です。

一見シンプルな調理に見えますが、肉の水分や旨みを逃さない低温調理のおかげで、食感は柔らかく、噛めば噛むほどに上品な旨味が口の中に広がります。繊細な火入れと丁寧な処理により、肉本来の風味が際立ち、非常に食べやすく仕上がっています。

「見た目はレアでも、中心部まで火が通っています。生ではなく“しっとりと火が入った”状態に仕上げています」とは中里店長。火入れの正確さは、安全性だけではなく、味の完成度にも直結しています。

美味しさと安全の両立。あまからくまから浅草店のえぞ鹿ランプステーキは、その象徴ともいえる一皿です。丁寧な火入れと管理の積み重ねが、敬遠されがちなジビエを誰にでも食べやすい料理へとその味を押し上げています。

お店のもう一つの看板メニュー「穴熊のすき焼き鍋」

もう一つの看板料理は、穴熊の肉を使ったすき焼き鍋です。穴熊は脂の質が非常に良く、甘みが強いことが特徴。お店では秋から冬にかけて脂のノリが良い個体を選び、すき焼きにしています。

割り下はやや薄味に整え、肉そのものの風味を際立たせ、卵をつけずにそのまま食べるスタイルとなっています。春菊やネギ、豆腐などと一緒に軽く煮ることで、脂の旨味が全体に染み込み、鍋全体の味にも厚みが出るのです。

「穴熊は火を入れすぎると脂が溶けてしまいます。煮込みは1分程度が目安です」と中里さん。短時間で仕上げることで、口の中でとろけるような食感と甘い香りが楽しめます。

締めには、残った割り下にご飯と卵、ネギを入れた雑炊がおすすめだとか。穴熊の脂がご飯に絡み、旨味を余すところなく感じられること間違いナシです。

全国から届く野生鳥獣肉

同店で出されているジビエは、釧路の処理施設から直接仕入れているそうです。そこに鳥獣を搬入するハンター一人ひとりとも深い関係を築いているため、安定した品質と供給体制が整っているのだとか。取り扱うジビエは鹿や猪のほか、ヒグマ、ツキノワグマ、そしてキョン(外来種)など、季節や入荷状況に応じて扱う食材が変わります。時期や産地によって個体差が大きく、仕込み方をその都度調整するのが特徴です。

「穴熊は脂の厚さや肉質は一頭ごとに違います。薄いものは角煮等の煮込み料理に、脂が多いものはすき焼き鍋に使います」と中里さん。まさに“素材を見て料理を変える”のがこの店の持ち味です。

また、熊肉は秋田県産のツキノワグマや北海道のヒグマを使用。ステーキや鍋で提供しており、どちらも価格は1万円前後。食べ比べると風味の違いが明確で、「どちらが好きかはお客様によって分かれる」とのことです。同じクマでも全く異なるという味、どちらも食べてみたくなる解説でした。

観光地・浅草ならではの客層も

浅草という立地も、ジビエ料理にとって大きな追い風となっています。平日でも外国人観光客が多く、店を訪れるお客のうち、海外からの来店は全体の3割近くを占めるそうです。とくにアジア圏からの来客が多く、「日本のジビエを食べてみたい」という声もあるとか。

一方で、国内客の多くは“初めてのジビエ”を体験しに来る人たち。お店では、まず鹿や猪といった食べやすい料理をすすめ、慣れてきたら穴熊や熊など、より個性的な肉へと進む楽しみ方を提案されているのだとか。

「若い世代にもジビエを」

中里店長は18歳のころから飲食の世界に入り、20代前半で本店勤務を経て浅草店へ。最初は「ジビエは品質管理や調理が難しいのではないか」と思っていたそうですが、食べてみてびっくり。そして調理を重ねるうちにその奥深さに引き込まれていったとそうです。

「自分自身、ジビエに対する先入観がなくなりました。質の高いジビエは処理と火入れで肉本来の美味しさが引き出せるし、味がしっかりしている。若いお客さんにもどんどん食べてほしいですね」と話します。

そんな若い層を呼び寄せるのが、同店による仕掛け。週刊ヤングジャンプ(集英社)で連載されていた作品『ゴールデンカムイ』で紹介されていたアイヌ料理「チタタプ」をモチーフにした料理と掛け合わせたショート動画を展開。これ見た若者が訪れ、さらにその動画が拡散。そしてまた新しいお客さんがやってくるという好循環を見せています。

また、店舗の2階には出版社にお願いして送ってもらったという『ゴールデンカムイ』の色紙も展示されています。こちらは誰でも見られるため、興味のある方は「チタタプ」をモチーフにした料理を予約して足を運ばれてみてください。

このほか同店の客層にはトレーニングや体づくりをしている人も多いそうです。高タンパク・低脂質の鹿肉は、健康志向の層にも人気があるとのことです。

“一期一会”の一皿を浅草で

「鹿肉の端正さ」と「穴熊の芳醇な脂」。このまったく性格の違うふたつのジビエを、同じところで楽しめるのがあまからくまから浅草店の魅力です。もちろんどちらの料理も、野生肉の力強さを感じさせながら、繊細で洗練された味わいに仕上がっています。

そして季節や入荷によってメニューが変わるのも、このお店の醍醐味です。「いつ来ても同じ味ではない。それがジビエの魅力です」とは中里さん。お店の冷凍庫には全国各地から届いた肉が並びます。

「命をいただいて料理するという意識が、他の食材よりも強くなりました。扱うほどに、自然とのつながりを感じます」

その言葉どおり、厨房での所作にはムダがありません。包丁の角度、肉の切り方、盛り付けの順序。どれも丁寧で、素材への敬意がにじんでいます。

浅草という観光地にありながら、静かな職人の仕事の場所でもある。自然と人、野生と技術。その境界を軽やかに行き来する一皿が、訪れる人の“ジビエ観”を変えていくことでしょう。

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鹿肉ハンバーグ定食がお手頃価格! 信州ジビエをカジュアルに味わえるカフェ「きこりのこみち」東京都練馬区 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15469/ Wed, 24 Dec 2025 09:00:26 +0000 https://gibierto.jp/?p=15469 西武池袋線・富士見台駅から歩いて数分。住宅街の一角に、木の温もりを感じる小さなカフェ風の店「信州ジビエとスイーツの店 きこりのこみち」があります。

扉を開けるとなかにはテーブル席がいくつかと、その奥に絵本やおもちゃが並ぶキッズスペースがあります。そうです、ここはお子さんも歓迎のジビエ飲食店なんです。

お店のキャッチコピー である「山の恵みを、もっと身近に もっとカジュアルに」をテーマに、長野県産の鹿やイノシシを中心とした料理を、日常の延長線上のランチや晩ごはんとして楽しめる一軒です。

鹿肉ハンバーグ:信州の恵みを閉じ込めた一皿

最初にいただいたのは鹿肉を使った「ハンバーグ・りんごと玉ねぎのソースのBセット」(1,400円・税込)。 中心までじっくり火を通したハンバーグが、木のお盆にサラダとスープ、酵素玄米とともに並んでいます(白米のAセットは1,100円・税込)。

鹿肉は、野山を駆け回るため筋肉質で脂肪が少な く、そのままだとハンバーグにはしづらい食材です。そこで「きこりのこみち」では、長野の特産品である寒天をつなぎに使用。パン粉や小麦粉、卵といった一般的なつなぎは使わず、塩こしょうと寒天だけで肉をまとめ上げています。寒天が水分を抱き込むことで、火を通してもパサつかず、しっとりとした食感を保てるのだそうです。

ソースには、鹿と同じ信州のりんご が使われています。りんごと玉ねぎをじっくり煮詰めたソースは甘みと酸味のバランスが絶妙で、赤身の強い鹿肉に丸みを持たせてくれます。

ソースは「きのこのホワイトソース」も用意されており、どちらかを選べます。こちらもぜひ食べてみたいメニューです。複数人で来られた際には、ぜひともシェアして食べ比べてみてください。

セットのご飯は白米と酵素玄米から選べます。酵素玄米は玄米と小豆を一緒に炊き、寝かせることで酵素を引き出したもの。腹持ちがよく、胃腸にもやさしいと評判で、「体にいいものを子どもにも食べさせたい」という親御さんからの支持も厚いそうです。

スープには鹿の足の骨からとったブイヨンが使われており、コンソメや化学調味料には頼らず、骨から出る旨味だけで奥行きを出しています。

伊那の地元グルメ「ローメン」×猪と駒ヶ根ソースカツ丼×鹿

信州色をさらに強く感じさせてくれるのが、「猪のローメン」(900円・税込)と「鹿肉ミニソースカツ丼」(700円・税込)のセットです。ひとつのお盆のうえに、伊那市のご当地グルメ「ローメン」と、駒ヶ根市名物のソースカツ丼が並ぶ様子は、まるで南信州の食堂をそのまま切り取ってきたかのようです。

「ローメン」とは、伊那市周辺で親しまれているB級グルメです。蒸し麺にキャベツやきくらげなどを合わせ、スープで軽く煮込んだ「焼きそばとラーメンの中間」のような一皿です。本来はマトン(羊肉)を使うのが定番ですが、「ジビエ屋としての顔をはっきり出したい」との思いから、「きこりのこみち」では猪が使われています。

猪の肉は事前に数時間かけて下茹でし、雑味を取り除いてから出汁をとります。そのスープで麺と野菜を煮込むことで、脂のしつこさのない、じんわりとしたコクのある一杯に仕上がります。

提供時にはテーブルにウスターソース、酢、ごま油、にんにく、七味などの調味料がずらり。「お好みの調味料を加えて、自分だけの一杯を作ってみてください」と案内されるスタイルは、本場・伊那の食べ方そのものです。常連客の中には、訪れるたびに配合を変えて「今日は酢多め」「今日はソース多め」と楽しむ方もいるのだとか。

隣に控えるのは、鹿肉を使ったミニソースカツ丼。駒ヶ根では、卵でとじたカツ丼よりも、甘めのソースにくぐらせたカツをのせた丼の方が一般的だといわれています。そのスタイルを踏襲しつつ、豚ではなく鹿で仕立てることで、さっぱりとした後味と赤身ならではの旨味を両立させています。

キャベツの千切りにたっぷりとかかるソースは、いくつかのソースをブレンドした自家製。甘みのあるまろやかな味わいで、子どもから大人まで箸が止まらなくなる一杯です。

おつまみとしても楽しめる「猪の角煮」と「鹿肉のロースト」

夜には、お酒の肴として楽しめる一品料理も人気です。それが「猪の角煮」(800円・税込)と「鹿肉のロースト」(800円・税込)の二品。どちらもライスをつけて定食にすることもできる、ボリュームのあるひと皿です。

猪の角煮は、時間をかけてじっくり火を入れることで、脂身はとろり、赤身はほろほろとほどける食感に。甘辛いタレは、本来は焼き鳥に使われるタレをアレンジしたもので、どこか懐かしさを感じさせつつも、猪の力強さに負けないコクがあります。

一方の鹿肉ローストには、長野県上田市の名物ソース「美味だれ(おいだれ)」を使い、お肉としてのおいしさが際立つ仕上がり。にんにくの効いた醤油ベースのタレを絡めたローストは、赤身の旨味が噛むほどに広がります。

その味は、 「これをおつまみに、お酒を呑みたい。取材じゃない日に飲みに来よう」と思うほどでした。

信州地酒とシードル、ジュースまで「長野推し」のドリンク

こうした料理を支えるのは、信州の地酒やワイン、シードルといったドリンクの数々です。日本酒は季節ごとに銘柄が入れ替わり、店主の荻原さん自身も「長野の酒は蔵元が多く、どれもおいしいのに、県外では名前が知られていないものが多い」と話します。日によってラインナップは変わりますが、飲み比べセットも用意されており、ジビエとともに地酒の世界を楽しむことができます。

そんな信州のお酒のなかでのおすすめが、信州りんごを使ったシードル(りんご酒)です。フランス・ブルターニュ地方にルーツを持つシードル文化をきっかけに、店ではかつて「ブルターニュフェア」を開催したこともあるそうで、その際に提供したガレットや鹿肉のパテとともに、シードルはいまや定番の一本となっています。

アルコールが苦手な人やお子さんには、信州産の果汁100%ジュースがおすすめです。濃いにごりのりんごジュースは、時間が経つと茶色く変化するほど余計な処理をしていないもの。「見た目は素朴でも、子どもたちにはこれが一番人気です」と奥様は笑います。紅茶も長野県産の茶葉を使うなど、グラスの中でも「長野推し」は徹底されています。

スイーツは子どもが手がける「家族のプロジェクト」

店名に「スイーツの店」とあるように、「きこりのこみち」にはデザートメニューも充実しています。ショーケースには、その日ごとにラインナップの変わるケーキや焼き菓子が並んでいます。

スイーツを担当しているのは荻原さんのお子さんです。もともとお菓子作りが趣味で、「お店をやるなら一緒にスイーツをやらせてほしい」と申し出があり、この珍しいジビエとスイーツがコラボしたお店ができあがりました。

そんな家族それぞれが「好きなことを詰め込んだ」お店では、お客さんも好きなことが楽しめます。食事だけさっとすませて帰る人もいれば、ジビエのあとにスイーツとお茶をゆっくり楽しんでいく人もいる。滞在時間も、過ごし方も自由な懐の深さが、このお店の魅力です。

キッズスペースがあるから、子ども連れでも安心

さらに店内でひときわ目を引くのが、壁際に設けられたキッズスペースです。おもちゃや絵本が並び、子どもたちが遊べるようになっているこの一角は、奥様が強くこだわった部分だといいます。

「小さな子どもを連れて外食するのは大変」と感じている保護者にとって、ここは心からくつろげる場所。ママ会や家族連れが利用する際には、2人でも6人掛けのテーブルを使ってもらうなど、ゆとりを持った席の使い方を心がけているそうです。

親御さんたちはテーブルで食事を楽しみながら、すぐそばで遊ぶ子どもの様子を見守ることができ、2~3時間ゆっくりしていくグループも少なくないとのことです。

子ども向けのキッズメニューも用意されており、鹿肉ハンバーグやカレーを小さめのポーションで楽しめます。荻原さんによれば、「普段は小食であまり食べない子が、ここでは完食してしまう」というエピソードも多く、「初めてジビエを食べるのがこの店だった」というお子さんも少なくないそうです。

「山の恵みをもっと身近に、もっとカジュアルに」という約束

ジビエと聞くと、多くの人が思い浮かべるのは、都心のフレンチや特別なコース料理かもしれません。値段も雰囲気もどこか「ハレの日向け」で、気軽に行くにはハードルが高い――荻原さんもそうしたイメージを抱かれていたそうです 。

だからこそ、このお店が目指したのは「入門編」のような存在です。メニューの軸に据えたのは、家庭の食卓にも並ぶハンバーグ、カレー、シチューといった馴染みのある料理。「特別な日」ではなく、「今日はちょっと珍しいお肉にしてみようか」と選ばれる定食屋のような立ち位置を意識されています。

もちろん価格設定も日常目線です。看板メニューの鹿肉ハンバーグの定食は、白米のセットで1,100円、酵素玄米のセットでも1,400円で提供されています。「ジビエだから高くて当たり前」ではなく、「ファーストフードに行く代わりに、少し足を伸ばして来てもらえるくらいの存在でいたい」という思いが、メニュー表の価格にも表れています。

ハンバーグやカレーといった馴染み深いメニュー、子ども連れでも過ごしやすい空間、お手頃な価格帯。どれもが、「気軽にジビエを召し上がって欲しい 」という思いから生まれた工夫です。

山の恵みを、もっと身近に、もっとカジュアルに。信州の森と富士見台の街をつなぐ「きこりのこみち」は、ジビエ初心者にも、すでにその魅力を知っている人にも、誰にも扉を開いて待っている一軒です。

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房総ジビエを地産地消。毎日でも食べられる価格のコスパ良し創作料理レストラン「Jazz&Dining きまぐれうさぎ」千葉県木更津市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15437/ Fri, 19 Dec 2025 09:00:32 +0000 https://gibierto.jp/?p=15437 千葉県木更津市・東太田の住宅街に、夜になると静かに灯りがともる小さなレストランがあります。「Jazz&Dining きまぐれうさぎ」。その名のとおり店内にはピアノが置かれ、プロミュージシャンによるジャズライブが不定期で開かれています。

一方でキッチンからは、鹿やいのしし、キョンといった房総ジビエと地元野菜の香りが立ちのぼります。

営業時間は18時から深夜2時まで(ラストオーダーは翌1時)。仕事帰りに一杯だけという利用から、しっかりディナー、ライブの日には音楽と食事をゆっくり楽しむ夜まで、さまざまな過ごし方ができるお店 です。

客層は30~40代を中心に、0歳の赤ちゃん連れから80代のお客様までと幅広く、「肉と野菜のレストラン」というコンセプト通り、気取らない温かさが漂っています。

房総ジビエ×千葉県産果物のマリアージュ「鹿モモ肉のタリアータ」

取材の日、まず登場したのは「鹿モモ肉のタリアータ」(150g:1,790円、200g:2,380円・税込)。房総ジビエとして認定された鹿のモモ肉をグリルし、薄くスライスして盛りつけた一皿です。

鹿は体つきがスレンダーで、バラ肉の部分には筋が多く、食べやすい部位は思いのほか限られています。そのなかでモモ肉は、赤身の旨味と柔らかさを両立させる貴重な部位。きまぐれうさぎでは、脂身の少ない部位をじっくり火入れし、しっとりとした食感に仕上げています。

ソースには、その時季に千葉県内で採れる果物を合わせます。取材時の11月上旬は、木更津産のブルーベリーをたっぷり使った赤ワインソース。時期によっては、姉崎産のいちじくと赤ワインのソースに変わるそうです。ほんのり甘酸っぱい果実の風味が赤身の香りを引き立てており、感想は「美味い!」の一言。

はじめてジビエに挑戦する方には少しハードルが高いと思うかもしれませんが、丁寧に処理された鹿肉は驚くほど柔らかく、「言われなければ牛肉と錯覚してしまう」ほど。「まずは揚げ物で慣れてから」という人には、同じく鹿肉を使った一口サイズのヒレカツも用意されています。

一年中楽しめる看板メニュー「いのししロースのグリル」

きまぐれうさぎのメニューのなかで欠かせないものが、「いのししロースのグリル」(150g:1,790円、200g:2,380円・税込)です。千葉県の「ちばの醤油グルメフェア2025」でも看板メニューとして紹介される一品で、房総ジビエのいのししロースが通年で提供されています。

その調理はとても丁寧です。まずロース肉の表面をフライパンで香ばしく焼きつけ、肉汁を内部に閉じ込めてからオーブンへ。中心温度計を使い、衛生的にも美味しさの面でもバランスがよいとされる75度までじっくりと火を入れます。

そして規定の温度に達してもすぐに取り出すのではなく、アルミホイルをかけて数分間休ませ、肉の中の水分を十分に落ち着かせてからカット。しっとりとしたロゼ色の断面からはじわりと肉汁がにじみ出ていました。

皿の上には、グリルしたいのししロースと房総野菜が彩りよく並びます。ソースは甘みのある醤油ベース。富津市の老舗醤油蔵「宮醤油店」の醤油など、千葉の醤油を使ったタレが肉のコクを支えています。

お皿には塩と柚子胡椒も添えられており、まずは塩だけで食べてみると、豚でも牛でもない、でもどこか懐かしいような肉の香りが口の中に広がります。それでいて脂はサッパリとしており、ビールにもワインにも合いそうな仕上がりです。

そこに柚子胡椒をつけると、その美味しさは増す一方です。いのしし特有の香りもやや穏やかになるため、「まずは塩で一切れ、そのあと柚子胡椒で」という順番で味わうと、いのししの魅力をより強く感じられます。

お肉の美味しさがギュッと詰まった「いのししのハンバーグ」

もっとカジュアルにジビエを楽しみたい方には、「いのししのハンバーグ」(1,980円・税込)がおすすめです。肉そのものの存在感を大切にするため、つなぎなしで作っているそうです。

火を入れると余分な脂は落ち、ぎゅっと凝縮された旨味と、いのししらしい香りが立ちのぼります。「肉々しいのに重たくない」「ライスと一緒にがっつり食べたい」と、晩ご飯として注文する常連さんも多い一品です。

そのほか、きまぐれうさぎでは季節にあわせて創作料理のメニューも登場します。これまでにもジビエ担々麺やいのしし醤油ラーメンなどが期間限定で登場しています。価格もお手頃で「ちょっとしたお昼にジビエ」が楽しめるコスパの良さも魅力の一つです。

幼少期から「山の恵み」を食べてきた店主が選んだ道

店主の稲垣さんは木更津市のお隣、富津市の出身です。山の仕事に携わっていた父親の縁で、幼いころからいのししや鹿に限らず、さまざまな野生動物の肉に触れてきたと言います。「いろんなお肉を食べる機会が多くて、もともと興味があったんです」と語る表情はどこか楽しげです。

やがて自分の店を持とうと決めたとき、鹿やいのししは畑を荒らす厄介者としての認知が広まっていました。年間の農作物被害額は県単位でも決して小さくなく、獣害対策としての捕獲が進む一方で、命がそのまま廃棄されてしまう現実もあります。

そこで稲垣さんは「どうせ駆除しなければならないなら、美味しいお肉としてきちんと食べてもらいたい」と考え、ジビエ料理を中心とした店づくりを決意されたそうです。

調理はほぼ独学。飲食店での経験を積みながら、創作料理としてのジビエを自分なりに組み立ててきました。オープン直後には大型台風による停電で仕込みを全てやり直す事態に見舞われ、翌年にはコロナ禍で時短営業へ――と、決して順風満帆ではなかった7年間。

それでも店を続けてこられたのは、地元のお客さまと県外から訪れるジビエ好きに支えられてきたからだと言います。

食材の多くは千葉県産。房総ジビエと地元野菜へのこだわり

きまぐれうさぎで扱う鹿やいのしし、キョンなどの肉のすべては、君津市や館山市にある食肉処理加工施設から仕入れられています。千葉県内で捕獲されており、解体・処理も県内の食肉処理加工施設で行われたジビエだけが、「房総ジビエ」として販売されています。

実際、木更津市で開催されたジビエイベントに出店した際は、「ジビエは臭いもの」というイメージを持っていた人が一口食べて驚き、翌日に家族連れで店を訪れたという嬉しいエピソードもあったそうです。

野菜も、できる限り房総半島のものを使います。木更津市や近隣地域の農家から届く葉物や根菜に加え、鹿肉のソースには木更津産のブルーベリー、姉ヶ崎産のいちじくなど、千葉県産の果物も登場します。「ジビエも野菜も、できるだけこの土地のものを一緒に味わってほしい」という稲垣さんの思いが、一皿の中にぎゅっと詰まっています。

「翌日調子がいい」。女性客にも支持される理由

ジビエというと「男性が好むワイルドな料理」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしきまぐれうさぎの客層は、男女比で見るとむしろ女性のほうがやや多い印象だそうです。

印象的だったのが、ある常連の女性客の言葉です。「ジビエを食べると、翌日調子がいいのよね」。高たんぱく・低脂質な鹿肉やいのしし肉は、鉄分やビタミンも豊富で、ヘルシー志向の人にも注目されています。「美味しく食べて体も喜んでいる気がする」という実感が、リピートにつながっているようです。

店内はカウンター席とテーブル席が中心で、一人でふらりと訪れる人もいれば、女性グループや夫妻、親子連れの姿も見られるそうです。予算感としてはお酒を楽しむ人は5~6千円前後、食事中心なら3~4千円ほどがディナーの目安。いのししロースのグリルも150gで1,790円と、都内のジビエ飲食店と比べるとかなりリーズナブルな価格設定です。

訪れるなら、どんな夜がおすすめ?

初めてきまぐれうさぎを訪れるなら、まずは通常営業の夜にゆっくりとディナーを楽しむのがおすすめです。鹿モモ肉のタリアータといのししロースのグリルをシェアし、いのししハンバーグや地元野菜の前菜を合わせれば、房総ジビエの魅力が一度に味わえるコースのような構成になります。

二度目以降は、千葉県内のフェアやジビエイベントと連動した限定メニューを狙うのも良いでしょう。前述したいのしし醤油ラーメンやジビエ担々麺など、期間限定の一杯は、稲垣さんの「千葉しばり」の遊び心がもっとも強く表れているメニューでもあります。

ジャズ好きなら、ライブの日程を公式SNSでチェックしてから予約を。ミュージシャンの音色と、房総の山から届いた命と、地元の野菜や果物。その3つが同じテーブルのうえで出会う夜は、「木更津に来て良かった」と思わせてくれるに違いありません。

房総半島の自然と共に生きる人々の営みを、音と味で体感できる場所。それが「Jazz&Dining きまぐれうさぎ」です。ジビエ初心者も、食べ慣れた通の方も、ぜひ一度、自分の舌と耳で確かめてみてください。

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【参加費無料】岩手県大槌町での体験型ジビエツアー「ジビエツーリズム by ジビエト ~岩手県おおつち~」参加者募集のお知らせ https://gibierto.jp/article/event/15390/ Thu, 20 Nov 2025 10:15:00 +0000 https://gibierto.jp/?p=15390

12月8日(月) から12月9日(火)の2日間にかけて、岩手県大槌町にて「ジビエツーリズム by ジビエト ~岩手県おおつち~」のモニターツアー(主催:AppBank株式会社、運営:株式会社JTB福岡支店)を実施いたします。

「ジビエツーリズム」とは、山や森を歩きながら狩猟体験や美味しいジビエ料理を楽しむなど様々な角度からジビエの魅力に触れられる新しい旅のスタイルです。

今回のモニターツアーは、特定非営利活動法人おおつちのあそびが運営するエコツーリズム事業との協業によって実施いたします。野生動物による農林被害の現状や環境保全の取り組みにも触れながら、自然と人との共生を考えるきっかけを提供することを目的としています。

なお、今回のモニターツアーは、10代~40代の方及びそのご家族を対象にしております。(保護者がいる場合は、小学3年生以上のお子様もご参加可能です)お申し込み多数の場合は、抽選にて参加者を決定いたします。
ツアーへのアンケート及びご参加者のSNSでの積極的な情報発信をお願い致します。参加費は無料ですが、集合場所まで・解散後の移動費は自己負担となります。

岩手県・大槌町について

三陸ジオパークの中心に位置する森林と海に囲まれた自然豊かな町です。
大槌町では東日本大震災からの復興につなぐため、岩手初のシカ肉ブランド「大槌ジビエ」が展開されています。

ツアー概要

  • ツアー名:「ジビエツーリズム by ジビエト ~岩手県おおつち~」
  • 開催日:2025年12月8日(月)~12月9日(火)[1泊2日]
  • 費用:無料(集合場所までの交通費は自己負担)
  • 集合場所:東京駅(8:20集合)または 新花巻駅(11:45集合)
  • 募集人数:6名
  • 旅行期間:1泊2日
  • 宿泊:三陸花ホテルはまぎく(岩手県上閉伊郡大槌町浪板海岸)
  • 食事:1日目 昼・夕食付/2日目 朝・昼食付
  • 旅行企画・実施:株式会社JTB 福岡支店
  • 協力:特定非営利活動法人おおつちのあそび、MOMIJI株式会社ほか

 

ツアースケジュール

【1日目:12月8日(月)】自然に触れる、旅のはじまり

  • 8:20:東京駅集合
  • 8:45:やまびこ53号に乗車、出発
  • 11:53:新花巻駅到着(現地集合の場合は11:45着)
  • 12:40:昼食
  • 14:10:滝観洞(ろうかんどう)見学
    3億年前の地層を流れる水が造り出した鍾乳洞を専門ガイドとともに見学します。
  • 16:15:三陸花ホテルはまぎく チェックイン
    三陸海岸の絶景を一望できる宿です。
  • 18:30:夕食(地元の旬の食材を使った料理)
  • 20:00:おおつちナイトサファリ体験
    車で夜の里山を走り、ライトでシカを探す大槌町ならではの体験です。高確率でシカに出会うことが期待できます。
  • 21:10:ホテル帰着・宿泊

宿泊:三陸花ホテルはまぎく(1名1室)

【2日目:12月9日(火)】命と食を学ぶ体験の日

  • 8:00:ホテル屋上にて「三陸ジオパークミニガイド」
    三陸海岸の地層や自然環境について解説を聞きながら展望を楽しみます。
  • 9:00:貸切バスで出発
  • 9:30:大槌町文化交流センター「おしゃっち」で「若手ハンターとプチ狩猟体験」
    林を歩き、動物の痕跡を探しながら罠の仕掛け方や模擬射撃を体験。
    現役ハンターの指導のもと、“命をいただく”という営みを学びます。
  • 12:30:昼食(大槌ジビエの実食)
    シカ肉の部位ごとの味わいをBBQスタイルで食べ比べ。
  • 14:15:道の駅 遠野風の丘 見学
    地ビール「遠野麦酒ZUMONA」や特産品の買い物を楽しめます。
  • 15:40:新花巻駅到着(16:19発のはやぶさ110号で東京へ)
  • 18:56:東京駅到着・解散

 

宿泊先情報

三陸花ホテルはまぎく
岩手県上閉伊郡大槌町浪板海岸
電話:0193-44-2111

お申し込み・お問い合わせ

本モニター募集の申込期間は終了いたしました。

多数のお申し込みをいただき、誠にありがとうございました。
抽選結果につきましては、11月28日(金)以降、メールにて順次ご連絡いたします。

応募締切日時は11月28日正午とさせていただきます、抽選結果は11月28日(金)以降にメールにて通知いたします。

本ツアーの運営主体
株式会社JTB 福岡支店
福岡市中央区長浜1-1-35 新KBCビル3F
電話:092-731-5215(営業時間 9:30〜17:30/土日祝休)

現地体験に関するお問い合わせ
特定非営利活動法人おおつちのあそび
岩⼿県上閉伊郡大槌町大槌第6地割5番地
電話:090-1910-9236

 

ジビエトについて

ジビエの情報を発信するポータルサイトです。国産のシカ肉・イノシシ肉を提供する飲食店や、ジビエのイベント、皮革製品、ペットフード等の情報を発信しています。

URL:https://gibierto.jp/

※ジビエト及び本ツアーは「農林水産省 令和7年度 鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)」による支援を受けています。
※掲載の内容は2025年11月時点の情報に基づいています。詳細は各施設へお問い合わせください。
※主催者(以下、「記録者」といいます)は、ジビエツーリズムの魅力を広く伝えるために、本ツアーの様子等(個々の参加者の肖像を含みます)を、動画や静止画に撮影し、録音し、その他記録することがあります。それら記録物にかかわる権利は全て記録者に帰属します。記録者は記録物を保存・管理し、記録者の業務目的に沿って任意に使用します。その使用には「ジビエト」及びそれに関連するSNS等、また農林水産省が運営するSNS及びYouTubeチャンネル等への掲載・提供を含みます。これに伴い、参加者の肖像および発言内容等が露出することがあります。肖像および発言内容等の露出に関して、ご承諾いただける方のみご応募ください。

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ジビエをもっと知ろう!楽しみながら学べる「GIBIER MAP(ジビエマップ)」サイトが公開 https://gibierto.jp/article/knowledge/knowledge_1/15346/ Tue, 30 Sep 2025 01:00:46 +0000 https://gibierto.jp/?p=15346

ジビエについて、楽しく学べるウェブサイト「GIBIER MAP(ジビエマップ)」が公開されました。

「ジビエ」と聞くと、少しハードルが高く感じる人もいるかもしれません。しかし、実は私たちの暮らしや環境と深く関わっているんです。このサイトでは、「鳥獣被害」「鳥獣対策」「ジビエ処理施設」「ジビエの楽しみ方」という4つのテーマを、ゲームなどを通じてわかりやすく紹介しています。

このコンテンツは、農林水産省の万博展示やこども霞が関見学デーで限定公開され、多くの方から大好評をいただきました!

ぜひ「GIBIER MAP(ジビエマップ)」を体験して、ジビエの世界を探検してみてください!

GIBIER MAP(ジビエマップ)」
https://gibiermap.gibierto.jp/

実際の「GIBIER MAP(ジビエマップ)のご紹介

画面内をタップして、説明を見てみよう!
鳥獣対策ゲーム。アイテムを活用して、畑や果樹園を守ろう!
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【大阪・関西万博】ジビエブースを出展!展示や美味しいジビエの試食、ワークショップ の模様をレポートします! https://gibierto.jp/article/movie/15320/ Thu, 14 Aug 2025 02:28:44 +0000 https://gibierto.jp/?p=15320

農林水産省は、2025年6月8日(日曜日)から6月15日(日曜日)まで、大阪・関西万博の「食と暮らしの未来ウィーク」期間中に、テーマウィークイベントの一環として、ジビエブースを出展しました。
展示パネルや大型モニター、体験型コンテンツ「GIBIER MAP」を通じて、ジビエの食文化の歴史や、鳥獣被害の現状と利活用の取組などを伝えました。

シカやイノシシのはく製とフラッシュフォトを組み合わせたフォトスポットは大迫力で、多くの来場者に驚きを与えました。
また、日替わりで実施したシカ肉・イノシシ肉の試食や、シカ革を使ったクラフトワークショップも大好評を博しました。
動画内で来場者の体験インタビューもたくさんご紹介していますので、ぜひご覧ください!

取材協力先▼
・2025大阪・関西万博 https://www.expo2025.or.jp/
・農林水産省 大阪・関西万博ジビエ出展情報 https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/expo.html

※「ジビエト」は、農林水産省令和7年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

ジビエ利用拡大コーナー
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/index.html
#農林水産省 #ジビエ #鳥獣被害 #大阪・関西万博 #ジビエ利活用 #ジビエ飯

 

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祝万博・ENJOYジビエ関西ジビエウィーク2025 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15223/ Sat, 14 Jun 2025 12:38:45 +0000 https://gibierto.jp/?p=15223 【会場外イベント】関西ジビエウィーク2025特設サイト

https://kg-week.com/

Instagramで「#EXPO2025ジビエ料理」をつけて、自慢のジビエ料理を投稿!
6月30日〆切り!
金・銀・銅賞決定!入賞者にはジビエグッズをプレゼント!
おひとり様、何度でも応募投稿できます。

Instagramはコチラから

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【ジビエの出る食堂】早稲田大学 学食研究会と狩り部がジビエメニューを全力食レポ! https://gibierto.jp/article/movie/15002/ Thu, 20 Mar 2025 05:56:17 +0000 https://gibierto.jp/?p=15002

「早稲田大学 学食研究会」と「早稲田大学 狩り部」が社食、学食のジビエメニューを全力食レポしました!

ジビエはフレンチやイタリアンではおなじみの食材である一方で、手軽に食べられるイメージがないと思う方も多いかもしれません。しかし、実は「学食」や「職域食堂」でも手軽に食べられる取り組みが広まっています。

▼取材協力先
・YEBISU GARDEN CAFE
https://gardenplace.jp/officeservice_new/gardencafe/

・早稲田大学 大隈ガーデンハウス
https://www.wcoop.ne.jp/food/food_waseda.html

・早稲田大学 学食研究会
https://sites.google.com/view/wsdgksk

・早稲田大学 狩り部
https://wasedakaribu.wixsite.com/homepage

※「ジビエト」は、農林水産省令和6年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

ジビエ利用拡大コーナー
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/index.html

#農林水産省 #ジビエ #鳥獣被害 #食堂 #社食 #学食 #恵比寿ガーデンカフェ #早稲田大学 #ジビエ利活用 #大隈ガーデンハウス

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パリやブルターニュ地方でジビエに惚れ込み、集大成は故郷のシェフ兼ハンター「フレンチ ラパンアジル」静岡県沼津市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/15013/ Wed, 19 Mar 2025 08:00:10 +0000 https://gibierto.jp/?p=15013 富士山の絶景の宝庫として知られ、愛鷹山(あしたかやま)や駿河湾などの豊かな自然に囲まれた静岡県沼津市。JR沼津駅北口からロータリー沿いを左方向に進むと、青と黒の外壁が目を引く「ココチホテル沼津」が見えてきます。その2階にあるのが、地元出身のシェフ・吉田 泰穂(やすほ)さんが営む「フレンチ ラパンアジル」。自らも山に入り、ハンター仲間のジビエ処理施設から仕入れた肉で沼津の方々や旅行で訪れた皆さんをもてなします。

実家も長年にわたり飲食店を営んでいたという吉田さん。美味しい料理を提供することでみんなが喜ぶ様子を見て「自分もこの道を極めよう」と思い立ったのが今に至るきっかけです。

「キャリアをスタートさせたのは地元沼津のレストランです。その後は『より厳しい環境で王道のフレンチを学びたい』と都内に出て複数の店で修業を積みました。さらに上のレベルを求めて渡仏し、パリやブルターニュ地方で腕を磨きましたね。野生の肉を調理する日々を過ごし、文献も通じて奥深さを知るなかで『自分の店を持つならジビエを提供しよう』と2001年に始めたのが『フレンチ ラパンアジル』です」

店名はフランス語で「すばしっこいウサギ」の意味。自身は犬や猫のいる家庭で育ち、大人になっても動物が好きで、敬意を込めて命名したとか。そして沼津で開業したのは、自らの故郷であり、新鮮な海と山の恵みがすぐそばにあるから。

「山菜や果物、深海魚の他、沼津はブランド牛の『あしたか牛』も有名です。しかも古くから狩猟が盛んで、すでに私が子どものころには多くの鹿猟師がいました。これらの多彩な食材を地元の方や観光客にリーズナブルに提供しようと、店をオープンした次第です。静岡県産の食材を使い農林水産業や食文化に貢献してきたことから、おかげさまで2014年には静岡県から『ふじのくに食の都づくり仕事人』として表彰されました」

新作メニューは食材や使用する器もスタッフ全員で検討し、繰り返し試食。さらに客席の反応を互いに共有し、より高みを目指してブラッシュアップするのが特長です。

狩りのプロフェッショナルと熟成の達人―自然と生きる、猟師仲間のジビエ処理施設から届く鹿肉と猪肉

ジビエ料理用の肉を仕入れるジビエ処理施設は、沼津市の「髙竜ジビエ工房」と伊豆市の「イズシカ問屋」。いずれも吉田さんのハンター仲間です。

「私の知る限り、髙竜さんは狩猟の腕前が群を抜いています。世の中にハンターは一定数いますが、特に猪の体重やスピードを計算して的確に仕留め、迅速に運搬・解体できる人はそうそういません。ご夫婦で罠も仕掛け、養蜂家としての顔もお持ちですね。一方、イズシカさんは肉の加工や熟成で全国トップクラスです。冷蔵保管で不要な水分を減らしながら、旨味成分のアミノ酸を骨から肉に移していく技術に長けています」

それぞれの食材を仕入れるだけでも満足でしたが、吉田さんはさらにジビエの奥深さを知ろうと自ら狩猟や解体に参加するように。今では日曜ごとに山に入ります。

「自分が狩りに出て大きく変わったのは『料理にもっと魂を込めなければ』という意識です。確かに鹿や猪は人間にとって厄介な存在かもしれませんが、あくまでも命あるものですよね。料理人として、ハンターとして、肉も骨も今まで以上に使い尽くそうと工夫を重ねるようになりました」

また、先輩猟師と歩けば「ここはフキノトウがよく取れる」「もうすぐあそこにタラの芽が出てくる」と教わる機会も多いとのこと。風向きが変われば野生動物に自分たちの匂いを悟られ、狩猟が失敗に終わることも学びました。

「修業時代よりも料理につながる知見に触れていますね。自分が捕獲した鹿や猪はきれいに加工し、主に猟友会のバーベキューで楽しんでいます。動物や部位ごとの味わいや食感、昔ながらの郷土料理についても勉強させてもらっています」

ジビエの旨味や柔らかさを保つには低温調理が基本。淡泊な肉でいかに満足させられるかが腕の見せどころ

2025年2月のアラカルトメニューに登場したジビエ料理は、まずオードブルの「沼津産イノシシモモ肉のパテドカンパーニュに野菜のピクルスを添えて」(900円・税込)と「沼津産イノシシモモ肉の自家製スモークハム」(1,000円・税込)から。

田舎風パテには脂が乗った部位を選び、筋を取って口当たりを滑らかにして、赤ワインを効かせました。上から散らした胡椒、赤マスタードのコンフィチュール、蓮根のピクルスがアクセントに…。

 

自家製スモークハムは、同じく猪の脂身や玉ねぎを白ワインで煮込んでペースト状にしたアーモンド型のリエットと共に、長方形の黒パンや丸いパンに乗せて頂きます。ハムは70度の低温で2時間ほど火を通し、香り高くなるようスモークにかけました。

肉料理の「柔らかな伊豆鹿モモ肉のナヴァラン風煮込みに白カブと野菜を添えて」(1,700円・税込)は、フランス家庭料理の定番である肉とカブの煮込みにインスパイアされたひと皿。

鹿モモ肉を焼いて香ばしさを引き出し、トマトや玉ねぎ、シメジなどと一緒にコトコトと6時間ほど煮たら完成。さっぱりとした肉ととろけるカブの妙味がたまらず、パン(150円・税込)を何度もお代わりしたくなるでしょう。

そして最後にお目見えしたのは、柔らかい食感と旨味が損なわれないよう、肉の温度管理に細心の注意を払って仕上げる「鹿ロースのステーキ」(1,700円・税込)。

肉の周りに焼き色を付け、オーブンに入れたら中心温度を68度以上にキープ。十分に加熱したらトリュフのソースを添え、さらにスライスしたトリュフを散らして出来上がりです。

店にはソムリエの資格を持つスタッフもいて、各ジビエ料理によく合うワインも提案可能。なお吉田さんのおすすめは、山梨県の丹波山村(たばやまむら)で醸造されるジビエワインの「ぶち」です。

現地では猟師を「鉄砲ぶち」と呼び、狩猟の村から生まれたワインなのでこの名前が付いたとか。吉田さんのジビエ料理はもちろん海外の銘柄とも相性が良いそうです。

「野生の肉は全体的にヘルシーで淡白です。どのようなソースを合わせれば最高のひと皿が完成するのか、季節ごとの野菜や果物、スパイスなども計算しながらイメージを高めています」

沼津の特産品・みかんが獣害に遭うことも。「捕獲してくれて、美味しく食べさせてくれてありがとう」

農家や農協職員の常連客も多く、鹿や猪による被害について話を聞くことも多いと吉田さん。沼津は「西浦みかん」の名産地であり、なかでも高級品種「寿太郎(じゅたろう)」の苗木や若葉が狙われてしまうこともあると話します。

「せっかく間引いて残したとびきりの苗木を野生動物に食べられ、落ち込んでいる方も見かけます。被害を防いでほしいと猟友会に依頼があれば、私も狩りに参加しますね。お客さまに『鹿や猪を捕獲してくれて、しかも美味しく食べさせてくれてありがとう』と感謝されるのがシェフ兼ハンターの醍醐味でしょうか」

ジビエは自然の味をダイレクトに享受できる一方、家畜のように人間が生育をコントロールできない難しさも。発情期は臭いが増すなど、慎重に見極めて狩猟し、適切に処理加工する必要があると改めて実感しています。

「私が肉を仕入れるプロの生産者たちは、こうした細部まで見極めています。料理人として解体の様子を見学していると『吉田君、あんたハンターなのにしょっちゅう来るね』なんて言われたりしますね。それぐらいジビエが好きです」

 

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ジビエ食の未来を考える「環境に優しい食育協議会シンポジウム」レポート https://gibierto.jp/article/event/15028/ Wed, 12 Mar 2025 08:00:31 +0000 https://gibierto.jp/?p=15028

2025年2月27日(木)、「環境に優しい食育協議会シンポジウム」(主催:東京ガス株式会社/後援:農林水産省、環境省、文部科学省)が、ガスの科学館クイズホールで開催されました。「ジビエ食をキーワードに持続可能な肉食のあり方と環境負荷を軽減するための食を考えること」を目的に、学校関係者や食育関係者など約200名が参加し、熱心に耳を傾けました。

 ジビエ活用に向けた開催メッセージ

まず、服部栄養専門学校理事であり、服部栄養料理研究会会長の服部 津貴子(はっとり つきこ)氏と、東京ガス株式会社の常務執行役員・小西 雅子(こにし まさこ)氏が開会の挨拶を行いました。

服部氏は、SDGsの視点からジビエの重要性について解説し、特に学校給食への導入の可能性に言及。子どもたちに多様な食文化を体験させることの大切さを強調しました。

小西氏は、東京ガスが長年にわたり食育を支援してきた経緯を紹介し、ジビエを活用した地域課題の解決がどのように貢献できるかを説明。さらに、企業としての取組の可能性にも触れました。

続いて、石破 茂(いしば しげる)内閣総理大臣から、「ジビエは地域ならではの貴重な食材であるとともに、自然の恵みへ感謝する気持ちなど子供の頃からジビエを通じて食の意味を学ぶことは意義深い。ジビエの魅力を発信してジビエを利用した食育、地域の活性化・地方創生について、より一層取り組んでいただきたい」とのビデオメッセージが紹介されました。

基調講演では「持続可能な食と農」をテーマにジビエ活用を提案

シンポジウム第一部では、田村 典江(たむら のりえ)氏が「持続可能なこれからの肉食のありかた」をテーマに基調講演を行いました。現代の食料システムの課題と持続可能性への取組について語り、ジビエを活用することで食料問題や環境負荷の軽減に貢献できると提言。ジビエを取り入れた持続可能なフードシステムが地域経済を支え、食文化を豊かにすると述べました。

また、ジビエは教育を通じて地球環境や地域の農林業とのつながりを深める役割も果たすと強調。「ジビエは地域経済の活性化につながり、命の恵みを再認識する機会にもなる。今後は学校給食への展開が重要」と語り、参加者は熱心に耳を傾けました。

パネルディスカッション「ジビエ食の受容と普及のために」

第二部のパネルディスカッションでは、「ジビエ食の受容と普及のために」をテーマに、専門家の皆様が意見を交わしました。登壇されたのは以下の方々です。

【登壇者】
・藤木 徳彦(ふじき のりひこ)氏/一般社団法人日本ジビエ振興協会代表理事、オーベルジュ・エスポワールオーナーシェフ
・遠崎 将一(えんざき しょういち)氏/はだの都市農業支援センター、神奈川県秦野市環境産業部農業振興課農業支援・鳥獣対策担当課長代理
・田村 典江(たむら のりえ)氏/事業構想大学院大学専任講師、一般社団法人FEAST代表理事

ディスカッションの冒頭では、東京ガスの東郷(とうごう)氏が「ジビエの普及に向けて、どのような取組ができるのか、具体的に議論していきたい」と述べ、スタートしました。

①料理人の視点から:オーナーシェフ藤木氏の取組

パネルディスカッションでは、まずはオーナーシェフの藤木氏が自身の経験を交えながら、ジビエとの出会いや、現在の取組について語りました。

「私の店は長野県の蓼科高原にあります。東京から家族で移住し、27年前にオーベルジュ・エスポワールを開業しました。当初は信州の地産地消をテーマにした料理を提供していましたが、冬場の食材確保に苦労しました。そんな中、地域の猟師さんと出会い、ジビエに可能性を感じたのです」

当時はジビエの流通ルールが整備されておらず、飲食店への供給が難しかったと振り返ります。「11月15日の狩猟解禁後、猟師さんたちが獲った鹿や猪を分けてくれるのですが、適切な処理をしないと美味しくならない。逆に、丁寧に処理されたジビエは家畜の肉に負けない美味しさがあります」

また、藤木氏は「ジビエは硬くて臭い」という固定観念を払拭するため、美味しく調理し消費者に提供することが大切だと強調。「実際に食べてもらうと、『こんなに美味しいんだ!』と驚かれます。すると、これを捨てるのはもったいない、もっと活用しようという気持ちになるんです」と、ジビエの魅力を熱く語りました。

②行政の視点から:秦野市の遠崎氏の取組

続いて秦野市の遠崎氏が、行政の立場から鳥獣被害対策とジビエ活用の取組について話しました。

「近年、鹿や猪の個体数が増加し、農作物への被害が深刻化しています。これまでの有害鳥獣駆除では、捕獲した動物を廃棄するケースがほとんどでした。しかし、それでは資源が無駄になってしまいます。そこで適切な処理を行い、ジビエとして活用する仕組みを作ることが重要です」

秦野市では、猟師の協力を得て捕獲したジビエを食品として流通させる体制を整え、地域の飲食店とも連携を進めているとのこと。「ジビエを地域資源として活用し、持続可能な形で循環させることが、地方創生にもつながる」と伝えました。

③研究者の視点から:事業構想大学院大学の田村氏の取組

最後に、事業構想大学院大学の田村氏が研究者の立場からジビエ利用の重要性を語りました。

ジビエの取り扱いが広がった理由として、衛生基準の整備が大きかったそうで、現在は多くの人がジビエを取り扱えるようになったとのこと。また、地方創生の観点から、ジビエ利用の制度や政策的な投資が追い風となっていると指摘しました。

さらに、「農山村の暮らしでは多様な収入源が伝統的であり、ジビエもその一部として定着することを期待している」と述べ「ジビエが主な収入源でなくても、収入につながる可能性がある」と語りました。

ジビエ普及のために必要な「安全性」

続いて、ジビエの安全性についての議論が交わされました。

藤木氏「美味しいジビエを広めるためには、まず安全で安心なジビエが料理をする人たちの手元に届くことが大切です。日本ジビエ振興協会は、この安全なジビエの流通を確立するために、国と連携して取り組んできました。その上で、ジビエの美味しさを広める活動を継続しています」

遠崎氏「秦野市では、捕獲した野生動物の安全な取り扱いを重視し、県の許可を受けた食肉処理加工施設と連携しています。捕獲後は適切に解体され、安全な方法で流通します。また、連絡体制を強化し、捕獲から加工までの管理を効率的に行い、安全に消費者に届けられています」

田村氏「食べる側のリテラシーも大切です。ジビエが新しい食文化として広がる中、体調が悪いときに避けるべきだという知識や習慣も重要です。昔からジビエを食べていた人々には自然とそうした知識が身についている場合が多いですが、新しい食文化が広がる中で、そうしたリテラシーを啓発することも大切です」

どうすればジビエの普及が進むのか

次に、秦野市の遠崎氏は、ジビエを活用した地域振興活動について語りました。

「秦野市では、ジビエを活用した地域振興が進められています。具体的な取組としては、秦野商工会議所がジビエを取り扱う飲食店を掲載した『秦野ジビエナビ』の発行や、地域イベント『秦野たばこ祭』にジビエコーナーを設け、地域活性化を目指しています。」

さらに、鶴巻温泉とジビエを組み合わせた町おこしや、地元の飲食店が鹿肉を使った麻婆豆腐を開発するなどの試みも行われているとのこと。「東海大学と協力してジビエのステッカー、チラシやのぼり旗も作り、地域の飲食店で展開しています。今後は情報発信を強化し、ジビエイベント事業のPR活動を中心に進めていく方針です」

食育や給食へのジビエ食の導入

シンポジウム終盤では、ジビエの食育や給食への導入についての議論が交わされました。

藤木氏「学校給食に上手に入ってるところは、ジビエのクリアクリーンのイメージを伝えています。例えば栄養的に優れているよとか、高たんぱく低カロリーで鉄分も豊富だよ、機能的に優れたお肉、優れた食材を子どもたちに食べさせたいんだと伝えると、そこはすんなり入るんですね。しかも美味しいってなると、やっぱり使っていこうということになる」

田村氏「自然環境や山の管理がしっかりとされている地域から得られたジビエは、単に美味しいだけでなく、その土地の自然保護や農山村の豊かさにもつながります。ジビエの魅力は、美味しいお肉だけでなく、豊かな自然環境があってこそ作られるという点にも焦点を当てるべき」

最後に、東郷氏はジビエが食材としてだけでなく、若い世代に地域や地球環境について学ぶきっかけを提供する教材であると締めくくり、第二部が終了しました。

試食タイムでは「ジビエ給食メニュー」が登場

シンポジウムの最後には、参加者がジビエの魅力を実際に体験できる試食タイムが設けられました。今回は、学校給食向けに開発されたジビエメニューの一例が提供されました。

・鹿肉のミートソース
・鹿モモ肉(外モモ肉)のから揚げ
・鹿(ウデ・スネ)ポン酢
・鹿、猪骨を使用したジビエコンソメ

加熱をしっかりする、圧力鍋を使用する、ヨーグルトにつけこむなどの調理の工夫が施されていて、子どもでも柔らかく食べやすいお料理に仕上がっていました。

参加者からは「想像以上に食べやすくて美味しい」「学校給食にも美味しく安全な形で取り入れることは、ジビエが普及するのにすごく役立つと思う」といった感想が寄せられ、ジビエの可能性を実感する貴重な機会となりました。

 

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野生の猪脂をふんだんに使用『gibier soap』の威力、開発者の思い https://gibierto.jp/article/feature/interview/14972/ Fri, 07 Mar 2025 01:40:18 +0000 https://gibierto.jp/?p=14972

野生の猪は大きな牙で縄張り争いをするため、深く傷ついた体を自ら治す治癒力を持っているといいます。ドングリや栗、果物や土に眠る生き物を食べて暮らしている猪の体内には、秋から冬にかけて良質な脂が蓄えられ、その脂は人の皮脂と成分が近く、古くからハンターの間では肌荒れやあかぎれ、やけどにいいとされています。

この猪脂に魅せられたのが、ハンターの父を持つ「GIBIER soap合同会社」(長野県)代表取締役の松岡 磨貴子(まつおか まきこ)さん。松岡さんの会社では、スキンケアブランド「gibier skincare」を立ち上げ、良質な猪脂をふんだんに取り入れた石鹸やコスメを販売しています。

猪脂を使ったコスメブランド …立ちはだかるさまざまな障壁

実家のある岡山県でハンターが仕留めた猪脂を収集し、福岡県にある工場で製造。
松岡さんの父・松岡 邦和(まつおか くにかず)さんは岡山県で印刷会社を経営する傍ら、ハンターとして活動。長きにわたり、地元の有害鳥獣捕獲に貢献してきました。
最初に猪脂の効能に目を付けたのは邦和さん。「従業員の肌を改善してあげたい…」そんな純粋な思いから誕生したのが、猪脂を含む「TATSUMA SOAP」です。

「父の会社にアトピーで悩んでいる女性がいて、父が“俺が治す”と思い立ったことが始まりです。父は一度決めたらとことん前に突き進むタイプ。『TATSUMA SOAP』は2019年に発売しましたが、当時はものすごく闘志を燃やし、開発に挑んでいました」

印刷会社が石鹸を作る…畑違いの新規事業とあり、そこには想像を絶する困難が待ち受けていました。

「父は、まず製造してくれる工場を探すため、日本全国の石鹸屋さんに電話をしました。脂が取れたからといって、すぐに石鹸ができるわけではありません。石鹸屋さんに電話をして、『猪の脂で石鹸を作りたい』と話したところ、『脂は自社で精製していますか?』『検査はしていますか?』など、いろいろ聞かれたそうです。

そんなアドバイスもあり、まずは動物性の脂を生成してくれる会社から探すことに。しかしこちらも『何百キロ単位じゃないと引き受けられません』という会社が多く、そうなると、それに合わせて猪の脂を集めなければならない。集めたら今度は、その何百キロにもなる脂を冷凍するための場所が必要になるわけです。

こうした裏の苦労もあり、さらに今、世の中はボタニカル(植物由来の成分を配合した製品)ブーム。そんな中、あえて動物性のものを作るというわけですから、父のバイタリティーは、やはり桁外れだと思います」

逆境に立ち向かい、動物性の猪脂にこだわったのにはワケがありました。

「ボタニカルは肌に優しいので、敏感肌の方には向いていると思います。その昔、まだ薬が存在しなかった時代、傷を治すために動物の脂が使われていたというのは、それだけ効果があったということ。使っている人の実感としては治りが早いわけです。

例えば猪脂をつけると、ニキビや切り傷の治りが早いみたいなことがありましたし、私が日焼けで脚をやけどしてしまった際も、母に『猪の脂を塗っておきなさい』と言われて試したところ、効果が見られました。その後もずっと猪脂を塗り続けていたら、水ぶくれもできず、脚が艶やかになってきれいに治ってしまったんです。

こうした自分自身の経験も大きく、『猪脂の良さを伝えたい』と思いました。そもそも動物性の脂は人の皮脂に近いため刺激も少なく、敏感肌の方でもお使いいただけます」

猪脂の力を実感し、石鹸の営業に明け暮れた松岡さん。“何かもっとPRできることはないだろうか”と考える日々を過ごします。

「ある日、石鹸でメイクを落としてみたら、きれいに落ちて、クレンジングがいらないことがわかったんです。父が生み出した『TATSUMA SOAP』は、釜焚きと非加熱、2種類の製法で作っていました。そこで製造している石鹸屋さんに、『なぜメイクが落ちるんですか?』と聞くと、『非加熱製法、釜焚き製法だと洗浄力が高くなる』ということがわかり、“これだ”と思いました。この石鹸で洗うと、肌がつっぱらないこともわかりました。

洗浄力と保湿…一見すると矛盾を感じてしまいますが、石鹸の製造過程で猪脂から天然のグリセリンが作られるそうで、乾燥せずに汚れを落とすことができます。“保湿もしてくれるしメイクも落ちるなんてすごくいい。やっぱり猪はすごいかも”と思いました。
洗浄成分があるというと、肌荒れするようなイメージがあるんですけど、猪脂には不飽和脂肪酸が含まれており、この成分自体に洗浄力があるとされています」

天然由来成分のみを使い、すべて工場で手作り

「猪脂の素晴らしさをどう伝えていくのか…」営業で一番苦労したのは、猪脂に対するイメージでした。
「売り込みに行っても、『猪脂=臭そう』『逆に汚れるのでは?』というイメージがつきまといました。最初はネガティブな反応が多かったので、ずっと自信が持てなくて…まず興味を持ってもらうのが難しかったです。
また、石鹸1つ持って行ったところで、先方から『スキンケアセットになっていないと売りにくい』と言われることも多かった。そこで新たな商品開発に取り組むことにしました」

まずは「TATSUMA SOAP」に松岡さん独自のアイデアを込めて「gibier soap」として売り出すことに。新たに「ピーリングクロス」と「オールインワンクリーム」を開発し、スキンケアブランドを確立します。

「『TATSUMA SOAP』もそうですが、石鹸は天然由来成分のみを使い、すべて工場で手作りしているので、赤ちゃんから年配の方まで使っていただけます。また、石鹸にもクリームにもオーガニックの精油を入れています。精油には、心身の状態を整える効果があるといわれていますが、こういう五感で感じる効果は合成香料では得られません」

「ピーリングクロス」(3,300円・税込)は「若桜革工房Dear Deer」(鳥取県)https://gibierto.jp/article/shops/shop/12562/とコラボ。同社は「駆除した鹿の命を無駄にしない」という使命のもと、鹿の革などを使ったバッグや小物を製造・販売しています。

「ある展示会で、テーブルの上に大きな鹿の革が置いてあり、『洗顔できます』と書かれていたんです。天然のコラーゲンも豊富で、毛穴の汚れや古い角質まで取れるし、赤ちゃんを洗っても平気とのことだったので、“これだ!”と思ってすぐに交渉しました。

『gibier soap』だけでも十分保湿できますが、最初は誰も信じてくれなくて、皆さんどうしても化粧水、乳液、美容クリームで使うルーティンがあるんですよね。そこで、次はオールインワンを作りたいと思いました。
オールインワンに猪脂を少量入れても、きっと何も感じてもらえない。量を増やすとその分値段も高くなってしまうので悩みましたが、自分が使ってみて、“そうそう、これこれ”という感動を得られるまで増やしたいと思ったので、猪脂を10パーセント以上配合しています(オールインワンクリーム80g 10,230円・税込)」

愛用者の声にとことん応えるのも松岡さん流。

「重度のアトピーを持つ方には、事前にサンプルをお渡しして、まずは試してもらうようにしています。お客様から『今まで使える石鹸がなかったのに、この石鹸は大丈夫だった』と言っていただけた時は、本当にうれしかったですね。肌の状態を写真で送ってくださるお客様もいて、“少しは役に立っているのかもしれない”とやりがいを感じています。
ゆくゆくは、お客様と一緒に他にはない商品開発をしてみたいですし、皆さんに育てていただくブランドを目指しています。

よく皆さんにお伝えしているのは、肌の状態を良くするためには、水分と睡眠をとる、バランスよく食べる、運動をして血行をよくすることが大切で、内側から外側から、両立させることによって結果につながると思っています。体内が荒れていたら、そこにいくらお金をかけても意味がない。ストレスをうまくリリースして体を整えてこそ、シンプルなスキンケアが生きてくるのではないでしょうか」

「gibier skincare」が目指す先…ジビエ業界の未来

今後「gibier skincare」は、エシカルに取り組むさまざまな企業とコラボし、新たな商品を展開する予定。松岡さんの挑戦はここからが本番。さまざまなストーリーを打ち出し、ジビエ業界に新風を吹き込みます。

「『赤松炭&赤松精油』は、『つなぐ里山』(長野県)とのコラボ商品。過疎化と高齢化によって狩猟の担い手が不足している背景があるように、山も林業に携わる人が少なくなったせいで荒れているのが現状。『つなぐ里山』は自社で伐採しながら商品開発していて、ジビエソープ『赤松炭&赤松精油』(100g 4,510円・税込)は、伐採の過程で得られる精油や赤松の炭を練り込んでいます。

200年続く米農家『株式会社千年美容』(広島県)は、お米を育てながらコスメも作っていますが、今コラボして、米と蜜ろうと猪脂でリップクリームを作れないか試行錯誤しています。

“本来廃棄されてしまうものを利活用したら、実は人の肌にとっても良かった”そんな古人の知恵を、現代人になじみやすい形に…との思いからスキンケアブランドを立ち上げました。今後は教育機関でもジビエを取り入れてもらい、もっと一般的になるべきだと感じているので、その入り口の1つとして、石鹸やコスメがあるのはすごく重要なこと。

個人的には、ジビエ業界ってなんとなくそれぞれが違う方向を見て、独立してやっているようなイメージがあるので、“コラボをしたらこういうこともできますよね”とジャンルを超えて協力できた方が、未来は明るいんじゃないかなと思います」

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名産ジビエ「栄肉」を積極展開! 東広島市市長、担当職員、ジビエセンター代表に聞く、美味しさの理由と取組 https://gibierto.jp/article/feature/interview/15026/ Tue, 04 Mar 2025 08:00:17 +0000 https://gibierto.jp/?p=15026 「ジビエト」ではジビエの普及拡大に向け、全国のジビエへの取組を現地に足を運んで取材し、その詳細を紹介しています。
今回は、ジビエブランド「栄肉(さかえにく)」を展開する東広島市で、その美味しさの理由と取組について、東広島市長・髙垣 広德(たかがき ひろのり)さん、農林水産課課長補佐農林環境保全係長・井口 裕介(いぐち ゆうすけ)さん、主任主事・中仁谷 康平(なかにや こうへい)さんと、現場で事業をけん引する東広島ジビエセンター(株)代表・和泉川 健太郎(いずみかわ けんたろう)さんにお話をお聞きしました。

ジビエ事業として「栄肉」ブランドに注力したきっかけ

東広島市は、豊かな自然環境が育んだ伝統産業(農林水産業・酒造業など)と学術研究機能や先端技術産業が融合した町です。お米、日本酒、東広島こい地鶏、牡蠣などでも有名ですが、高品質ジビエ「栄肉」ブランドもその名を全国に響かせています。
髙垣市長は、広島県副知事も経験され、県全体の事情にも精通する一人です。
まずは、ジビエ事業についてお聞きしました。

「従来から、豊栄町において民間の『東広島ジビエセンター株式会社』が設立され、鹿や猪といった有害獣の解体及び処理作業が実施されていました。しかし、施設面積が狭小だったこともあり、市としても、施設・整備面の支援及び捕獲対策の充実(捕獲従事者の捕獲後の処理負担の軽減)を図り、ブランド化の拠点として『東広島市有害獣処理加工施設』の整備を行ったのです」

「栄肉」ブランドが高品質である理由

「松くい虫などの影響もあり、松林が減少したことにより広葉樹林が増え、ドングリが多くなりました。それを食べることでジビエの肉質が向上していることもあり、『栄肉』が美味しいという評判は都心部にも広がったのです。出荷先は地元よりも関東・関西・九州などが多いんですよ」と市長。

そんな「栄肉」には高品質を誇る3つの特徴があります。 “美味しいジビエ”と評価を集める理由となっていることは、その鮮度と処理の仕方にあるようです。

1)速やかで的確な処理
捕獲者から個体の引き取り依頼を受けると、従業員が捕獲現場に出向き、高い技術で迅速に止め刺し・放血を実施。1時間以内を目安に処理加工施設に迅速に搬入。

2)徹底した衛生管理
外皮の消毒などの徹底した衛生管理

3)品質を保証する認証
「国産ジビエ認証」を令和2年2月に取得し、また個体情報を管理するトレーサビリティシステムも導入

また、「栄肉」というブランド名の由来は、ジビエセンターのある豊栄町の名前から取られたもので、豊かに栄えるという意味も込められているとのことで、郷土愛も感じるネーミングとなっています。

ジビエ事業にICT技術を導入、連携や優遇制度でスピードアップ

では、実際鳥獣の捕獲や処理、飲食での展開など、ジビエ事業への具体的な取組はどのようなものなのか。自治体や民間との連携や優遇制度などの体制強化についても紹介しておきましょう。

「まず、鳥獣の捕獲や処理について、省力化を実施。令和2年度から、ICT技術を活用した箱わな管理システム(ほかパト)を導入し、個体が捕獲されるとメールが届くことで、捕獲者の箱わなの見回りなど管理の省力化を図っています。
また、捕獲個体の引き取り対応も行っています。市が編成している捕獲班と東広島ジビエセンターが連携し、捕獲された個体の引き取りに係る連絡体制を構築することで、個体の引き取りが迅速に行われるようになりました」

そして、飲食での展開についても補助事業で後押ししています。
「市内飲食事業者を対象とし、ジビエ等の市内産品を使った新メニュー開発への補助を実施しました。令和4・5年度には、新メニューとして、『ジビエへそ丼』『ジビエハンバーグ』『栄ジビエバーガー』などが登場したことも事業の効果を感じています」
道の駅でのグルメ・ジビエの販売も継続しており、市内での事業推進に期待が膨らみます。

このように、連携体制を強化することで、ジビエの処理から販売展開までをスピードアップすることができ、さらにそれは「栄肉」ブランドの知名度アップと普及拡大、ひいては有害鳥獣の利活用を増やし、暮らしへの不安を軽減させる効果へとつながっているのではないでしょうか。

処理頭数を増やすための設備の拡張

東広島市でのジビエに関する、その他の取組や今後のPR方法などについてお聞きしました。

市の主要な特産品のひとつとして、販路拡大や加工品の開発支援など「栄肉」としてのブランド力を高める取組を推進していきます。
具体的には、「道の駅湖畔の里福富」「道の駅西条のん太の酒蔵」などでの販売や広島県産応援登録制度である「チア!ひろしま」などを通じて、広くPRしたり、例年、市の一大イベントである「酒まつり」や県内最大級のグルメイベント「フードフェスティバル」でもブース出展し、栄肉グルメを提供しています。ふるさと納税の返礼品として、地元の特産品をセットにして提供することも考えています」
今後もますます、「栄肉」が広く認知拡大されていきそうです。

農業だけでなく市民の生活に深刻な影響を与えている現状

市民目線では、年々増加する有害鳥獣の被害が暮らしへの不安を募らせているのが現状です。
現場を把握する、農林水産課課長補佐農林環境保全係長・井口さん、主任主事・中仁谷さんのお話は現状を物語っていました。

「東広島市の有害鳥獣による農作物被害は、鹿・猪による被害が9割以上、被害金額は令和5年度3,371万円。さらに、近年では今まで出没していなかった地域でも有害鳥獣の目撃情報が寄せられており、生息域・農作物被害の拡大が懸念されます。こうした状況により、農業者の営農意欲の低下や、市街地出没などによる住民の生活環境被害への不安が募っています」

それを何とか食い止め、有効活用する意味でも、ジビエ事業への注力は重要となってきています。現在、捕獲した鳥獣のうち、年間処理頭数(令和5年度)約1,500頭、市内で捕獲された鹿・猪約4,200頭の内、1/3程度が処理されています。
昔は、捕獲した鹿や猪は猟師がさばいて周囲におすそ分けとして配ったそうですが、その処理の仕方もばらばらで品質も一定しなかったとのこと。ブランドジビエ「栄肉」を初めて食べた時は、広島ご出身のお二人もその美味しさに驚いたのだとか。おすすめは鹿のスライス肉をシンプルに焼いたもの。シンプルだからこそ、その肉の味わい深さが際立つのでしょう。

とてもおいしいと評判のブランドジビエ「栄肉」。そのこだわりの処理方法とは?

最前線で「ジビエ愛」ともいえる取組を見せるのは、東広島ジビエセンター(株)代表・和泉川さんです。
和泉川さんは30年以上の猟師経験を持ち、狩猟を通じてジビエのブランド化を進めてきました。インタビューでは、ジビエの品質管理や地産地消の取組について詳しく伺いました。

自然豊かな環境で誕生したブランドジビエ「栄肉」。東広島ジビエセンターで捕獲・処理されたジビエは、衛生的な環境で特別な技術を用いて加工されるため、臭みも少なく鮮度抜群です。低脂肪高タンパクの鹿肉や、栄養素豊富な猪肉はそのまま焼いて食べても美味しいと評判は高く、その理由には、いくつものこだわりがありました。

「長年、捕獲活動に参加し、捕獲された動物がほとんど捨てられていることを知り、処理施設の必要性を感じ、東広島ジビエセンター(株)を立ち上げました。民間企業として設立し、現在は行政のサポートを受けながら稼働させつつ、約10年前にブランド化を始めました。広島ではジビエの需要が低く、地元では売れにくい一方、関東・関西・九州など全国のスーパーでも販売されるまでに販路拡大しています」

「このセンターでは、持ち込みは受けず、引き取り方式を採用し、必ず自分の目でその状態を確認してから、血抜きを行い、センターに持ち帰ってからも電解水を用いた個体の洗浄やトレーサビリティシステムの導入などの衛生管理を徹底することで品質を保っています。年間1600頭のジビエを処理しており、全国トップレベルの処理数ですが、すべて引き取りで行っているのは、処理の仕方で品質が変わるのを避けるためです」

市役所の食堂でも提供されているジビエ

市役所10階のレストラン「ビストロパパ市役所店」(庁舎食堂)では、ジビエランチが提供されており、以前のイメージを覆し美味しいという感想もあります。地産地消をジビエでも実現しているのです。
「ブランドジビエ「栄肉」は美味しくて、衛生環境も整っているのが大きな特徴だと思っています。しかし、全国には美味しくないジビエが出回っていることも事実で、そんな肉を食べた人はリピーターにはならないでしょう。ジビエの味の底上げを目指し、ジビエ協会と協力したいと思っています。美味しくない肉を減らし、全体のレベルを上げたいですね」

ジビエは高級レストランでも提供されているので、手に入りにくい高級食材というイメージもあります。しかし、実際は少し良い牛肉程度の価格です。供給量が少ないため、価格は高くなる傾向にはあるので、捕獲した野生の鹿や猪を処理する施設の増設と、その処理技術を全国に広める必要もありそうです。

「技術を伝授することは可能で、出張講習も考えています。そして、質の高いジビエをいかに普及させていくかが今後の目標ですね」
和泉川さんの元では、若手のハンターも育っています。処理技術を後進へ伝える場所でもある東広島ジビエセンターから、東広島モデルと呼ばれる処理技術とおいしいジビエが広がっていくことに期待しています。

その美味しさは全国区となっているブランドジビエ「栄肉」。都心のスーパーやレストランでの需要も増加中ですが、ジビエはもちろんのこと、酒蔵を巡り、美味しいご飯とジビエを味わえる、そんな思わず深呼吸したくなる贅沢な時間を求めて、東広島へ出かけてみませんか?

 

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ジビエ普及のために食育が果たせる役割とは? https://gibierto.jp/article/movie/15088/ Fri, 28 Feb 2025 08:00:19 +0000 https://gibierto.jp/?p=15088

2025年2月27日(木)、「環境に優しい食育協議会シンポジウム」(主催:東京ガス株式会社/後援:農林水産省、環境省、文部科学省)が開催されました。食料問題や環境負荷の軽減への貢献、食文化、鳥獣被害対策、利用制度の整備、安全性など多岐にわたる議論が展開され、それらの課題理解を深め、ジビエを活用していくためには食育も重要であるということを認識する機会となりました。

【タイムテーブル】
00:00:00 開催挨拶
00:11:50 石破総理大臣によるビデオメッセージ上映
00:21:04 【第一部】基調講演「持続可能なこれからの肉食のあり方」
講師:田村典江氏(事業構想大学院大学 専任講師/一般社団法人FEAST代表理事)
01:04:07 【第二部】パネルディスカッション「ジビエ食の受容と普及のために」
パネラー:田村典江氏
藤木徳彦氏(一般社団法人日本ジビエ振興協会代表理事)
遠崎将一氏(はだの都市農業支援センター/神奈川県秦野市役所 環境産業部農業振興課)
モデレーター:東郷悟史(東京ガス 食情報センター所長)
01:47:14 【第三部】試食会

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捕獲・解体から料理まで手掛ける栗原すみれさんが伝えたいジビエの魅力 https://gibierto.jp/article/feature/interview/14954/ Fri, 21 Feb 2025 08:00:42 +0000 https://gibierto.jp/?p=14954 神奈川県・小田原で鳥獣の捕獲・解体からジビエの出張料理まで行う栗原すみれさん。ジビエとの出会いから現在の活動など、ジビエへの熱い思いをお聞きしました。

師匠・宮本亮さんとの出会いが転機に

10代のころから料理好きだった栗原すみれさん。高校では料理部に所属し、料理の大会で優勝するなど、学生時代から確かな腕を持っていました。高校卒業後、調理師専門学校へと進学し、鉄板フレンチのお店に就職したのだそう。では、フレンチの料理人だった栗原さんがジビエの世界へ進んだきっかけは何だったのでしょうか。

「5年ほどフレンチを作ってきましたが、将来について考え、転職についての相談のため卒業した調理師専門学校を訪れました。その時にたまたまジビエの講義のため来校していた、猟師であり、鳥獣の解体や利活用を行っている宮本亮さんに会い、お話する機会がありました」

高校時代から合鴨を丸ごと1羽調理したり、カエルやナマズなど普段食さない生き物を美味しく食べるにはどう調理すべきかなどに関心があった栗原さん。宮本さんのジビエについてのお話に惹かれ、翌日には、宮本さんが解体を行っている小田原の解体処理施設を見学することになったそうです。

「その日捕獲された鹿があり、宮本さんから『1頭丸ごとさばいてみたら』と言っていただき、初めて鹿を解体しました。これまで料理しかしてこなかったけれど、鹿がどこで獲れて、どういう状態で持ち込まれるのかを目の当たりにしたことで、やりたいのはこれだ!と思ったんです」この時から、栗原さんの道はジビエの世界へと舵をきりました。

解体処理施設で解体経験を積んでいるうちに、ジビエに関する現状や問題を知った栗原さん。「猟師不足や、中には鹿の捕獲方法が雑な人もいるといった話を聞き、解体だけではなく、自分ができることは他にもないか、殺めた命を大切にすることに繋がる活動はできないかと考え始めました。そこで、師匠である宮本さんと共に、捕獲から解体、料理、さらに毛皮や骨まですべてを活用する様々な事業を行うようになりました」

料理人だからこそできること

狩猟の世界は男性が多いイメージがありますが、意外にも女性が増えてきていると栗原さん。
「鹿肉の魅力に気付かれた方や私と同じように鹿の現状を知り、何とかしたいという思いで狩猟免許を取る方、またクレー射撃をやっていたという方が狩猟をはじめることもあり、女性も多くなってきています。また、女性の方が血の現場を見るのは強いようで、解体などもしやすいみたいです」

料理人でもある栗原さんの場合、捕獲・解体だけではなく、現在、出張料理まで担当しています。
「ジビエの事業としてマルシェに出展していた時にいらしたお客様に、もともと料理人だったというお話をしたところ、『自宅にあるワインに合うジビエ料理のフルコースを作ってほしい』と依頼を受けました」
この依頼をきっかけに、一般の方にもジビエ料理のニーズがあることを知り、本格的に出張型の料理事業をはじめたそうです。
「料理人がいないワインソムリエの経営するワインバーと連携してジビエ料理を提供したり、ジビエを食べたいけど、料理方法が分からないという個人のご家庭に伺って、目の前で料理しながら、ジビエのさばき方や、家庭でできる美味しいジビエ料理を紹介するといったことも行っています」

子どもにもジビエを知ってほしい

1月に開催されたジビエト×NPO法人チルドリンによるジビエ親子イベント「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」で、宮本さんと共にトークショーに登壇した栗原さん。
小田原に生息する鹿など動物の生態が分かる映像を流して解説したり、ジビエの栄養面の特長や、美味しいジビエ料理の紹介などをしていました。
「子どもって、普段食べている肉が牛なのか豚なのかそれほど意識せずに食べていると思うんです。今回のイベントで、鹿や猪の話を聞いたり、試食スペースで実際に鹿肉や猪肉の料理を食べてみて、ジビエに興味を持ったり、もっと身近に感じてもらえたらいいなと思っています」

今回のようなイベントだけではなく、こども食堂の活動にも参加しているという栗原さん。
「ジビエ肉を使用して作った料理をこども食堂に提供しています。子どもたちは、牛肉や豚肉と区別せず美味しく食べてくれます。子どもたちの方が、舌が正直というか、先入観なく食べてくれるのかもしれませんね」
こども食堂以外にも、幼稚園生から中学生の子ども向け食育イベントで、鹿肉の料理を提供するなど、ジビエの魅力を伝える活動を積極的に行っているのだそう。

最後に栗原さんに今後の夢を聞いてみました。
「私が一番目指しているのは、『ご家庭の食卓でもジビエを』ということです。今は共働き家庭が多く、まして働くお母さんは、料理時間が限られている中で、栄養のことも考えながら作らなきゃいけない。そういう時に栄養価の高いジビエを取り入れることで、それだけでもしっかりした栄養補給になります。特に子どもにとって必要なビタミンB群が豊富なので、家庭でぜひ食べてほしいと思います。そのために、私が家庭で作りやすいジビエ料理などを紹介していければと思っています」

しかしながら、現状はスーパーなどではなかなか手に入れるのが難しいジビエ。
「そこはもどかしいところなのですが、インターネット通信販売をはじめ、道の駅に並んでいることもあります。また地域の地産地消のお店などで売られていることもあるので、こうした場所でジビエを見つけたら積極的に購入し、料理してみてほしいです」
夢の実現に向けた、栗原さんの今後の活動が楽しみです。

 

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【プロフィール】
栗原すみれさん
神奈川県出身
調理師の専門学校を卒業し、箱根の鉄板フレンチ料理店で
料理人として働いた後、ジビエの世界へ。
現在は小田原を拠点とし、アップサイクルブランド「Recovery and Reload」の一員として、ジビエの捕獲・解体から精肉、出張料理まで行っている。
Instagram

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銀座でジビエ!「ジビエト×長野県」料理教室で鹿肉カレー2種を堪能 https://gibierto.jp/article/event/14944/ Wed, 19 Feb 2025 08:00:36 +0000 https://gibierto.jp/?p=14944 2024年12月22日銀座NAGANOで行われたジビエトと長野県コラボイベント「銀座で信州ジビエを食べてみませんか?」という料理教室を開催しました!当日の様子をリポートします。

ジビエを家庭でも!魅力満載の料理教室

今回のジビエ料理教室は、ジビエポータルサイト「ジビエト」と長野県がタッグを組み、ジビエの魅力を身近に感じてもらうことを目的に実施されました。

【イベントタイトル】
銀座で信州ジビエを食べてみませんか?~ジビエト×長野県コラボイベント~
【登壇者】
YEBISU GARDEN CAFE料理長/橋本 匡史(はしもと ただし)さん
2005年より名古屋市内のホテルやレストランでフランス料理とデザートの技術を磨く。2015年に株式会社LEOCへ入社し、東京で社内カフェ事業部の料理長として調理指導やメニュー開発に携わる。現在はYEBISU GARDEN CAFEの料理長として活躍。
YEBISU GARDEN CAFE管理栄養士兼店長/穴山 萌恵(あなやま もえ)さん
2021年に株式会社LEOCへ栄養士として入社し、老人ホームや急性期病院での栄養管理業務に従事。2023年からは恵比寿ガーデンカフェの店長兼管理栄養士として、店舗運営と栄養管理の両面からカフェの魅力を高めている。
鵜沼 明香里(うぬま あかり)さん
鹿肉料理専門のキッチンカーを運営。北海道に移住し鹿の解体や精肉の現場にも携わり、鹿肉の調理や加工に関する知識と経験を活かして鹿肉料理を提供したり、イベントに登壇するなどして活動している。

鹿肉の調理ポイントが満載!

まずは、北海道で鹿肉生産に関わる鵜沼 明香里(うぬま あかり)さんのジビエに関する説明です。ジビエという言葉の説明から鳥獣被害の現状などもあわせて学びました。

鵜沼さん「ジビエとはフランス語で野生鳥獣のお肉という意味です。今ではジビエという言葉が広く知られていますが、実は鹿や猪のお肉は縄文時代から日本人が食べてきたお肉であり、牛や豚、鶏のお肉と比べても歴史がある食文化なんです」

そして調理の部がスタートしました。

橋本さん「今日は煮込みにぴったりな鹿の肩肉を使って調理していきます。まず、肉には筋膜という部分がありまして、これを丁寧に取り除きます。筋膜を除去することで、においが軽減されるんです。今回使用するスパイスですが、ガラムマサラ、ナツメグ、クミンの3種類を選びました。特にクミンとナツメグはジビエとの相性が抜群です。」

また管理栄養士の穴山さんからは鹿肉の栄養素やおすすめの食べ合わせについての説明がありました。

穴山さん「鹿肉にはタンパク質が豊富に含まれており、タンパク質は筋肉、お肌、髪の毛、爪など体を作る材料になります。タンパク質はビタミンB6と一緒に摂取すると吸収が促進されます。例えば、パプリカのサラダや白米を玄米にすることで効率よく栄養を摂れます。さらに、鹿肉には豚肉や牛肉の4倍の鉄分が含まれており、貧血予防にも役立ちます。鉄分はビタミンCと摂取すると吸収が促進されます。本日の副菜として添える柚子の皮にはビタミンCがたくさん含まれています」

今回会場となったのは長野県信州のジビエや野菜、果物などを扱う銀座NAGANOという事もあり、料理教室で使用した鹿肉は長野県の信州ジビエです。長野県の営業局 販売流通促進担当の矢作さんは、信州ジビエの現状と今後の展望についてこう話しました。

矢作さん「今回使用しているのは長野県の信州富士見高原ファームというジビエ処理施設の鹿肉です。長野県は全国でも早くからジビエの利用に取り組んできた地域で、現在県内にはジビエ処理施設が35か所あります。これらの施設では、捕獲した鹿や猪は1時間以内に施設へ搬入しなければならないというルールを自社で設けるなど、衛生面の管理や品質維持に力を入れています。
しかし、長野県では毎年約3万頭の鹿の捕獲数に対して、お肉として利用されているのは6,000頭ほどです。全体の2割程度にとどまっています。残念ながら、捕獲の仕方や搬入時間の遅れなどで食肉としての利用ができず、無駄になってしまう部分がまだ多いのが現状です。
今日のイベントを通じて、ジビエの魅力を知っていただき、食べてもらうことで、ジビエをもっと身近に感じていただければと思います。これをきっかけに、ぜひ今後も色々な場所で信州ジビエを楽しんでいただけたら嬉しいです。」

鹿肉カレーをいざ実食!

最後に、完成した鹿スパイスカレーと鹿キーマカレーの2種を試食しました。参加者の方にカレーの味をお伺いしました。

「鹿スパイスカレーの鹿肉はとても柔らかいです。スパイスと鹿肉の相性がよく、肉の旨みもしっかり感じられます。キーマカレーはスパイシーだけど野菜の旨みが出ていて優しい感じがします。山椒の香りも、カレーとマッチしていて美味しいです。」

参加者には料理に詳しい方が多く、質問コーナーではスパイスの使い方、選び方やレシピのアレンジなどの質問が見られました。今回の料理教室では、カレーという身近な料理を通してジビエをもっと家庭料理に取り入れる人が増えるきっかけになったのではないでしょうか。
レシピ・材料

■長野県産 “鹿”スパイスカレー

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【材料・分量】(4人分)
鹿肉ミンチ・・・250g
ビール・・・25g
カレー粉・・・2g
ガラムマサラ・・・2g
ナツメグ・・・0.8g
★ベジスープ・・・350cc
サラダ油・・・20g
クローブ・・・1個
カルダモン・・・2個
クミン・・・1.5g
ローリエ(中)・・・2枚
玉ねぎ・・・250g
ニンニク・・・5g
ショウガ・・・5g
カルダモンパウダー・・・0.5g
パプリカパウダー・・・3g
クミンパウダー・・・1g
コリアンダーパウダー・・・3g
ターメリック・・・0.3g
塩・・・1g
かつおだし(顆粒)・・・1g
コンソメ(顆粒)・・・3g
煮汁(ベジブロスも使用)・・・250g
はちみつ・・・8g
ウスターソース・・・5g
かつおぶし・・・2g

★ベジスープの作り方
材料・分量
水・・・1リットル
玉ねぎの硬い部分・・・200g
人参のヘタ、皮・・・50g
キノコの軸・・・30g
ローリエ・・・1枚
細かめに切った野菜と水を鍋に入れ、約30分ほど弱火で煮出します。その後、漉して完成。(※水に対して20%の重量の野菜が必要です。)

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【作り方】
① 鹿肉を一口大に切り、ビール、カレー粉、ガラムマサラ、ナツメグを加え、全体に馴染ませて一晩マリネする(短くても2時間以上漬け込む)。
② 別の鍋で、野菜くずを使ってベジスープを作る(水に対して20%の野菜を加え、約30分煮出して漉す)。
③ マリネした鹿肉をフライパンで焼き、全面に焼き色を付けたら鍋に移し、ベジスープ(350cc)を加えて中弱火で45分~1時間煮込む。途中で煮詰まった場合は、ベジスープまたは水を足す。
④ 別の鍋にサラダ油を入れ、クローブ、カルダモン(ホール)、クミン(ホール)、ローリエ(中)を加えて香りを出す。玉ねぎをみじん切りにして鍋に加え、強めの中火で濃い茶色になるまで炒める。その後、火を弱めてさらに15分ほど炒めてしんなりさせる。
⑤ 炒めた玉ねぎに、おろしたニンニクとショウガを加え、さらにカルダモンパウダー、パプリカパウダー、クミンパウダー、コリアンダーパウダー、ターメリックを加え、弱火で香りを引き出す。
⑥ ⑤に塩、かつおだし(顆粒)、コンソメ(顆粒)、煮汁(ベジブロスも足して)、はちみつ、ウスターソースを加え、弱火で20分ほど煮込む。最後にかつおぶしを加えて風味を整え完成。

 

■実山椒香る “鹿”キーマカレー

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【材料・分量】(4人分)
鹿ひき肉・・・250g
ビール(黒)・・・25g
カレー粉・・・2.5g
ガラムマサラ・・・2.5g
ナツメグ・・・1g
サラダ油・・・12.5g
カルダモン(ホール)・・・1粒
クミン(ホール)・・・0.8g
コリアンダーパウダー・・・2.5g
クミンパウダー・・・1.5g
カルダモンパウダー・・・0.2g
玉ねぎ・・・150g
にんじん・・・10g
トマトダイス缶(生でも可)・・・100g
ココナッツミルク・・・40g
ベジスープ・・・75g
コンソメ(顆粒)・・・1.5g
塩・・・1g
ケチャップ・・・5g
ウスターソース・・・7.5g

【トッピング】
実山椒
山椒の粉

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【作り方】

① 挽肉をボウルに入れ、ビールからナツメグまでの材料を加え、よく混ぜて一晩マリネする(時間がない場合でも、最低2時間は漬け込む)。

② 野菜くずを使ってベジスープを作る

③ 鍋にサラダ油を入れ、カルダモンとクミンを加えて熱し、スパイスの香りを引き出す。次に、みじん切りにした玉ねぎと人参を加え、強めの中火で炒める。玉ねぎが濃い茶色になるまで炒めたら火を弱め、しんなりするまで約25分加熱する。

④ 挽肉を別のフライパンで炒める。全体的に焼き色が付き、パラパラにほぐしながら加熱する。

⑤ 炒めた野菜の鍋に、焼き色を付けた挽肉を加える。さらにコリアンダーパウダーからカルダモンパウダーまでのスパイスを加えて香りを引き出し、ダイストマトを加えて軽く水分を飛ばすように炒める。

⑥ ココナッツミルクからウスターソースまでの材料を鍋に加え、弱火で20分ほどコトコト煮込む。水分が少なくなり、適度な濃度になるまで煮詰めたら火を止める。

⑦ 器に盛り付け、仕上げに実山椒を8粒ほど散らし、粉山椒を振りかけて完成。

 

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銀座で信州ジビエを食べてみませんか?~ジビエト×長野県コラボイベント~【イベントは終了しています】 https://gibierto.jp/article/movie/15044/ Wed, 19 Feb 2025 03:49:05 +0000 https://gibierto.jp/?p=15044

2024年12月22日銀座にある長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」で、ジビエトと長野県コラボイベント「銀座で信州ジビエを食べてみませんか?」という料理教室を開催しました。(このイベントは終了しています)

料理指導
YEBISU GARDEN CAFE料理長/橋本 匡史(はしもと ただし)さん
YEBISU GARDEN CAFE管理栄養士兼店長/穴山 萌恵(あなやま もえ)さん

ジビエに関する説明
長野県 産業労働部 営業局/矢作 郁瑠(やはぎ いくる) さん
鹿解体師、ジビエ料理人、保育士/鵜沼 明香里(うぬま あかり)さん

長野県のジビエについてもっと知りたい方はこちら
https://youtu.be/hzdGOv2xt_I

長野県内でジビエが食べられるお店を特集中「信州ジビエを食べに行こう!」HP
https://blog.nagano-ken.jp/gibier/gibier-restaurants

長野県アンテナショップ「銀座NAGANO」HP
https://www.ginza-nagano.jp/

▼ジビエトInstagram
@gibierto

※「ジビエト」は、農林水産省令和6年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

ジビエ利用拡大コーナー
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/index.html

#農林水産省 #ジビエ #鳥獣被害 #サステイナブル #サステイナビリティ #SDGs #ジビエ利活用 #銀座NAGANO #ジビエ料理教室 #料理教室

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「環境に優しい食育協議会シンポジウム」をガスの科学館にて開催します(2025年2月27日(木)) https://gibierto.jp/article/event/14902/ Fri, 14 Feb 2025 06:00:15 +0000 https://gibierto.jp/?p=14902 ジビエ食をキーワードに地域活性化などの自治体加太解決への活用を探るシンポジウム

参加申込:上記QRコードか、こちら よりお申込みください

2025年2月27日(木)14:00~16:30(受付:13:30~)
 14:00~ 開会ごあいさつ
 14:15~ 第一部 基調講演「持続可能なこれからの肉食のありかた」
 15:00~ 第二部 パネルディスカッション
          テーマ:ジビエ食の受容と普及のために
 16:10~ 試食タイム ジビエ給食メニューなど(ジビエ給食メニューの一例をご試食として提供します )

 

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ジビエト×NPO法人チルドリンによる初の親子ジビエイベント「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」を開催!子どもから大人までジビエを知り・食す楽しい一日に https://gibierto.jp/article/event/14901/ Fri, 14 Feb 2025 02:36:00 +0000 https://gibierto.jp/?p=14901 「家族でジビエを楽しく学ぶ」というコンセプトのもと、1月18日、横浜市開港記念会館で「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」が、2025年1月18日(土)に開催されました。未就学児から小学生の親子を中心に約200名が参加したイベントをレポートします。

森の動物クイズや紙芝居のステージ

土曜日に開催された「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」ではお父さんやお母さんと一緒に家族で参加している方が多くいました。中でもステージで行われた、森の動物クイズや紙芝居は、小さいお子さんも多く参加していました。

登壇した鵜沼明香里さんは、鹿解体師でありながら、ジビエ料理人、そして保育士の資格を有し、イラストレーターとしても活動しているマルチプレイヤー。何が始まるのか少し緊張気味の子どもたちの前で、まずは楽しく動物クイズ。動物のイラストを掲げ「この動物は何でしょう?」と質問をすると、手をあげる子どもたち。マイクを向けると「ウサギ!」「イノシシ!」と元気に答える子、「シマウマ?」「キリン…」と恥ずかしそうに答える子。鵜沼さんクイズを進めていくうちに、子どもたちはみんな笑顔になっていきます。いつの間にか緊張した様子もほぐれ、次は紙芝居「昔から日本に暮らす動物たち」が始まりました。

「牛や豚などを食べるようになった歴史はそれほど古くはなく、縄文時代から人間が食べていた肉は鹿や猪が中心でした。この時代、狩猟した鹿や猪の肉を食べるだけではなく、毛皮を傘や敷物にしたり、靴や兜の裏地に活用していました。また骨は釣り針や槍にするなど、殺めた生き物を余すことなく活用していたそうです」と鵜沼さんがジビエの歴史について話します。また、「鹿は夏と冬では毛皮の柄が違うことは知っていますか。夏はバンビのような斑点柄、冬はねずみ色のようになります。これは、山に暮らす鹿が敵から身を守るためのカモフラージュで、夏は木漏れ日、冬は落ち葉の色味に馴染むような色になると言われています」などといった豆知識も数多く教えてくれました。
子どもたちは集中して紙芝居を見入っていて、日本に暮らす野生動物について学んでしました。

その後の鵜沼さんへの質問コーナーでは、ジビエの流通問題や美味しいジビエの見分け方、鵜沼さんのジビエで好きな料理についてなど多くの質問があがり、予定時間を上回る大盛況のステージとなりました。

山に暮らす動物の生態も知れた、アップサイクルブランド「Recovery and Reload」によるトークショー「小田原の新しいジビエのかたち」

次に行われたステージは、猟銃免許等を有し、一般社団法人全日本鹿協会の評議員であり、自身のアップサイクルブランド「Recovery and Reload」の代表を務める宮本亮さんと、宮本さんの弟子として鳥獣の捕獲・解体を行う傍ら、ジビエの出張料理なども行う栗原すみれさんによるトークショー。
まず最初に宮本さんから参加者に「今日このイベントが終わり、家に帰って家族で食事をするときに、号令としての『いただきます』ではなく、肉をはじめ食するすべてのものの命をいただくという感謝の意味を込めて『いただきます』と言ってもらえたら」とメッセージがありました。この意味を感じさせる宮本さんと栗原さんの興味深いお話が始まりました。

全国に772か所のジビエ解体処理施設(2024年時点)があり、神奈川県には5か所、そのうちの1つである小田原市役所の前にある解体施設で宮本さんと栗原さんは、小田原周辺で捕獲したジビエの解体をしているそうです。小田原の街から箱根に抜ける林道付近に150~200個近くのくくり罠を仕掛けており、今回はその仕掛け近くに設置している「トレイルカメラ」に映った動物の様子を動画とともに紹介してくれました。

鹿、猪、ハクビシンなど様々な生き物の生態を知る

くくり罠を紹介する栗原すみれさん

「トレイルカメラ」は、センサーが付いていて、動くものに反応して作動し、自動で録画してくれるのだそう。そこには様々な動物たちの様子が映っていました。
鹿の大好物である「アオキ」という木の葉を親子でぱくぱくと食べる様子、雌よりも大きな体格で角がしっかりと生えた雄鹿が歩く姿。ハクビシンや猪など、普段は見ることのできない野生動物たちの動く姿が次々と映し出され、参加した皆さんは真剣に見入っていました。映像とともに、宮本さんが「雄鹿は角の形でだいたいの年齢がわかる一方、雌鹿の年齢は、研究機関で歯を調べることによってわかります」「猪は頭が良くて鼻が利くため、山で育てたタケノコが一番おいしいタイミングがわかり、人が収穫する目前に掘って先に食べてしまいます。これでは、農家が何のために育てたのかわからなくなってしまう」など、動物の生態、動物による農作物被害についてわかりやすく解説してくれました。
農作物被害を解決するために行う捕獲活動。その捕獲方法などについてもより詳しく教えてくれました。

「ハクビシンは甘いものが好きなので、バナナを仕掛けたり、タヌキは押し麦を好むので、押し麦を置きます。動物たちは主にくくり罠で捕獲していますが、例えば雨などにより泥土が罠の上にかかってしまうと、その分、高さが上がってしまい、動物の足が罠の上に乗っても反応しなかったり、罠がひづめのあたりでくくられ、擦り抜けてしまうことがあります。そのため、定期的な点検とメンテナンスが必要になります」と宮本さん。
会場では、実際に使っているくくり罠に鹿の足に見立てた棒を乗せて、罠が作動する様子を実演してくれました。普段は見ることのできないくくり罠の実演に、後方に座っていた方たちは立ち上がって覗き込むほど、皆さん興味深々の様子でした。

殺めた命はすべて大切に活用する

農家などに被害をもたらす鹿や猪ですが、大切な命であることに変わりはなく、肉を食すだけではなく、骨や皮まですべてを活用することで命を無駄にしないと考えている宮本さん。「Recovery and Reload」では、子どもも参加できるように、針を使わないジビエレザーのクラフトができる「ジビエワークショップ」を開催したり、猪の毛皮で作った名刺入れやキャッシュトレーなどを販売する「ジビエレザー事業」、また鹿の頭蓋骨を使った「スカルトロフィー事業」や、毛皮を活用した「ファーワイルド事業」など、ブランドコンセプトである「Recovery=回復」「Reload=更新・再生」を様々な事業を通して行っているそうです。

栄養満点、美容と健康を意識するならジビエが最適

宮本さんと活動する栗原すみれさんは、調理の専門学校を卒業後、フレンチの鉄板料理店で働いたのち、ジビエの世界へ進んだそうです。料理の知識も豊富な栗原さんからは、ジビエの栄養についてのお話がありました。

「鹿肉は、タンパク質が豊富で、低脂質・低カロリーでさっぱりとした赤身のお肉です。肌や髪の再生に必要であり、代謝を上げる効果があるビタミンB2・B6がたくさん含まれているので、免疫力が上がりやすいと言われています。さらに鉄分や葉酸も多いため、妊婦さんやお子さんにも食べてもらいたいと思います。猪肉はタンパク質や脂質、カロリーは豚肉と同様なのですが、鹿肉同様ビタミンB群と鉄分が非常に豊富です。ストレス過多、疲れ気味な人、偏食・飲酒や喫煙をする人は日常的にビタミンB群が不足しがちなので、ジビエを積極的に取り入れてほしいです」と栗原さん。
会場には、乳児を連れているお母さんの姿も見られ、栄養面でのお話にも関心が集まっていました。

最後に行われた質問タイムでは、ジビエはどこで買えるのかといった質問が。宮本さんから「ジビエの安定供給は現在のところ難しい面もあり、スーパーなどに並ぶことはあまりないのですが、ジビエ専門のインターネット通信販売や小田原の解体所でソーセージなどジビエの加工品が販売されています。またふるさと納税の返礼品としてもジビエがあるので、こうしたところで入手してもらえたらと思います」とお話がありました。

そのほか、童謡歌手・井上かおりさんによる「みんなでうたおう!森のなかまたち」のステージもあり、お子さんが一緒に口ずさむなど、リラックスした雰囲気の会場となっていました。

ジビエ満載のランチBOXや猪キーマカレーも!ジビエの美味しさに触れる試食コーナー

会場の1階ステージで様々なイベントが行われている一方、2階には、実際にジビエを食べることができる試食コーナーがありました。
多くの参加者たちがTSUBAKI食堂の椿直樹シェフが提供するランチBOXや丹沢ジビエを使った猪キーマカレーを受け取り、美味しそうに食べていました。ランチBOXの中には、鹿肉のハンバーガー2つと猪肉のミニコロッケ2つ、また開催地である横浜の新鮮野菜のサラダが入り、ジビエの魅力と横浜の地産地消が「食」を通して体験できる、美味しい機会となりました。

家族3人で参加していた方に感想を伺ったところ「初めてジビエを食べました。もっと臭いのかなって思っていたけど、匂いもなくて美味しいです。特に鹿肉はさっぱりしていて好みです」と答えてくれました。猪キーマカレーを提供していた方に、会場の様子を聞いたところ「皆さん、想像よりお肉が柔らかいって言ってくれます。少しスパイシーに仕上げていますが、挽き肉なのでお子さんでも喜んで食べてくれていますよ」とうれしい反響があったそうです。

試食コーナーがあるこのフロアでは、NPO法人ハッピーマザーミュージックの方による絵本の読み聞かせが行われたり、株式会社Woo-By.Styleがジビエ料理に合う野菜の提案をする「夕方マルシェ」を出展していました。また鹿皮で作るキーホルダーのワークショップが開催されるなど、イベント時間中は常に賑わっていました。

ジビエについて様々な角度から知り、また子どもでも楽しめる企画があり、学びと遊びを通じてジビエの魅力を体験できました。家族でSDGsを考えたり話し合ってみる良いきっかけになったイベントでした。

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「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」
公式サイト: https://www.child-rin.com/note/6153/
開催日:2025年1月18日(土)11:00〜15:00
主催:ジビエト(株式会社テレビ東京コミュニケーションズ)

 

 

 

 

 

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【早稲田大学狩り部の一日に密着】自分で獲って、自分で食べる。ジビエの魅力と鳥獣被害対策の理解を広める https://gibierto.jp/article/movie/14887/ Thu, 13 Feb 2025 02:00:41 +0000 https://gibierto.jp/?p=14887

日本の農村では、イノシシやシカによる農作物被害が増えており、大きな問題となっています。地元の猟師や農家からの協力を得て、農業の実態を学びながら、自ら捕獲した動物を活用し、食の自給を実践している早稲田大学 狩り部の活動を取材してきました。

▼取材協力
鴨川自然王国
http://www.k-sizenohkoku.com/

早稲田大学 狩り部
https://wasedakaribu.wixsite.com/homepage

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「鹿皮紙」歴史ある素材と人との好循環 カワダシュウジが想い描く鹿皮利活用の新提案とその未来 https://gibierto.jp/article/shops/shop/14845/ Thu, 06 Feb 2025 08:07:04 +0000 https://gibierto.jp/?p=14845

東京都青梅市日向和田駅から程近い場所にショールーム「鹿皮紙と無花果」が在ります。
日本で初めて鹿皮で作る羊皮紙「鹿皮紙」の開発企画をおこなう唯一の場所です。
鹿皮紙開発者であるカワダさんたちが築80年の古民家をセルフリノベーションし、2023年11月にオープンしました。

新素材「鹿皮紙」とは

「鹿皮紙」は、ニホンジカの皮を使用し古来ヨーロッパや中東に伝わる羊皮紙作り伝統技術と現代日本皮革技術を融合させ開発されました。紀元前より製造されていた羊皮紙は羊やヤギを使用し、その保存性の高さから筆写素材として利用され1000年を超える書物が現存しています。日本史には羊皮紙作りの記録は無く、鹿皮紙は廃棄されるニホンジカの皮の新しい活用方法として注目されています。
鹿皮紙の厚さは0.2~0.45mm程で、軽く張りがあり耐久性に優れています。鹿独特の風合いと温かみが感じられる紙状のこの素材は、筆写・印刷素材として使用でき加工性の高さから幅広い用途に活用出来る可能性を秘めています。

ショールームに一歩足を踏み入れると、整然と並べられた様々な種類の鹿皮紙や製品が目に入ります。ニホンジカの個体差に由来した皮のテクスチャーは多彩で魅力的です。

革モノ作り教室をきっかけに始まる鹿皮紙作り

カワダさんは、鹿皮紙プロジェクトと共に東京JR中央線国立駅から程近くの場所で革モノづくりの技術と魅力を伝えるshujiworks手縫い革教室(シュウジワークス テヌイカワキョウシツ)手縫い革教室を主宰しています。「皮から革にする工程を一から学び、教室の生徒さん達に伝えたいという想いが猟師になったきっかけです。猟や森林保全に関わる中で、全国で鹿が一因となる社会問題の事や廃棄される鹿皮の多さを知りました」

そんな折にイタリアで開催される国際革展示会へと向かいます。その滞在中に思いがけない出会いが待っています。「友人の紹介によりパオロさんという羊皮紙を扱う職人に出会い、初めて羊皮紙に触れました。美しく魅力的な白さを持つ羊皮紙。その素材で作られた革では表現出来ない有機的な自然美を持つ作品たちに心が打たれました。そして鹿皮でも羊皮紙を作れないだろうかと考えるようになりました」

ニホンジカの皮の利活用率を高める可能性を持つ鹿皮紙

日本各地で深刻化する獣害問題。年々拡大するニホンジカの生息域と増加する被害額に対し、各地で捕獲による個体数調整が行われています。捕獲された個体の資源は未活用のまま多くが廃棄されている状況が続いています。それには理由がありました。
「捕獲された鹿から得られる「鹿皮」は、なめし加工を施すことで「鹿革」として活用されています。しかし、自然に生きる鹿皮の多くは傷や穴等があります。家畜として育てられていない鹿は年齢や生息環境も違うため皮の厚さや大きさもバラバラです。それが鹿革として活用する大きなハードルになります」とカワダさんは説明します。

この課題に対し、鹿皮紙プロジェクトのカワダさんは新しい解決策を提案しています。「鹿皮紙は、レザーには適さない薄くて傷のある皮でも十分に活用できます。小さなサイズでも付加価値の高い製品として生まれ変わります。レザーとして活用する際の多くは傷が無く大きく厚い皮を求められますが、鹿皮紙は皮が持つ自然のテクスチャーをそのまま活かして作られます。仕上がった個体差のある鹿皮紙を用途に合わせて分類し必要とされる場や人へ届けます」

いままではレザー以外に利活用が進んでいませんでしたが、鹿皮紙プロジェクトの提案は全国の鹿皮利活用の転換点となる可能性を秘めています。未利用資源を活用することで廃棄されるコストを削減し、新しい価値を創造します。それが地方創生にも繋がる可能性を感じさせてくれました。

研究開発期間を経て、鹿皮紙プロジェクトが動き出す

2015年から始動した鹿皮紙プロジェクトは長年に及ぶ研究開発期間を経て、近年はショールームを初め展示会や大学講義など鹿皮紙の可能性を広く伝える活動にも力を入れています。

鹿皮紙が持つ透過性を活かしたペンダントライト

初めて鹿皮紙という素材に触れそれぞれの経験を基に新しいアイデアが生まれる瞬間を間近で見ることができます。鹿皮紙から作った製品を見た方たちの反応からもこの素材の可能性を改めて実感しました.

鹿皮紙を素材として生み出された製品「鹿皮紙life-product」。
鹿皮紙で作られた製品たちは、ファッション分野以外にも照明や時計や壁掛けなどインテリアとして、カリグラフィーや絵画などのアート素材として、太鼓等の皮を張る楽器素材として今までにない鹿皮の利活用を示します。

開発者自らが来訪者と直接意見を交わし活かすこと、それがプロジェクトをより進化させる力になっていると感じました。

日本伝統芸能と鹿皮紙

2024年10月にカワダさんは三味線皮の製造販売をおこなう藤井楽器との共同開発により日本で初めて三味線用鹿皮の開発に成功します。
「三味線は、日本伝統芸能を代表する邦楽器です。鹿皮紙作りで培われた技術が日本の伝統芸能継承に貢献できることをとても嬉しく思います。日本で初めて三味線皮としてニホンジカの皮が活用されます。それによりまた新しい利活用が生まれ、楽器用皮としての可能性が広がりました」とカワダさんは笑みを浮かべます。

鹿皮紙を張ったアフリカ楽器のジャンベ

鹿皮紙プロジェクトのこれから

「鹿皮紙は自然に生きたニホンジカの皮を出来る限り手を加えず個体が持つ傷やしわなどの不均一さを魅力として捉えています。一頭一頭が違うのは当たり前であり、その中から一期一会の出会いを経て製品がユーザーの手に渡ります。現在、鹿皮紙や鹿皮紙で作られた製品とユーザーを結ぶシステムを構築しようと思案しています」カワダさんは語ります。

鹿皮紙をより身近に考えてもらえるように鹿皮紙を作るワークショップや鹿皮紙の活用を学ぶワークショップの企画を考えているそう。素材の製作や販売だけでなく、革モノ作り教室の経験を活かし次の活動にも繋げていくようです。

新素材 鹿皮紙が繋ぐ人々の好循環

「未利用資源の活用だけでなく、より良い未来のために何が出来るのか。獣害に困っている人たち、捕獲に携わる自治体や猟師たち、鹿皮を加工する人や製品を作る人や手に取る人たち、関わる全ての人たちが優しい未来を描き喜んでもらえる事がこのプロジェクトの理想の形です。その理想を現実にするために今日も活動に取り組んでいます」

鹿皮紙プロジェクトは、獣害を含む地域課題解決から地方創生へ、伝統芸能の継承、そしてより良い未来の創造を目指しています。今後も未利用資源であるニホンジカの皮活用が、人々の暮らしをどのように豊かにするか楽しみにしています。
毎月開催されるショールームでは、この新素材「鹿皮紙」の可能性を誰でも手に取って確かめることができます。WebサイトやInstagramからチェックしてみてください。

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鹿皮紙プロジェクト代表:カワダシュウジ
静岡県伊豆市出身
2010年 shujiworks手縫い革教室&工房主宰
2015年 鹿皮紙プロジェクト始動 / 狩猟免許取得
2021年 特許取得 第6974912号 鹿皮の羊皮紙の製造方法
2023年 ショールーム「鹿皮紙と無花果」Open、同年「鹿皮紙」商標登録
2024年 三味線用鹿皮開発

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【動画】日本の伝統的な「ジビエ料理」。是非、日本のレストランでジビエの美味しさを堪能してください! https://gibierto.jp/article/movie/14805/ Thu, 06 Feb 2025 08:00:41 +0000 https://gibierto.jp/?p=14805 日本の伝統的な「ジビエ料理」。是非、日本のレストランでジビエの美味しさを堪能してください!

 

海外の方へ向けた日本のジビエを紹介する動画です。

江戸時代にも食べられていたジビエ料理は日本の伝統的な食事です。
厳格に衛生を管理しているため状態の良いジビエが多くのレストランで、食べられます。
今回は、狩猟免許も持っているLatureの室田シェフに詳しくお話をお伺いさせていただきました。ぜひ、日本のジビエの美味しさを堪能してください!

▼取材協力先
LATURE | フレンチレストラン
https://www.lature.jp/

▼ジビエ利用拡大コーナー
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/index.html

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罠を仕掛けてジビエを食べる!早稲田大学狩り部の活動取材 https://gibierto.jp/article/beastdamage/damage_data/14811/ Thu, 06 Feb 2025 07:41:59 +0000 https://gibierto.jp/?p=14811 ジビエトでは、2024年10月24日、早稲田大学の岩井雪乃准教授のWAVOC特別講義「狩猟と獣害対策論1」にて、地域社会と自然環境との共生を目指し、持続可能な未来への一歩を模索する早稲田大学 狩り部の活動報告を取材しました。
今回は、その講義にて発表を行なった早稲田大学狩り部の活動を取材。早稲田大学 狩り部は、千葉県鴨川市にて獣害対策ボランティアを行う早稲田大学公認サークルで、箱罠やくくり罠の設置や獣害対策の勉強会、ジビエの料理会などを開催しています。

狩り部の活動場所は千葉県鴨川市にある「鴨川自然王国」。東京駅からバスを乗り継ぎ、現地へ向かいます。到着後、最初に行ったのは箱罠の解体でした。箱罠がある場所へ向かう道中で鹿の足跡を発見し、このエリアに鹿が来ていることを確認しました。

獣の痕跡を分析し罠を仕掛ける

畑近くに設置されていた箱罠は猪用の小型のもので、これまで何度も猪を捕獲してきましたが、最近は猪の痕跡が見られなくなり、罠を移動させるために箱罠を解体することになりました。箱罠は、箱型の構造の動物を捕獲するための罠です。中に入ると扉が閉じる仕組みで、主に鳥獣被害対策に使われます。

ポールを一本ずつ外し、埋まっている部分をスコップで掘り起こします。土が固まっていてスコップで少しずつ切り崩していく必要があり、剥がすには一苦労でした。

軽トラックに解体した箱罠を積み込み、次の設置場所へ向かいました。入り口部分の扉は特に重く、力を合わせて積み込みます。

設置場所に到着しました。ここは竹林に接した草地で、現在農業は行われていませんが、猪の出没が多いと地域住民から情報を得て、訪れることにしました。目撃情報の通り、草地には猪が掘り返した後が目立ちます。そこで、猪がどこから草地に入っているのかを確かめるため、地域の方と協力して獣道(けものみち)を探します。獣道とは、野生動物が移動する際にできた細い道のことです。動物が繰り返し通ることで、草や土が踏み固められて形成されます。

まずは解体した箱罠を設置します。金網のような人工物は猪に警戒されやすいため、罠の下面に土をかぶせてカモフラージュを施しました。その後、ポールを差し込み罠を固定します。

最後に入り口をワイヤーで吊し上げ、仕掛けが完成。動物がワイヤーに触れると扉が閉まり、捕獲が完了する仕組みです。

箱罠の中には米糠を撒き、外にもいくつか米糠の山を作って誘引します。これで設置作業は終了しました。

「箱罠を設置できて楽しかったです。構造はそれほど難しくありませんでしたが、完成した時には達成感がありました。」(狩り部・モクさん)

一方、箱罠部隊と別行動を取っていたメンバーは竹林と里山の間のバッファーゾーンで草刈りを実施。防護メガネと手袋を装着し、数人で手際よく草を刈り進めました。数時間前までは藪だった場所が、見違えるほどきれいになっています。開けた場所には猪が近寄りにくくなるため、草刈りも重要な鳥獣対策です。

作業中、くくり罠のワイヤーが切れているのが発見されました。これでは捕獲ができないため、罠を回収して修理することに。

罠を掘り起こし、木の枝を使って発動させました。

すると学生の1人が茂みの中からあるものを見つけてきました。
「薮でハクビシンの骨を見つけました。頭蓋骨と首の骨のようなものです」
小さな頭蓋骨は形を保ったままきれいに残っており、周囲の興味を集めました。こうした嬉しい拾い物も、ここではたくさんあるそうです。

もう一つのくくり罠も確認しようと藪の近くに来ました。すると近くに獣道が。罠を見ると空弾きしており、作動はしているが獲物はかかっていない状態でした。罠を掘り起こしましたが、こちらはワイヤーが切れてはいないようです。

ワイヤーが少し錆びており、滑りが悪くなっているとのこと。

滑りが悪くなると動物がくくり罠を踏んでから罠が作動するまでに時間がかかってしまうため、こちらも回収することになりました。

道の補修にも地域資源を使って

次に来たのは竹藪です。こちらでは、山道の補修に使う竹を調達するためにやってきました。ちょうどいい竹を見つけて、ノコで切っていきます。かなり力が必要な作業です。

根本を切って数人がかりで竹藪から引き出してきました。竹は数メートルの高さがあるため、物や人にぶつからないように引き出していきます。

軽トラックに乗せるために3〜4等分に分けていきます。端っこを持ち上げてもらいながら切ると刃が入りやすいというアドバイスを実践し、容量よく竹を切り分けていきます。帰り道では、仕掛けていた箱罠を確認します。

罠が作動している様子はありませんでしたが、撒いた米糠には足跡があり、猪が近くまで来たことが確認できました。

最後に、切り出した竹を使い山道を補修。水の流れを調整した後、竹を設置して固定し、ぬかるみを防ぎました。

獲って食べる唯一無二の体験

拠点に戻ると、お昼ご飯のいい香りが漂っています。バーベキューコンロでは猪肉と鹿肉を串に刺し焼いていました。

キッチンではカレーが完成していました。料理班が用意した料理を青空の下でいただき、串焼きは炭火の香ばしさが際立ち、カレーはブロック状のお肉が食べ応えたっぷり。

最後に、鴨川自然王国を運営するYaeさんにお話を伺いました。

「学生さんが拠点に来てくれることは本当に助かっています。里山には藪化してしまった場所がたくさんあり、開墾するのは非常に時間がかかります。私はここに住んでいますが、住んでいてもやり切れない部分を手伝ってくれるのはとてもありがたいです。こうした里山にリスペクトがある若い方が育ってくれると嬉しいです」

以前は人の生活圏にも出没していた猪ですが、学生たちが活動するようになってから姿を見かけなくなったとのこと。人と野生動物の境界線を作るためにも、こうした里山での活動が重要であると実感しました。

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■早稲田大学 狩り部

HP: https://wasedakaribu.wixsite.com/homepag

X: https://x.com/wasedakaribu

Instagram: https://www.instagram.com/wasedakaribu

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【動画】北海道 エゾシカの皮革活用への挑戦と想い https://gibierto.jp/article/movie/14165/ Tue, 04 Feb 2025 05:00:15 +0000 https://gibierto.jp/?p=14165

北海道の自然に生息するエゾシカ。適切な個体数管理と利活用が求められる中、肉以外の皮や角といった新たなエゾシカの皮革活用に取り組む、合同会社EZOPRODUCT代表の菊地さんにお話を伺いました。

▼取材協力先
EZOPRODUCT inc. (合同会社 EZOPRODUCT)
https://ezopro.com/

※「ジビエト」は、農林水産省令和6年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

#農林水産省 #ジビエ #鳥獣被害#サステイナブル #サステイナビリティ #SDGs #ジビエ利活用 #皮革 #エゾシカ

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横浜市開港記念会館で「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」を開催 https://gibierto.jp/article/movie/14985/ Mon, 03 Feb 2025 01:40:29 +0000 https://gibierto.jp/?p=14985

※このイベントは終了いたしました。

「家族でジビエを楽しく学ぶ」というコンセプトのもと、「ジビエト」では、2025年1月18日、横浜市開港記念会館で「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」を開催しました。子どもから大人までジビエを知り・味わう楽しい一日となりました。

イベント内容
・鵜沼明香里さんによる、紙芝居を使って森の動物クイズやジビエの歴史や利活用について子供たちに説明
・アップサイクルブランド「Recovery and Reload」宮本亮さん、栗原すみれさんによる、山に暮らす動物の生態を通じて「小田原の新しいジビエのかたち」についてのトークショー
・童謡歌手・井上かおりさんによる「みんなでうたおう!森のなかまたち」のステージ
・絵本の読み聞かせ
など楽しく学べる企画がいっぱい。

ジビエ満載のランチBOXや猪キーマカレーなど、ジビエの美味しさに触れる試食コーナーもあり、参加者の皆様に気軽にジビエを楽しんでいただきました。

▼ジビエのポータルサイト 「ジビエト」
https://gibierto.jp/
ジビエの飲食店やレシピ、革などを活用したショップ情報を紹介!

▼ジビエトInstagram
@gibierto

▼イベント協力先
NPO法人 チルドリン
https://www.child-rin.com/

アップサイクルブランド「Recovery and Reload」
@recovery_and_reload

※「ジビエト」は、農林水産省令和6年度鳥獣被害防止総合対策交付金(全国ジビエプロモーション事業)による支援を受けています

ジビエ利用拡大コーナー
https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/index.html

#農林水産省 #ジビエ #サステナブル #サスティナブル #ジビエdeキッズバレンタインパーティー #横浜市開港記念会館 #チルドリン #ジビエ利活用 #鳥獣被害

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現代の名工が手がける家庭的ジビエ料理が楽しめる「せんだんの木」 高知県高知市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/14136/ Wed, 29 Jan 2025 08:00:08 +0000 https://gibierto.jp/?p=14136

高知県高知市役所2階にある「せんだんの木」は、地元食材を活かした料理を提供し、高知の自然を守る試みを行っています。特に人気なのが、家庭的で親しみやすいジビエランチです。増えすぎた鹿や猪を活用し、地元の自然と食文化を支える役割を担っています。

高知の恵みを家庭料理で味わう~「せんだんの木」のジビエランチ

「せんだんの木」では、ジビエ料理を唐揚げやハンバーグ、カレーといった家庭的なメニューに取り入れ、誰でも気軽に楽しめるスタイルを追求しています。
市役所内の食堂と聞くと暗くて閉鎖的なイメージを持たれるかもしれませんが、「せんだんの木」はガラス張りで開放感あふれる空間が広がっています。120席もの座席を備え、晴れた日にはテラス席で食事を楽しむこともできます。職員だけでなく、一般の方や観光客も多く訪れ、気軽にジビエ料理を楽しめる場として親しまれています。

「鹿モモ肉から揚げランチ」(1,800円・税込)は、外はカリッと、中はジューシーで、鹿肉特有の繊細な風味がしっかりと感じられます。クセが少なく、ジビエ初心者にも抵抗なく食べてもらいやすい一品です。鹿モモ肉の程よい歯ごたえと旨味が引き出され、塩こうじに漬け込むことで肉を柔らかくし、高知県の生姜を使った下味が特有の臭みを消して肉の風味を一層引き立てています。まさに家庭料理として親しみやすいジビエ料理と言えるでしょう。

また、「鹿ハンバーグランチ」(1,700円・税込)はしっかりと肉の旨味が詰まっていながらも、低脂肪なため非常にさっぱりとした味わいです。ふわっとした食感でありながら、鹿肉ならではの深いコクが口いっぱいに広がります。ジビエ特有の臭みはなく、肉本来の甘みが楽しめる一品です。ジビエを初めて食べる方にも抵抗なく楽しめるバランスの良い料理です。

どのランチにもサラダ・選べる6種のお惣菜「6マスお惣菜」・高知県四万十町の名産「仁井田米」のご飯・お味噌汁がセットになっています。ご飯・スープはおかわり無料です![

高知商業高校のジビエ部と地元の未来を切り拓く

「せんだんの木」の特徴の一つが、高知商業高校ジビエ部との連携です。日本で唯一のジビエ部として活動しており、その存在もあって地元からの応援を集めています。市民や観光客の支援も増えつつあり、一食につき100円の寄付が集められ、地域の活動を支えています。
また、ジビエ部のメンバーがジビエ料理の提供に協力することで、彼女達の活動も広く知られるようになっています。高校生たちの柔軟な発想が新メニューの開発に役立っているほか、彼女達が関与することで応援の輪もとても広がっていると感じているようです。

夏休みなどを利用し、実際に厨房でジビエ料理の調理を手伝いながら、地域の食文化や自然環境への理解を深めています。「ジビエを通じて子どもたちに地域の食文化を知ってもらい、環境保護や食の大切さを伝えることが、長期的なジビエ普及に繋がる」という考え方は、島田 和幸(しまだ かずゆき)グランシェフもジビエ部も一致しています。こうした取組は、子ども食堂や地域イベントでも実践され、若い世代がジビエを自然な形で受け入れるための入口になっています。

また、高知商業高校の生徒たちと一緒に新メニューや季節限定メニューを開発する際、若い世代の柔軟な発想が料理に新たなアイデアをもたらしているそう。「頭が柔らかいので、自分たちが思いもよらないアイデアを出してくれる」と小松 陽一(こまつ よういち)マネージャーは笑顔で語ります。

自然と健康を守るジビエの力

島田グランシェフは「ジビエの魅力は、単に美味しいだけでなく、地域の自然を守り、人々の健康にも良い影響を与える点にある」と語ります。また、「鹿や猪が山を荒らすと、その影響は海にまで及ぶ。だからこそ、ジビエを食べることは自然を守りながら、同時に人々の健康も支えているんです」と強調します。ジビエは高タンパク・低カロリーで、特に鉄分が豊富なため、女性や健康志向の方にぴったりです。こうした方々にジビエを届けるための取組も行われています。

「せんだんの木」では、高知の名産品との組み合わせを大切にしており、「生生姜やトマト、ゆずといった柑橘系の自然な食材は、ジビエとの相性が抜群」と小松マネージャーは語ります。これからも高知の特産品を活かした新メニューを積極的に開発していく予定で、特にフィンガーフードのように手軽に食べられるものや、子どもでも楽しめるメニューを考案していきたいとのこと。島田グランシェフは「よくある敷居の高いジビエメニューではなく、家庭的で地元の特産品を生かした料理を提供したい」と、新たなチャレンジに意欲的です。

「現代の名工」の技を日常で味わう贅沢

「せんだんの木」の島田 和幸(しまだ かずゆき)グランシェフは、「現代の名工」に選ばれるほどの卓越した技術と豊富な経験を持ちながら、誰もが気軽にジビエ料理を楽しめる場所として、市役所のレストランを監修しています。天皇陛下に2,000人分の料理を提供した実績を持つシェフの料理を、普段の生活の中で楽しめるという贅沢さは、「せんだんの木」ならではの特別な体験です。

島田グランシェフは「どんな方にもおいしい食を提供できるレストランであること。限られた人だけでなく、色々な人に食べてもらうこと、それが料理人としての本来の姿だ」と語ります。この信念のもと、家庭的で親しみやすい料理を提供しつつ、一流の技術を惜しみなく発揮しています。
ガラス張りの開放的な空間で、四季折々の景色を楽しみながら、ジビエという少し特別な素材を用いた料理が、誰にでも親しみやすい形で提供される。それが「せんだんの木」の魅力です。シェフのこだわりと地域との強い連携によって、ジビエが地域の日常の食卓に広がりつつあります。

これからも、島田グランシェフは「新しい挑戦を続けていく」と言います。高知の豊かな自然を守りながら、体に優しいジビエ料理を提供する「せんだんの木」で、その味とシェフの想いをぜひ体験してみてください。「まっことおいしいぜよ!」

 

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ジビエ料理がいただける本当は教えたくない隠れ家ビストロ「THE SHED Espresso&Wine(ザ・シェッド エスプレッソ&ワイン)」東京都世田谷区 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/14083/ Mon, 27 Jan 2025 02:00:19 +0000 https://gibierto.jp/?p=14083

世田谷の上野毛駅から環八通りを10分ほど歩き、246号線に交差する一本手前の道を右に入ると、そこは閑静な住宅街。しばらく進んでいくと住宅に馴染むように「THE SHED Espresso&Wine」が見えてきます。2023年10月にオープンしたこのお店では、お酒が進む様々なジビエ創作料理がいただけます。

ガレージからビストロへ。趣味と夢が詰まった空間

オーナーシェフの山本 恭平(やまもと きょうへい)さんは九州のご出身。仕事の関係で以前から知り合いだった東京に住むマンションオーナー様の趣味であるクラシックカーのガレージだった場所をご好意あってお店をオープンする運びとなりました。

オーナーさんが高齢となり、「車を手放すので1階で何か始めてみないか」という話が持ち上がったことが、山本さんがこのお店を始めるきっかけとなりました。
「駅前や大きい通り沿いにお店を出すところも多いですが、場所ありきで始めたので、隠れ家的なお店にしたかった。元々はオーナーの趣味のガレージだったので、男のロマンを詰め込んだようなお店になればと思って…」と山本さん。その思いが表れているのが、手作りのテーブル。山本さん自らがお店オープンの前から、このガレージで一から作り上げたのだそう。

「THE SHED Espresso&Wine」では、料理のジャンルにとらわれず、オーナーシェフの山本さんが美味しいと思う創作料理を提供しています。「色々な料理やお酒をお客様に楽しんでもらいたい。だからビストロにしました。」と楽しそうな山本さん。その思いのとおり、ジビエ料理もバリエーションにとんでいました。

目の前で燃える「鹿肉の焚火ジャーキー」

最初の一杯に最適な「鹿肉の焚火ジャーキー(900円・税込)」。ビールはもちろんのこと、ジビエ料理としては珍しく白ワインとの相性も抜群なのだそう。鹿の赤身の部位をオーブンで1時間ほど低温調理し、冷凍庫で3日ほど乾燥させたシェフ自家製のジャーキー。テーブルに運ばれたジャーキーにスピリタス(ウォッカ)をかけ、バーナーで火をつけると、香ばしさが一気に広がります。レモン果汁で消火していただくと、鼻に抜ける燻製と柑橘の香りに包まれ、鹿肉の歯ごたえが食欲を刺激します。

3種を食べ比べてみたい「選べるジビエソーセージ」

次にご紹介するのは「選べるジビエソーセージ(1本760円・税込)」。イノシシ・シカ・クマの3種類のソーセージ。今回は3種を盛り合わせていただきました。フライパンで表面をカリっと焼きつけた後に、蒸し焼きにして仕上げています。葉山の自然豊かな山で栽培した新鮮なお野菜の付け合わせとともにいただけます。
シカ肉は柔らかくやさしいお味、イノシシ肉は歯ごたえがあり、中はジューシー。クマ肉は野性味があり、ジビエ感をしっかりと味わえます。

滑らかで濃厚な「鹿肉のカルパッチョ」

赤ワイン好きにはぜひ食していただきたいひと皿「鹿肉のカルパッチョ(1,780円・税込)」。1時間半ほど、じっくり低温調理した鹿肉を薄くスライスし、ガーリックマヨネーズを広げた上にのせます。オリーブオイルやスパイス、西洋わさび、クコの実などを散らして完成。口に運ぶと、まずその舌触りの滑らかさに驚き、肉の濃厚さとクコの実のアクセントが合わさって、前菜ながら満足度の高い一品に仕上がっています。

田舎育ちにとってジビエは身近で大切な存在

子ども時代を宮崎県で過ごした山本さんにとって、ジビエはとても身近な食材だったそう。今でも強烈に覚えているのが、小学生の頃、おばあちゃんの家で食べた鹿肉。子どもながらに美味しすぎて感動したと言います。近所では、おじちゃんたちが猪を解体していたり、田舎ではジビエは身近な存在だったそうです。
大人になってから、鳥獣被害の問題を知り、中には殺処分されて山に埋められてしまう猪などもいると知った山本さんは、「こんなに美味しいのだから、もっとみんなにジビエを知ってもらいたい」と思っていました。そんな折、ビストロを始めることとなり、ジビエ料理を多数提供するようになったそうです。「ジビエは確かに美味しいけど、信頼できる仲介業者から仕入れることが大切だと思っています」と山本さん。

「THE SHED Espresso&Wine」は、ジビエ専門市場「ジビエマルシェ」を運営するワイルドライフを通して、山本さんの出身地である宮崎県をはじめ、山梨県や長野県のジビエを仕入れているのだそう。

ひと口サイズなのにボリューム感たっぷり「ジビエミートボールのトマトハーブ煮込み」

お酒の肴にも、軽めのメインとしてもいただける「ジビエミートボールのトマトハーブ煮込み(980円・税込)」。シカ肉とイノシシ肉の合い挽きミートボールを、ハーブとニンニクが効いたトマトで煮込んだ一品。トマトの酸味とハーブの香りとともに、ジューシーで歯ごたえのあるジビエがお腹を満たしてくれます。

これぞジビエディナーのメイン「鹿肉のハンバーグ」

ディナーのメイン料理としてしっかりとジビエをいただきたい時は「鹿肉のハンバーグ(1,600円・税込)」がおすすめ。フライパンで焼き色を付けてから、オーブンで中まで火入れをして仕上げています。ジビエソーセージ同様、葉山の新鮮野菜とともに盛り付けられたハンバーグ。ナイフを入れると柔らかいのに、弾力もあり、肉汁がとろりと出てきます。臭みも一切なく、肉感を存分に味わえるひと皿です。

今宵はスペシャルなジビエを食したい「ジビエロースト~グリル野菜添え」

ジビエ肉本来の美味しさを存分に堪能したいときは「ジビエロースト~グリル野菜添え
(2人前)」を注文したい。「鹿肉のロースト(3,680円・税込)」「猪肉のロースト(3,980円・税込)」の2種類から選べます。今回は撮影用に2種類を一皿に盛り付けていただきました。塩で下味をつけたヒレ肉の表面をフライパンで焼き、オーブンでロースト。絶妙な火入れにより、お肉のジューシーさを閉じ込めていきます。シカ肉はさっぱりとした味わい、イノシシ肉はほどよい脂が感じられ、お肉感を楽しめます。どちらも鼻に抜けるよい香りが印象的。「処理施設で手早く血抜きをされた鮮度の高い鹿や猪は、元々、山奥で美味しい木の実をたくさん食べて育っています。そのため臭みが全くないのはもちろんのこと、むしろよい香りがするのだと思います」と山本さん。「THE SHED Espresso&Wine」では、ナチュラルワインをはじめ、クラシックワインも数多く取り揃えています。ゆったりと過ごしたい夜に、好みのワインとともにジビエローストを味わうのはいかがでしょうか。

大人から子どもまで地元の人に愛される店

今回ご紹介したジビエ料理以外にも、オープン当初から人気の「鹿肉のボロネーゼ(1,480円・税込)などもあり、お子さんにも好評だそう。毎日のようにランチに訪れる高齢のご夫婦、ディナーには恋人同士やファミリー、テラス席もあるので、気候がよい時期は散歩途中の方が犬を連れてモーニングをとる姿も。「THE SHED Espresso&Wine」では、あらゆる世代のお客様が料理やお酒を楽しんでいるといいます。

カウンター席では、山本さんの奥様である綾子(あやこ)さんが、休日や仕事帰りなどに、お一人でいらしたお客様にお酒などを提供しています。「たまたま席がお隣になったお客様同士で話が盛り上がったり、もちろん私もお客様とおしゃべりに花を咲かせることもあります。休日の午前中からワインを楽しんでいる方もいらっしゃいますよ」。そう話してくださる綾子さんの素敵な笑顔に癒されるお客様も少なくないのでは。

 

お客様にもっと喜んでいただきたいと、日々新しい料理やイベントを考えている山本さん。「ピザ窯を入れたので、今後は生地から手作りした焼きたてのピザを提供していきたいなと。ジビエの挽肉を使ったピザも考えています。店内にモニターも付けたので、スポーツ観戦をしながら料理を囲むイベントなどもいいですよね」と夢を語っていただきました。

 

「THE SHED Espresso&Wine」では、ジビエ料理をはじめ様々なお料理のテイクアウトもできるので、在宅ワークのランチ使いや家で過ごしたい時のお食事として利用してみても。「中には犬のお散歩中に訪れて注文をし、散歩帰りにお料理を取りに来るというお客様もいらっしゃいます」と山本さん。テイクアウトメニューのお問い合わせや注文は電話でも受け付けているそうです。

地元のお客様が多い「THE SHED Espresso&Wine」ですが、最近は口コミやInstagramを見て訪れるお客様も増えてきたとか。「メニューの中にジビエ料理が他の料理と並んで多数あるので、『どんな感じ?』って聞かれることがあるんです。美味しいから一度食べてみてくださいって勧めると、間違いなく驚きと感動がかえってくる。そしてリピート率が高い。忙し過ぎて時間が足りないって思うこともあるけど、自分が本当に美味しいと思っているものを食べてもらえて、さらに生産者さんたちにも喜んでもらえる。料理人としてのロマンですね」と話してくれました。

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山梨の豊かな自然が育むジビエと食材巡る産地見学ツアー https://gibierto.jp/article/event/14107/ Wed, 22 Jan 2025 08:00:42 +0000 https://gibierto.jp/?p=14107 2024年11月に山梨県にて、エシカル農畜産物の産地見学ツアーが開催されました。東京都内からも近く、足の運びやすい山梨県ですが、そこには人と自然が共生する美しい景観が広がっていました。山梨県で生産されるジビエや農産物について、生産者の方々や地場食材を用いたレストランの方々にお話を伺いました。

当日の参加者は、都内の料理人やメディア関係者合計17名。山梨県のエシカルな食材への期待に胸を膨らませ、ツアーはスタートしました。

「八ヶ岳ジビエ」が届ける高品質な鹿肉の秘密

当日、まず訪れたのは「八ヶ岳ジビエ」の明野ジビエ肉処理加工施設。山梨県は、県内で適切な衛生管理・処理を行なっている鹿専門の処理加工施設を、やまなしジビエ認定施設(現在5か所)として、指定しています。また、その認定施設で認定基準を満たした鹿の肉を「やまなしジビエ」として認証しています。

今回は、鹿の搬入から解体、製品化までを行う明野ジビエ処理加工施設を見学し、「八ヶ岳ジビエ」の五味 誠(ごみ まこと)さん、舞(まい)さんから、お話を伺いました。

「八ヶ岳ジビエ」の取り扱う鹿肉の魅力は、北杜(ほくと)市の山々の恵みを受けた濃い味と臭みのなさです。仕入れ先からも高い評判を得ている「八ヶ岳ジビエ」の鹿肉の秘密は、五味夫妻がこだわり抜いた下処理にあります。

まず一つ目のこだわりは、北杜市内の鹿を運搬する車にあります。鮮度を保つために保冷車で向かい、五味さんが直々に鹿を捕まえ、食材に臭みを残さないように、放血(血抜き)をします。

二つ目のこだわりは、捕獲後2時間以内に終わらせる前処理の早さです。前処理とは、放血のほか、鹿の体重の計測や洗浄、内臓の処理、皮の処理などを指します。北杜市内で鹿を捕らえた場合は、放血をした後、明野ジビエ処理加工施設までの所要時間は約20分。その後に行う前処理の所要時間は約30分です。鹿肉の味を決めるこの行程は、可能な限り早く対応することで、高い鮮度を保つ工夫をしています。

また、前処理が終わった鹿肉は、専用の冷蔵庫で3、4日ほど熟成させることで旨みを引き出しています。このような工夫も、味の濃さについて高い評価が得られる要因の一つでしょう。

前処理の解説を終えると五味さんは、冷凍の鹿肉を出してくださり、私たち参加者に「八ヶ岳ジビエ」の取り扱う鹿肉を見せてくれました。出していただいた部位は、ロース、ヒレ肉、モモ肉です。
ロースはローストに、ヒレ肉はヒレカツに、モモ肉は煮込み料理に使われることが多く、山梨県内のホテルや飲食店での取り扱いが多いそうです。

また、鹿の個体という点でも、「八ヶ岳ジビエ」には大きなこだわりがあります。
鹿の個体差がある中でも、五味さん夫妻は、一定の高品質な鹿肉を皆さんに届けたいという気持ちが強くありました。そこで、実際に発送する鹿肉は、五味さん夫妻が自信をもって届けられるもののみを選別しています。人用に使えないと判断したものは、ペット用の加工をすることで、無駄なく使っています。
「八ヶ岳ジビエ」のこだわりがたくさん見えた見学。本ツアー内でも、ぜひ使ってみたいという声があり、飲食店関係者の方々の興味を大きく引いた内容となりました。

富士山と葡萄畑を望むレストランで出会う、山梨食材と地ワインの饗宴

次に訪れたのは、韮崎(にらさき)市に位置する、葡萄畑に囲まれたフレンチレストラン「La Cueillette(キュイエット)」です。山梨県産食材やヨーロッパを中心とした各地から仕入れる厳選された家禽類・甲殻類を使った料理を提供しています。生産者との対話から、素材の持ち味と魅力を存分に引き出すのは、山田 真治(やまだ しんじ)シェフです。

「La Cueillette」の立地は、山田シェフも自慢のロケーションで、葡萄畑が広がる光景はシェフが修行されていたフランスの片田舎の景色を想起させます。葡萄畑越しに見事な富士山を眺めつつ、今回は、「やまなしジビエ」、有機野菜をはじめとした県産食材を使った特別コースに、山梨の地ワインを合わせていただきました。

 

最初に運ばれてきたのは、八ヶ岳湧水マスと富士川町産の柚子、リンゴを使ったお料理。横に添えられたレモンのピューレは、近年山梨県で有機栽培が開始されたレモンが使われています。
一口大にナイフとフォークで切り分け、口に運ぶと、新鮮なマスの旨みをフルーツの酸味が程よく引き立てます。
一品目に合わせたワインは、セブンシダーズ・ワイナリーの「甲州スパークリング2022」です。熟した後も、酸味が下がらない甲州種を使っているため、フロマージュブランムースのクリーミーさと調和します。

次に運ばれてきたのは、「八ヶ岳ジビエ」の鹿肉、山梨県産のカルガモ、雉を使ったジビエのパテです。パテの上には、雉、鹿、鳩といったジビエからとったコンソメゼリーがのっています。さらに、甘みの強いあんぽ柿が合わさり、パテにもマッチしています。また、この後に伺う予定の「畑山農場」の紫大根も使われています。
パテはジビエの臭みが全くなく、肉の旨みを感じる匠の一品でした。また、フルーツはもちろん、マスタードや山梨県産のバルサミコ酢とも合い、一口食べるごとにさまざまな表情が見えたのが、印象的でした。
今回合わせたワインは、ダイヤモンド酒造の「シャンテ Y.A vrille 2014」。18か月熟成による深みや甘さを感じる香りが、パテとも相性抜群でした。

三品目は、名水赤鶏のコンフィ、エシカルな食材の一つである黒富士農場放牧卵の温泉卵、八ヶ岳野菜のブルーテの燻製です。胡桃チップの燻煙を閉じ込めた蓋を開けると、ツアー参加者からの期待の声が上がりました。

名水赤鶏は、八ヶ岳で独自の飼育方法で育った鶏で、柔らかさに定評のある食材です。また、黒富士農場は、「やまなしアニマルウェルフェア」認証を受けており、「美味しい卵は健康で元気な鶏から」という想いから、鶏を放牧して育てている農場です。アニマルウェルフェアとは、家畜の誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なくし、行動要求が満たされた健康的な生活ができる飼育方法を目指す考え方です。

また、八ヶ岳野菜ブルーテに使われている玉ねぎは、この後訪問予定の「ファーマン」のものを、カブと大根は「畑山農場」のものを使用しています。

鶏の旨み、放牧卵の濃厚さ、野菜のほのかな苦みによって、口の中がまろやかに調和していきました。ブルーテには、とろけた卵黄、鶏と野菜の旨みがしみ出し、パンをつけて食べると絶品でした。また、シャトー・マルスの「穂坂日之城シャルドネ2022」を合わせ、フレッシュな酸がまろやかな口の中をリフレッシュさせてくれました。

そして、本日のメインディッシュ、「八ヶ岳ジビエ」の鹿肉のローストが運ばれてきました。香茸や、穂坂町産セミドライ葡萄と赤ワインのソースの香りが食欲をそそります。鹿肉にナイフを入れると、綺麗な赤みが見えました。旨みのある鹿肉と甘さのあるソースは相性がぴったり。また、葡萄の皮の渋みと鹿肉の少ない脂が持つ甘みの調和も素晴らしい味わいです。

こちらのマリアージュは、中央葡萄種の「あけの 2021」。メルロー主体のワインが持つ自然な風味が、鹿肉のしっかりとした旨みに寄り添います。また、フレンチオークで熟成させた樽感も、より相性を良くしている印象を受けました。

最後に運ばれてきたのは、デザートの富士川町産洋梨キャラメリゼ、アニス風味のグラス(アイスクリーム)やチョコレートなどがのったお皿。そこにさらに濃厚なキャラメルソースをかけていきます。洋梨は完熟したものを使っており、キャラメリゼのほのかな苦みが洋梨の甘さを引き立てます。また、ブラックチョコレートやグラスなど、甘さと苦さのグラデーションを1枚の皿の上で味わえる、印象深いデザートでした。
ペアリングは、サントリー登美の丘ワイナリーの「貴腐 2012」。上品な香りと甘さが、デザートの甘さと苦さと共に溶け合い、貴腐ワインがあって、完成する一皿だと感じたマリアージュを楽しみました。

最後に、本コースを提供くださった、山田シェフに山梨県の食材、特にジビエの魅力を伺いました。
「山梨県は、都内からこれだけ近いにもかかわらず、自然がたくさん残っています。ジビエに関しましては、山梨県の実りある豊かな大地に育まれ、通年美味しい食材が手に入るという魅力があります。さらに、鹿肉の安全・安心を担保する県独自の『やまなしジビエ認証制度』を設け、衛生的で安全なお肉が食べられることも魅力です。そういった取り組みからジビエを取り扱う方はもちろん、農家さんも有機栽培をされるなど、本当に熱心な作り手が多いのが、山梨県の魅力ですね。」
山田シェフ曰く、そういった作り手の姿勢は食材を通して、見えてくるそうです。熱意のある方々によって育てられた食材に、技術と想いを込められた料理。そして、ワインまでこだわり抜いた絶品フレンチでした。
参加者も実際に作り手の顔を見ることや、食材に関する情報を得てから味わったことで、この美味しさには作り手、そして山田シェフの想いが詰まっていることを再認識できた機会となりました。

有機JAS認証

続いて、有機JAS認証を受けている「畑山農場」、「株式会社ファーマン」へ。
有機農業は化学的に合成された肥料および農薬を使用しないこと、並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業のことをいいます。JAS法に基づき、「有機JAS」に適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、その結果、認証された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。

自然の摂理を活かす畑山農場の野菜作りとその美味しさ

有機栽培×循環型堆肥×自家採種を実施されている畑山農場では、約4ヘクタールの耕作面積で、年間約40品目の野菜を栽培しています。

農場主の畑山 貴宏(はたやま たかひろ)さんのこだわりは、なるべくおいしく元気な野菜をお客様に届けること。そのために、使用する肥料も自然の摂理に沿った仕組みを考えています。例えば、動物性の堆肥を使用する際には、動物のエサに着目をします。エサが有機物で、自然のものが多いと、土の中で微生物によってゆっくりと堆肥が分解されていきます。その微生物の死骸が、野菜にとっては肥料となり、吸収されていきます。このように時間をかけ育てると、野菜の味や栄養価が高くなるという分析結果も出ています。畑山さんも時間をかけ、自然の摂理に則った栽培を目指しています。

実際に畑に生えているわさび菜と小松菜を、私たちも畑でいただきました。味付けをしていない状態でも、野菜の味がしっかりとついており、畑山さんのこだわりが野菜を通して見えてきたように感じました。参加者の方々も野菜の味わいに驚き、美味しさを絶賛していました。

農業に新たな価値を。「農業×X」で創る未来

「ファーマン」の井上 能孝(いのうえ よしたか)さんからは、農業の推進と共に、新たな付加価値を生み出す活動について、教えていただきました。井上さんが抱える事業のうち、有機野菜の生産・加工・販売を「ファーマン」がしており、年間で約30品目を生産しています。また、「合同会社樹」では、宿泊・体験の提供をしており、今回話を伺った建物、「AICAFEFARM(アイカフェファーム)」で実際にサービスを提供しているそうです。

体験のサービスとしては、宿泊施設の前に広がる畑から収穫した野菜を、自分で調理したり、シェフに調理を依頼したりすることができます。

井上さんが意識していることは、農業を盛り上げていくことです。しかし、これまでの方法だけでは担い手が少なくなっていく将来、農業を魅力ある産業として見せることは難しいと感じていました。
そこで、高付加価値で都市部の方から求められるようなことを、地方で実現することをコンセプトとして、農業にさまざまな分野を掛け合わせた事業を展開しています。

野菜を集めて出荷拠点とする施設を作成中とのことで、施設にはソーラーパネルが貼り付けられ、停電等のトラブルで電気供給が遮断されてしまった場合にも、自家発電で持続的に電気の使用ができるように進めています。

「AICAFEFARM」のほかにも、廃校をリノベーションして、学校や会社の研修所としても使えるような事業も進めています。井上さんは農業を盛り上げるため、さまざまな観点から「農業×X」を叶え、農業の魅力を底上げし、子供たちに憧れを持ってもらえる職業にしたいと考えています。

エシカルが息づく山梨で、山梨のこだわり食材を巡る旅

今回の山梨県の産地見学ツアーでは、「八ヶ岳ジビエ」、「La Cueillette」、「畑山農場」、「ファーマン」の見学を通して、食材にかけるこだわり・熱意や、その食材を生かす技術、そして将来にこの魅力を伝える試みに触れることができました。

山梨は環境問題や社会問題に配慮し、より良い社会の実現を目指す「エシカル」な食材に力を入れています。今回、話を伺うことのできた「やまなしジビエ」や「やまなしアニマルウェルフェア」などのほかに、農業分野から脱炭素社会の実現を目指す取り組みである「4パーミル・イニシアチブ」などにも取り組んでいます。
自然のおいしさがたっぷり詰まった山梨の食材に、ぜひみなさんも触れてみてください。

 

■山梨県のエシカルな取り組みと産業
おいしい未来へ やまなし
https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/
オンラインショップ
https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/ecsite_ichiran.html
4パーミル・イニシアチブについて
https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/contents/sustainable/4permille.html
やまなしジビエ
https://www.pref.yamanashi.jp/oishii-mirai/contents/rich_environment/gibier.html
やまなしアニマルウェルフェア
https://www.pref.yamanashi.jp/chikusan/yamanashiaw.html

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【動物園で広がると体給餌の取組】飼育動物の野生に近いお食事タイム https://gibierto.jp/article/movie/14052/ Thu, 09 Jan 2025 05:09:56 +0000 https://gibierto.jp/?p=14052 野生に近いワイルドなお食事タイム(と体給餌)が見れる動画はこちら!

▼取材協力先 :愛知県豊橋市「豊橋総合動植物公園のんほいパーク」 、千葉県千葉市「千葉市動物公園」

「と体給餌」とは?
と畜(とちく ※家畜などを食肉・皮革などにするために殺すこと)した動物を、毛や皮、骨が付いたままの野生本来に近い状態で飼育動物に与える給餌方法のこと。欧米の動物園では、「環境エンリッチメント」(※動物福祉の観点から飼育動物の“幸福な暮らし”を実現するための方法)の考えのもと、自然に近い採食を再現する取組として実施されてきました。

日本では、野生鳥獣による農作物被害が全国で問題となっているなか、捕獲された個体のうちジビエとして流通するのは、まだわずか。捕獲した野生鳥獣の活用を進める取組の一つとして、動物園・水族館での「と体給餌(とたいきゅうじ)」が注目されています。

 

 

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ジビエト×NPO法人チルドリンコラボイベント「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」1/18(土)に開催 https://gibierto.jp/article/event/14041/ Thu, 09 Jan 2025 03:30:38 +0000 https://gibierto.jp/?p=14041

このイベントは終了いたしました。

1/18(土)横浜市にある横浜市開港記念会館にてジビエト×NPO法人チルドリンコラボイベント「ジビエdeキッズバレンタインパーティー」を開催されました。

ご家族みんなでお楽しみいただける内容となっておりますので、皆様のご参加をお待ちしております!(参加費無料/予約制)

https://www.child-rin.com/note/6153/

(外部サイトに移動します。)

 

〈出展ブース紹介〉

1.アンケートご回答でステキなアイテムをプレゼント!
アンケートにご協力いただいた方に小田原の鹿の皮で作ったキーホルダーをプレゼント!(なくなり次第終了)

 

2.ジビエ試食コーナー
試食提供:TSUBAKI食堂/情報提供:さとやまハンター合同会社

 

ジビエの食べ方の提案として、今回は鹿のお肉の試食コーナーをご用意!いろいろなジビエ料理を是非ご賞味ください。
ご家庭でも作れるレシピになっているので食卓にジビエを取り入れてみませんか?

3.お話『昔から日本に暮らす動物たち』/『小田原の新しいジビエのかたち』
登壇者:鵜沼明香里氏/宮本 亮さん&栗原 すみれさん

 

親子で参加できる動物クイズや、命の大切さを学べる紙芝居「日本に昔から住む動物たち」「どうやって鹿肉を食べるの?」を披露!
また、現役ハンターによる狩猟についてのお話や、鹿肉、猪肉の栄養素など魅力を語っていただきます。

4.みんなでうたおう!森のなかまたち
登壇者:井上かおり氏

 

童謡歌手の井上かおりさんをお迎えしたステージ「大切な森の仲間たち」をテーマにみんなでジビエの森を満喫しよう♪

その他、鹿革を使用したワークショップやジビエに合う食材のご提案などもご用意予定!
是非この機会にジビエについて楽しくおいしく触れてみませんか?
(出展ブース、ステージ内容は変更となる可能性がございます)

 

 

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鹿肉ってこんなに美味しいの!と驚かれた家庭的なジビエが味わえる「猿田彦BASE」三重県鈴鹿市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/14008/ Thu, 19 Dec 2024 08:00:19 +0000 https://gibierto.jp/?p=14008

三重県鈴鹿市といえば「モータースポーツ」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実は、鈴鹿市は東に伊勢湾、西に鈴鹿山脈と、自然に恵まれた場所でもあります。その鈴鹿山脈の麓には、「みちひらきの神様」として知られる猿田彦大神(さるたひこおおかみ)の総本宮である椿大神社(つばきおおかみやしろ)が鎮座しています。全国から参拝者が訪れる椿大神社から車で3分ほどの場所、鈴鹿市小岐須町にあるのが、今回紹介する「猿田彦BASE」です。

「猿田彦BASE」は、「空間を楽しむ」「山を味わう」「自然を体験する」という3つの楽しみ方を提供しています。敷地内でキャンプやイベントを楽しめるほか、鈴鹿山脈の恵みをいただくジビエ料理や、観光農園でのブルーベリー収穫体験を楽しむことができます。

作物の大半を失って気づいたのは「この環境にあるものを生かすこと」

代表取締役の伊藤 嘉晃(いとう よしてる)さん(写真中央)は元警察官。「大自然の中でのびのびと働きたい」と、鈴鹿市に移住。2021年に農業法人を設立しました。ブルーベリーや生姜、ニンニクなどを栽培しますが、さまざまな困難に遭遇します。

取得した農地は野菜の栽培には適さない石だらけの土地。「それならば」とハウス栽培を試みたものの、山から吹き下ろされる強風や冬の積雪でハウスは倒壊してしまいました。やっとの思いで育てた生姜も、鹿たちが新芽を一晩で食べつくし、茎だけの状態に…。

「この小岐須町で農業をするのは無理なのではないか」と途方に暮れますが、伊藤さんには強い想いがありました。それは高齢化が進んで地場の産業が衰退し、農地の手入れも山林の整備もままならない状態になっている小岐須町を何とかしたいという想いです。

「私は小岐須という場所を愛しているから、高齢化が進んで限界集落になっていくのではなく、『限界突破集落』にしたかったのです。そのためにはここに産業が必要です。そのとっかかりとしてジビエは地元の資源を生かした産業になり得ると思いました。私たちと同じように、鹿の食害に悩んでいる農家の人たちの役に立つこともできます」

捕獲、解体、調理のすべてを自分の手でできるのが強み

自分たちで捕獲した鹿の肉を使った料理を提供するには、解体処理する施設が必要です。そこで、敷地内にある建物を改築することにしました。クラウドファンディングで改築費用の一部を募り、2023年11月、処理施設「猿田彦山肉工房」がオープンしました。「猿田彦BASE」では、この工房で精肉したものを提供しています。

「猿田彦BASE」で提供される鹿肉は、捕獲から解体処理、加工、調理に至るまで、三重県が独自に定めた厳しい基準を定めたマニュアルに従って取り扱われたものとして、「みえジビエ」の認証を受けています。十分に血抜きされ、捕獲から60分以内に解体されるため、臭みのないのが特徴です。

ジビエの特徴は個体差があること。同じ場所で捕獲された鹿でも、食べたものの違い、年齢の違いなどにより、肉質が違うそうです。

シェフの大竹 英臣(おおたけ ひでおみ)さんは、「自分で捕獲した鹿を実際に自分の手でさばき、肉質を見極めて自分で料理して出すことができる。これが我々の強みですね」と言います。

日常の「家庭料理」として気軽に食べられるジビエ料理を提供したい

提供するメニューのベースになっているのは、大竹さん自身が育ってきた家庭の味です。

「凝った料理になってしまうと、ジビエ料理は『珍しいもの』『敷居の高いもの』になってしまいます。から揚げ、カレーやハンバーガーのように、皆が日常的に食べているもののほうが、ジビエを身近に感じてもらえると考えました」

地元のお祭りでジビエ料理を提供したとき、「鹿肉って、こんなにおいしかったんですね!」と驚き、そのあと店に鹿肉を買いに来てくれるようになったお客様もいるそうです。

「鹿肉は普通の食材として扱えることをもっと広めていきたい。今度はボロネーゼをメニューに加えようと考えています」と、大竹さんはメニュー開発にも余念がありません。

あっさりしているからいくらでも食べられる「鹿肉のから揚げ」

カフェで一番人気のメニューは、「鹿肉のから揚げ」(800円・税込)です。

鹿肉は加熱しすぎると硬くなってしまうので、できるだけ早く火が通るよう、肉は厚さ4~5mmの削ぎ切りにしているそうです。外モモ、内モモ、シンタマの各部位を使っているので、食感の違いも楽しめます。

「鹿肉こそから揚げだなと思いましたね。鹿肉は脂質の少なさが、揚げ物に合います」と大竹さん。味はしっかりしているのにあっさりしていて、いくらでも食べられます。

ご飯にから揚げをのせた「鹿肉から揚げ丼」(1,200円・税込)も人気のメニューです。

ホロホロとした食感の鹿肉がたっぷり味わえる「ジビエ鹿カレー」

スネ肉をメインにバラ、カタを加えてじっくり煮込んだ「ジビエ鹿カレー」(1,000円・税込)は、コンビーフのようなホロホロとした食感が特徴です。

「肉がゴロゴロしているほうが見栄えはいいのですが、スネ肉以外は肉の形を残すと、硬くなって口に残ってしまいます。ホロホロにして完全にルーに溶け込んでいるほうが、おいしく召し上がっていただけると思います」

20人前で1.5kgの肉を使用しているというだけあって、ボリュームもたっぷり。

肉もタマネギも完全にルーに溶け込んでいますが、よく見ると小さな赤い具が見えます。

「それは、パプリカです。少しだけ彩りが欲しいと思って入れました。ニンジンは煮込むうちに溶けてしまいますが、パプリカは形が残ります。そのうえ、香草のような感じも出て、彩りと香りをプラスすることができました」

肉々しさを追い求めたハンバーグが絶品!「ジビエ鹿ハンバーガー」

3品目は、「小岐須バーガー(ジビエ鹿ハンバーガー)」(1,200円・税込)です。

ハンバーグに使うミンチ肉の配合には、試行錯誤を重ねたとのこと。「肉々しさを出したくて、スネ肉を若干入れた」と言うとおり、ジューシーなのにしっかりした歯ごたえがアクセントになっています。

ハンバーガーをひと口頬張ると、ゴロっと厚みのあるハンバーグが、その存在を主張してきます。食べ応えがあり、これひとつでお腹いっぱいになります。

命の循環とストーリーを感じられる場所に

「この鹿の角(写真中央)、枝分かれしたところのひとつが根元から折れてなくなっています。きっと雄同士でケンカをしたときに折れたのでしょうね。こんなところにも、その鹿のストーリーが感じられます」と大竹さん。伊藤さんも「ジビエにはストーリーがある。そのストーリーも含めて味わってもらいたい」と言います。

「猿田彦BASE」では、子どもたちに「命の循環」を考える実体験を提供したいと、「リトル・ハンターズ・マーケット」というイベントを開催しています。プロの指導のもと、実際に山を歩き、罠を仕掛けて獲物を捕らえ、解体して食べるところまで体験します。そのほか、鹿肉を使用した犬用ジャーキーの制作体験や座学を通して、「命の循環」「経済の循環」「社会の仕組み」を学びます。

参加した子どもたちは、目の前にある鹿肉が「ほんの少し前まで生きていた鹿の肉」ということを実感した様子だったそうです。「食べ物や生き方に対する意識が変わった」という感想も寄せられました。

「命をいただくことは生きる力をいただくこと」

美味しいジビエ料理を味わいながら、捕獲から調理まで一貫して行っているシェフやスタッフから、いただいた命のストーリーを聞いてみませんか。「生きる力」が不思議と湧き上がってくることでしょう。

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山陰の森が育んだジビエを提供する本格イタリア料理店「ペペネーロ イタリア館」鳥取県鳥取市 https://gibierto.jp/article/shops/restaurants/13986/ Thu, 12 Dec 2024 08:00:31 +0000 https://gibierto.jp/?p=13986

鳥取県東部、因幡(いなば)地方に位置する鳥取市は、千代川流域に広がる鳥取平野の東側に作られた城下町です。日本海側には鳥取県を代表する観光地である鳥取砂丘が広がっています。中国山地の山々が連なる自然に恵まれた豊かな土地です。

JR鳥取駅から若桜街道を県庁方面にむけて徒歩約10分のところにある「ペペネーロ イタリア館」は、弥生公園の向かいに位置しており、明るい黄色の外壁に映える緑・白・赤のイタリアンカラーが目印です。

こちらのお店は、1980年の11月に創業された鳥取市で一番歴史のあるとされる本格イタリア料理店です。

ステンドグラスの美しい光がきらめく店内では、二代目オーナーシェフである木下 陽平さんを始め、創業者であるお父様の龍雄さんとお母様の和子さんが温かな笑顔で出迎えてくださいます。

創業者である龍雄さんは、もともと大阪のホテルで腕を振るっていましたが、仕事で鳥取県の米子市に訪れた際に、鳥取の豊かな自然に恵まれた食材に魅了され、そのまま鳥取に残ることを決め、27歳の頃に奥様の故郷である鳥取市で本格イタリア料理店を開店しました。

当時の鳥取では、まだイタリアンという概念が定着しておらず、イタリア料理やフランス料理をまとめて洋食と呼んでいた時代だったため注目を浴びたそうです。

二代目オーナーシェフの陽平さんがご両親の営むこのお店で共に働き始めたのが20歳の頃。今ではお父様と二人で力を合わせて「ペペネーロ イタリア館」を営んでおられます。

お店では、日本海でとれる新鮮な海の幸、和牛や地鶏といった上質な畜産物、採れたての有機野菜、そして山陰の森が育んだジビエなどの美味しさにこだわった地元の食材を使った本格イタリア料理をいただくことができます。

今回は、そんなジビエを使った料理を二品ご紹介いただきました。

味わい深い鹿肉にスパイシーなトマトソースがアクセント

さっそく、ランチでも注文が入るという定番の人気メニュー「鹿肉のハンバーグ」(1,100円・税込)を作っていただきました。

「うちの店では、鹿肉100%ではなく鹿肉と豚肉の合い挽きを使用しています。鹿肉は赤身が多く脂身が少ないため、豚肉を加えることでその部分を補うことができるんですよ。後は、豚肉を入れると鹿肉の独特な風味を抑えられるので、ジビエを食べ慣れていない方でも食べやすい味になっています。」と教えていただきました。

ハンバーグを焼く前に全体に細かめのパン粉をまぶすことで、全面に焼き色がきれいにつくだけでなく、ハンバーグの表面がパリッと仕上がります。両面に焼き色を付けた後は、オーブンで中までじっくりと火を通すことで肉汁を中に閉じ込めます。仕上げにジンを使ってフランベすることで風味をプラスします。

色とりどりの付け合わせ野菜が添えられた皿には、スパイスの効いたトマトソースがたっぷりとかけられており、ふっくらと焼きあがったハンバーグが食欲をそそります。

いただいてみると鹿肉の風味が程よく、お肉らしいジューシーさもありながらさっぱりとした味わいで、添えられたトマトソースとよくマッチしています。

アナグマのパンチェッタにぴったりな濃厚なソースが食欲をそそる

続いて紹介するのは、「アナグマのカルボナーラ」(1,800円・税込:時価)です。

今回のカルボナーラに使われるのはなんと、アナグマの自家製パンチェッタです。

通常は豚肉を使って作るのが一般的なパンチェッタですが、それを一番脂がのっている時期に仕入れたアナグマでアレンジして作っているそう。実際に見せていただくと、確かに驚くほど脂身がしっかりとありました。

「イタリアのカルボナーラで使われるチーズは一般的にペコリーノ・ロマーノが多いんですが、うちの店では、ペコリーノ・ロマーノに比べてくせが少なく日本人の口に合うといわれるパルミジャーノ・レッジャーノを使っています。」と手際よく料理をしながら話す陽平さん。

しっかりと炒めたアナグマのパンチェッタにその他の食材やソースを合わせ、茹で上がったパスタと合わせていきます。

濃厚なソースが全体に絡まりぽってりとした見た目の「アナグマのカルボナーラ」は、チーズの香りが食欲をそそります。アナグマのパンチェッタは、口の中で脂身がとけていくのに対して、肉の部分はしっかりした歯ごたえで、噛みしめるとアナグマ特有のパンチの効いた香りを楽しめました。パンチェッタの塩味も、マイルドなカルボナーラとぴったりです。

「アナグマのカルボナーラ」は仕入れ状況によって登場する特別なメニューです。猟師さんの中では、ジビエの中でアナグマが一番美味しいという声もあるそう。

ご来店の際に提供されていたら是非食べてみてほしい一品です。

地元の食材には地元のワインをペアリング

陽平さんは、ワインを扱うならソムリエの資格を取りたいという思いから努力され、5年前(2019年)に見事ソムリエの資格を取得したそうです。店内にはそんな陽平さんの選ぶワインがたくさん取り揃えられています。

そこで陽平さんに今回ご紹介いただいたジビエ料理に合うおすすめのワインを尋ねました。

「イタリアのワインももちろん合いますが、地元のジビエを使った料理なのでぜひ鳥取のワインをペアリングしていただきたいです。トマトソースを使った鹿肉のハンバーグには赤ワイン、パルミジャーノ・レッジャーノを使ったアナグマのカルボナーラには白ワインをおすすめします。」と話す陽平さん。

鳥取県東部にある「兎ッ兎ワイナリー」の赤ワインと白ワインを紹介していただきました。因幡の白兎をモチーフにしたラベルが目を引きます。

今回おすすめしていただいた鹿肉のハンバーグに合わせたい赤ワイン「サペラヴィ2022」は、深みのある香りが特徴で、しっかりとした口当たりに酸味とのバランスがとれた辛口のワインです。もう一方のアナグマのカルボナーラに合わせたい白ワイン「宇部野(うべの)2023」は、芳醇な柑橘系の香りとすっきりとした酸味が印象的な辛口のワインです。こちらは「兎ッ兎ワイナリー」のオリジナル品種「宇部野(うべの)」で醸造されているそうです。

創業当時からの地域の人々に愛されるお店

今回ご紹介いただいたジビエ料理は鹿とアナグマを使ったメニューでしたが、「ペペネーロ イタリア館」では、他にも猪や熊、まれに狸なども仕入れ状況によって登場するそうです。

年中とれるのは鹿と猪で、その他のジビエは捕獲数が少なく珍しいので出会えればラッキー。それも、来店の楽しみの一つですね。

「ジビエ料理は創業当時から提供しているのですが、当時イタリア料理よりも珍しかったので注文する人は少なかったです。しかし、今では県外からジビエを求めて来店するお客様もおられて、全体の1~2割程の方がジビエを注文されています。ジビエを食べることは1つの地域貢献になると思います。食わず嫌いの人にはぜひ一度ジビエ料理を味わってほしいです。」とジビエへの想いを語る陽平さん。

お店では年間を通してジビエのフルコースを提供しており、通常のコース料理の中にも一品はジビエを使用した料理をメニューに組み込んでいるそうです。

料理を食べに訪れるお客様のことを想い、食材や調理法にこだわった本格イタリアンは、地域の人々を夢中にさせ創業から45年となるお店に通い続ける地元のファンもおられます。店内を彩るステンドグラスは創業者である龍雄さんのこだわり。ステンドグラスに反射した美しい光が店内を包み込みクラシックな雰囲気を作り出しています。素敵なこの空間でいつもとは一味違う食事の時間を楽しんでみてはいかかでしょうか?

 

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愛媛県鬼北町におけるジビエ利活用 ~鬼北町役場編~ https://gibierto.jp/article/feature/interview/13945/ Fri, 06 Dec 2024 08:00:28 +0000 https://gibierto.jp/?p=13945 愛媛県鬼北町のジビエ利活用について、鬼北町町長にお話を伺いました

愛媛県では、2022年度に約3億6700万円の農作物被害が発生し、その65%が鬼北町を含む南予地域によるものです。これまで、捕獲された野生鳥獣の多くは埋設処分されていましたが、捕獲者の高齢化に伴い、埋設処分が大きな負担となっていました。こうした背景を受けて、鬼北町では減容化処理施設と新鮮な鹿と猪を活用するペットフード加工処理施設を併設し、24時間搬入可能な体制を整備しました。鬼北町の町長である兵頭誠亀さん、鬼北町役場 農林課の楠目匠さんにお話を伺いました。

春夏秋冬の楽しみがなくなっている

町長は鬼北町ご出身でいらっしゃいますが、昔と比べて野生鳥獣との関係はどのように変わってきていると感じていますか?

「私が子どもの頃は猿が街に出て、人が食べているものを取ったり、畑を荒らしたりすることがありました。しかし、20年前から鹿や猪が畑に出るようになり、農業や林業に深刻な被害をもたらすようになりました。これだけでも死活問題なのですが、私がもう一つ目をつけたい点があるんです。私の母は春になると裏山に行ってタケノコを掘り、秋になるとさつまいもや柿の収穫を楽しみにしていました。しかし猪の出現によってタケノコが取れなくなり、春夏秋冬の田舎ならではの楽しみが失われることになりました。このように、農業被害だけでなく、人々の楽しみも奪われている現状があります。」

そうした被害の現状に対して、町としてはどのような取組を行っていますか?

「鹿や猪の数が増え、捕獲数を上げる必要が出てきました。そのため、捕獲後の処理が課題となり、捕獲した個体の処理に減容化処理施設を導入しました。これにより、重機を持たないハンターでも捕獲した鳥獣を簡単に処分できる環境を整えました。また、捕獲した鳥獣を単に処分するだけでなく、ジビエとして活用するために、ペットフード加工処理施設も設立しました。これにより、有害鳥獣を地域資源として活用し、地域に根ざした産業を育てていくことを目指しています。」

町民の方々からはどのような声がありましたか?

「捕獲者から『これは良い施設だ』と評価をいただいています。重労働だった埋設処分を施設が担うことで、捕獲者は捕獲に専念できるようになり、鬼北町内の捕獲数は増加しています。昨年は鹿の捕獲数が過去最多を記録し、猪と合わせて年間1500頭ほどの捕獲が行われています。また、ハンターさんが箱罠や猟銃を購入する際の費用を補助することで、狩猟を始めやすくし、継続してもらえるよう支援しています。」

有害鳥獣捕獲者とともに捕獲後の搬入率84%を達成

他に取り組んでいることはありますか?

「鬼北町では、獣害対策として侵入防止柵の設置にも補助金を出しています。国や県の補助対象とならない農地を対象として、資材費の50%を補助しています。農業を生業としている方だけでなく、趣味で畑をして道の駅に出荷している方にも補助を行っています。その理由は、畑を使うことが農地の維持につながるからです。捕獲と侵入防止柵の設置を併用することで、農地を守りながら継続的な対策を講じています。」

現在、捕獲した鳥獣のうち、どの程度が利活用されていますか?

「鬼北町の減容化処理施設とペットフード加工処理工場には、町内で捕獲された鹿の84%が持ち込まれジビエ活用率は43%となっています。猪については自家消費されることが多いため、搬入率は65%ほどですが、ジビエ活用率は27%となっています。」

今後の施策や展望についてお聞かせください。

「今後も鳥獣被害対策を進めるとともに、鬼北町の減容化処理施設とジビエペットフードの取り組みについて認知度を高めることを目指しています。さらに、福祉との連携など、地域を超えた協力を推進し、循環型社会の形成に寄与する取組を進めていきたいと考えています。」

ジビエ利活用のひとつのモデルとして地域内外へ発信

次に鬼北町役場 農林課の楠目さんにお話しを伺います。鬼北町での現在の鳥獣被害の状況について教えてください。特に農作物への影響が深刻だと聞いていますが、具体的にはどのような被害が発生していますか?

「人が減っていることで、山奥にいた動物が街中にまで進出するようになり、被害が拡大しています。特に、柵で囲われていない農地が被害を受けやすい状況です。理想は、山を囲うように侵入防止柵を設置したいのですが、地権者ごとの合意が必要で、地権者が町内にいない場合や相続されていない土地があり、調整が難しいため進んでいません。被害の内容としては、猪による稲や芋、カボチャの被害が多く、鹿はスギ、ヒノキの被害、稲や大豆、果樹の新芽を齧ることもあります。」

実際に農家の方々からはどのような声が上がっていますか?

「『また植え直さないといけない』『せっかく3年間育てた柚子の苗が無駄になった』『苗が1本1500円もするので、苗代や3年間の人件費、肥料代が全て無駄になってしまった』というような嘆きの声を多く聞いています。」

そういった獣害に対して、町としてはどのような取組をされていますか?

「鳥獣被害対策として、侵入防止柵の整備や有害鳥獣の捕獲に取り組んでいます。また、新たな取り組みとして、令和4年度に減容化施設、令和5年度にペットフード加工処理施設を建設し、有害鳥獣の処分と、鹿や猪を地域資源としてペットフードに加工する取り組みを開始しました。今年度は、宇和島市に冷凍庫を設置する計画を進めており、令和7年度からの供用開始を目指しています。」

捕獲者の高齢化が進む中で、どのような対策を講じて新規捕獲者を確保し、サポートしていますか?

「鬼北町にある減容化処理施設が、捕獲者にとって大きな助けとなっています。以前は、畑に重機を持ち込んで埋設するなど、手間や負担が大きく、土地を持たない捕獲者にとって高いハードルがありました。しかし、施設ができたことで、捕獲した鹿や猪を運び込むだけで済むようになり、新鮮なものは隣のペットフード加工処理施設でペットフードとして活用できるようになりました。この施設の存在が土地を持たない新規ハンターの確保を促進し、捕獲した有害鳥獣を全頭処理する体制も整っています。」

鳥獣被害対策とジビエ利活用のバランスについて、町の今後の方針や目標は何でしょうか?

「今後も指定管理者やハンターの皆さんと連携しながら、計画に基づいて鳥獣被害対策とジビエの利活用を進めていきます。また、減容化処理施設とペットフード加工処理施設が併設され、24時間いつでも搬入可能な施設は珍しく、モデルケースとして他の市町村にも参考にしてもらいたいと考えています。仕事をされていて日中に搬入が難しい方でも利用できる体制を整えることで、地域全体の鳥獣被害の軽減に貢献していきたいです。」

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愛媛県鬼北町におけるジビエ利活用 ~ペットフード編~ https://gibierto.jp/article/feature/petfood/13915/ Fri, 06 Dec 2024 08:00:06 +0000 https://gibierto.jp/?p=13915 24時間対応で鹿と猪を受け入れ可能な冷凍庫(「鹿ポスト」と「猪ポスト」)を設置

愛媛県鬼北町では、減容化処理施設と新鮮な鹿と猪を活用するペットフード加工処理施設を併設し、24時間搬入可能な体制を整備しました。それらの施設を運営する株式会社ありがとうサービスの西原口航さんにお話を伺いました。

ジビエペットフード開発で大切にした3つの「やさしい」

プロジェクトの目的やコンセプトについて教えてください。

「このプロジェクトの目的は、資源の有効活用を通じて持続可能な社会を目指すことです。コンセプトとして大切にしているのは3つの『やさしい』です。一つ目に、ペットにやさしい。栄養価の高いジビエを主な原材料として、無添加で低カロリー、高タンパクなドライフードや、素材を活かしたジャーキーやミンチ肉が愛犬の健康をサポートします。二つ目に、まちにやさしい。鳥獣被害の軽減を図り、環境保護と地域経済への貢献を目指しています。三つ目に、環境にやさしい。捕獲された動物を適切に処理することで、山林に放置されることによる川の水質悪化を防いでいます。」

令和5年10月から稼働した鬼北町ジビエペットフード加工処理施設ですが、どのようなスケジュールで進行しましたか?

「10月の運用開始後、12月から本格的に商品開発を始めました。ジャーキー、ミンチ生肉、ドライフードの商品化を目指し、試行錯誤を繰り返しました。特に苦労したのはジャーキーとドライフードです。ジャーキーは、フレーカーで削り取って肉を乾燥させます。ちょうど良い加減で乾燥させる工程が難しく、調整するのに時間がかかりました。ドライフードは国産の食材を使用することと添加物無添加にこだわったため、成形に苦労しました。今後も無添加・低添加のやさしい商品にこだわっていきたいです。」

施設で製造されるペットフードの製造プロセスとこだわりを教えてください。

「製造プロセスは、一次処理、二次処理、ペットフード加工、充填、金属検査と進みます。衛生管理と在庫管理の改善を日々行い、少人数体制での作業でも高品質を保つよう心がけています。また、鹿や猪の搬入時にはカメラや番号で個体を識別できる仕組みを整え、HACCPに準じた衛生基準を維持するため、作業環境を日々改善しています。」

鬼北町で捕獲された猪や鹿の安全性について教えてください。

「安全性については、施設をエリア分けし、清潔エリアでは衛生服を着用しています。鹿と猪の2種類の肉を扱うので、それぞれ製造ラインも分けています。また、このような仕組み全体を月に1度、衛生管理のプロによる確認を受けながら見直し、改善を続けています。」

個包装で新鮮さにこだわったジビエペットフード

販売している商品について教えてください

「現在販売しているのは3種類です。まずジャーキーは独自の香りが良く、ちぎりやすい製法で、与えやすい小分けタイプになっています。またミンチ肉は鮮度が大切なので、注文を受けてから製造しすぐに発送しています。こちらは大袋と小袋があり、用途に合わせて使い分けることができます。フライパンや鍋で3分ほどの加熱(30gの場合)で与えられます。愛犬用の手作りご飯に使用していただけます。またドライフードについては鹿肉60%に愛媛県真鯛と野菜をブレンドしており、総合栄養食と混ぜて毎日のごはんがさらに美味しくなる一品です」

どのような点にこだわっていますか?

「まず、全商品に共通するのが個包装であるという点です。新鮮かつ肉々しい香りを愛犬に感じて欲しい、また飼い主さんの手が汚れないなど扱いやすいよう試行錯誤した結果、個包装に辿り着きました。また、パッケージデザインにもこだわりました。鬼北町にある川の写真をパッケージに用いて爽やかさや豊かな自然を表現しています。実はこの川は四万十川の支流でもあるんです。」

おすすめの与え方を教えてください

「ジャーキーは、出先でも手軽に与えられるのが特徴です。ごほうびのおやつとしてもいいですし、ちぎりやすいのでほんの少し手に取ってトレーニング用のおやつに使っていただいてもいいと思います。ミンチ肉は手作りご飯に使用されることが多いですが、必ず加熱してから与えるようにしてください。ドライフードはそのまま与えることができますが、体調に合わせて量を調整していただければと思います。」

お客様からはどのような反応がありますか?

「『食いつきが良い』『食後のトラブルが少ない』といった声をいただいています。実際のアンケートでは『ペロリと完食しました』『便もきれいでした』といったコメントも多く、嗜好性に対する評価が高いです。岡山理科大学獣医学部と連携して行った試験では52件のうち8割の犬が好んで食べ、かつ、お腹を壊すことが少ないという結果が得られました。」

このプロジェクトを通じて、印象に残っているエピソードはありますか?

「猟師さんから『この施設ができて良かった』『ペットフードを楽しみにしている』という声をいただいたときは、本当に嬉しかったです。また、イベント出店時に『ニュースで見ました』と言っていただいたことや、ミンチ肉を購入した方から『よく食べてくれたので、また買います』と言っていただいたことも印象に残っています。直接的に人の役に立てていることを実感しています。」

今後の製品展開や施設の改善・拡充について、新しい取り組みや目標があれば教えてください。

「今後は、さらに受け入れ体制を整えて、より多くの資源を活用できるようにしたいと考えています。また、まだ活用しきれていない部位の精肉量を増やし、解体時に発生する皮や骨といった廃棄部分も有効活用できるようにしたいです。そして、より多くの方に知っていただけるよう、イベント出店にも力を入れていきます。」

最後に伝えたいことはありますか?

「鬼北町や私たちの仕事に関心のある方は、ぜひ全国からお越しください。皆さんと一緒に『えひめ鬼北やさしいジビエ』のブランドと取り組みを広めていけることを楽しみにしています。」

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